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LCCのピーチが「SNSを参考に決める旅」を開始、若い女性を狙う

2018年04月20日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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2018年度中に、LCCのピーチアヴィエーションは「新しい旅のスタイル」を提案するCOTABI(コタビ)をスタートさせる。これは、人を介して検索し、旅行の内容を決められるプラットフォームで、ユーザー同士のコミュニケーションを使って、若い女性をターゲットにした新たな旅行市場を開拓しようとしている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 委嘱記者 森川幹人)

ピーチの社長が驚いた
キャンペーンの効果

「この数年間、我々が行ってきたことを、根底から覆すような出来事が、今年の春に起きたんです」

 ピーチアヴィエーションの井上慎一代表取締役CEOが、そう打ち明けたのは、「新しい旅のスタイル」を提案するCOTABI(コタビ)という新サービスの記者発表会場だった。

 その出来事とは、昨年3月に1ヵ月にわたって行われたキャンペーンだ。フォロワーを多く抱えるインスタグラマーに、ピーチの飛行機に乗って旅をしてもらうように依頼。そして、旅の内容をインスタグラムにアップし、それを特設サイトにリンクしてPRしようというものだ。

 このキャンペーンが大当たり。人気インスタグラマーの写真や動画を見たことがきっかけとなって、ピーチを利用したユーザーが増加、前年同月比で航空券売上が大きく伸びたという。

 しかも、旅の行程などを考えるに当たり、グーグルなどを使った従来の検索ではなく、SNSで発信されている旅を参考にして決めるケースが増えていることも明らかになった。「この人が好きだから、自分も同じような旅をしてみたい」と考える傾向が出たわけだ。

SNSを介することで
旅を体験した人ならではの情報が

 このような盛り上がりを背景に、ピーチは「COTABI」というサイトを2018年度中に立ち上げることを決めた。従来のBtoCではなく、CtoC(消費者同士)のコミュニケーションで生まれる旅市場の潜在需要を掘り起こす試みだ。

 サイトはこんな感じだ。トップページには、女性、男性、カップル、ファミリーといった属性を表す人物画像が掲載される。利用者が自分と近い属性をクリックすると、同じカテゴリーの人物写真がサムネイルで表示される。

 その中から、興味ある人物を見つけてクリックすれば、その人が体験した旅プランをまとめてビジュアル化した「COTABIアイコン」が現れる。アイコンを選ぶと、旅行プランの詳細のほか、旅で利用した移動手段や宿泊先、アクティビティーなどが一覧表示され、それらを一括して予約できるようになる予定だ。

 サイトでは、旅行者自身が体験した旅プランを、別の旅行者のためにシェアすることも可能。SNSを介して多数の旅行者が旅情報をアップすることで、地元の人から聞いた穴場情報など、旅を体験した人ならではの情報が広がっていくことが期待されている。

 その結果、「大都市や有名な観光都市以外でも、魅力的な場所の情報が伝わっていけば、地方創生にもつながる」と、井上CEOは考えている。

若い女性の旅行スタイルが
ピーチの戦略にマッチ

 そもそもピーチは、大手航空会社がメイン顧客とするビジネスマンでもなく、普通の旅行者でもなく、20~30代の女性をターゲットとしてきた。そのため、機体カラーを桃色と紫色の中間色である「フーシア色」にしたり、ウェブサイトに女性誌のようなコンテンツを盛り込んだりした。

 そうした戦略が奏功し、今や顧客の約56%を20~30歳代の男女が占め、女性比率は顧客全体の半数を超えている。

 こうした若い女性の旅行者たちが、これまでならありえなかった目的でピーチを使って旅をするようになった。例えば、台湾の人が日本の美容院で髪を切るために、飛行機で沖縄へ飛ぶ。はたまた、女子会で焼肉を食べにソウルへ飛ぶなどだ。

 そんな「新しい旅のスタイル」を生み出した彼女たちは、ピーチのリピーターとなり、SNSを通じてどんどん旅情報を発信していた。「COTABI」は、まさにこうした顧客層をターゲットにしているわけだ。

プラットフォームビジネスを
売り上げの軸の一つに

 だが、ピーチは単なる旅行サイトにするつもりはなさそうだ。

 将来的には、旅行者のアカウントからホテルなどが予約された場合、何らかの形でコミッションを払う構想を持っている。プランをアップした旅行者、サイトを使って魅力的な旅行計画を見つけた旅行者、そして、サイト経由で予約を受け付けた旅行関係業者の3者が、ウィンウィンウィンの関係になるのを狙ったものだ。

 正式スタートを前に、民泊仲介の世界最大手であるAirbnb(エアビーアンドビー)とのキャンペーンを開始。特設サイトでは、Airbnbに登録されている宿泊施設、アクティビティー、航空券を一括予約できるようにした。こうした機能をCOTABIでも搭載する構えだ。

 コーポレートコミュニケーション部の浅見健介氏によれば、「今後、プラットフォームビジネスを売り上げの軸の一つとして成長させていきたい」と話す。

 COTABIは18年春にサービスを開始する予定だったが、延期されることになった。これはピーチがインバウンド向け旅行事業を運営するフリープラスと提携し、サービスをより強化することにしたためだ。スタート時期は未定だが、18年度中の開始に向けて準備が進められている。

 これまで、航空会社は単に“移動手段”を提供する企業だった。しかし、ピーチの新たな取り組みは、リアルとネットをつないだ新たな航空会社への脱却を目指すチャレンジだといえそうだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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