4月10日、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3キャリアが足並みを揃えて発表したメッセージングサービス「+メッセージ」は、「LINE対抗」のサービスとして大きな注目を浴びています。
たしかに+メッセージは、長文のテキストや写真、スタンプを送れるサービスとして、LINEによく似ています。一方、その発表会では大手3キャリアが「LINE対抗ではない」と明言しており、混乱が生じています。
LINEと一部競合するが、異なるレイヤーで共存できる
+メッセージが準拠するRCSは、SMSと同じく相手の電話番号を指定して送ることができます。LINEのIDのようなアカウント登録は不要とはいえ、「電話番号は教えたくない」「友達の電話番号を知らない」といった声が上がり、「いまさらLINEには勝てない」という印象を持った人も多いでしょう。
この点について大手3キャリアは、説明会の中で「LINE対抗ではない」と明言しています。その背景として、SMSやRCSは電話番号によるコミュニケーションとして、LINEのようなインターネットサービスとは別のレイヤーに位置しているという事情があります。
SNSが普及した現在でも、仕事関係の取引先や、企業と消費者の間の連絡には電話番号が重要な役割を果たしています。+メッセージが想定するシナリオも、名刺交換をした仕事相手とのコミュニケーションです。LINEやFacebookの業務利用は禁止している企業も多く、一定の需要がありそうな分野といえます。
また消費者と企業との間では、電話番号で本人確認ができている状態でチャットによるサービスを受けられます。将来的にホテル予約やチケットの受け取り、決済などが+メッセージが完結するようになれば、専用のアプリやウェブサイトへのログインが不要になるのは大きなメリットといえます。
こうした需要の取り込みはLINEやFacebookも狙っており、+メッセージと競合する部分はあります。しかしメッセージを仲介する特定の企業が個人情報を握るのではなく、端末間で送受信する+メッセージのほうが中立で、安全と感じる人もいるはずです。
しかし、新しく知り合った友人と「電話番号の代わりにLINE IDを教える」といった習慣が簡単に変わることはなさそうです。+メッセージが使われるのは電話番号でつながる範囲であり、他のSNSとは異なるレイヤーで共存していくものと筆者は考えます。
国際接続やアプリ、MVNO対応に課題
このように+メッセージはLINEとは異なるレイヤーのサービスとはいえ、現時点では課題が多いのが実情です。そのため、わかりやすい見出しをつけようとすると「LINE対抗」としか表現しようがない面もあります。
国際規格であるRCSは世界で50のキャリアが導入しており、グーグルが提供する「Jibe RCS Hub」は43のキャリアが接続しています。2月のMWCで注目されたこともあり、国内発表のタイミングとしては悪くないものの、+メッセージは海外のRCSとはやりとりできず、「将来的に接続予定」との説明にとどまっています。
アプリについても、Androidは標準の「Androidメッセージ」がRCSに対応しているものの、+メッセージは専用アプリが必要となっています。たしかにiOSのiMessageはRCSに対応しておらず、iPhoneのシェアが大きい日本で始めるにはアプリが必要なのも普及に向けて大きなハードルになりそうです。
キャリア側は「老若男女に使ってほしい」と言うものの、MVNOやワイモバイルの対応について具体的な時期が示されず、SIMフリー端末にも今後対応予定としか説明されなかったのも残念なところです。世間からは、「大手キャリアによる囲い込みではないか」という反発を招きやすい説明といえます。
SMSをバージョンアップする、+メッセージの方向性
いろいろと課題はある+メッセージですが、かつては絵文字に互換性がなかった3キャリアが足並みを揃え、国際規格のRCSを日本に導入しようという取り組み自体は大きく評価すべきと考えます。
日本では、かつて主流だったキャリアメールの不便さを解消する形でインターネットサービスとしてのLINEが普及しました。これに対して+メッセージは、携帯電話番号というインフラを活かしつつ、SMSをバージョンアップしようというものです。その方向性自体は間違っておらず、世界的なビッグウェーブに乗っています。
発表前の事前報道もあり、各メディアの関心は「どうやってLINEに対抗するのか」という点に集中していました。その空気を変えるには「電話番号ベースのコミュニケーションを再定義する」くらいのビジョンを打ち出してほしかった、というのが正直なところです。
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