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ザイマックス主催イベントで聞いた働き方改革の現場の本音

実は先進的?大手企業のサテライトオフィス活用はけっこう進んでいる

2018年04月12日 10時00分更新

文● 大谷イビサ/Team Leaders

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気になる労務制度やコスト按分の課題はどう解決した?

 後半はザイマックスの営業が聞いた「よくあるお悩み」のコーナー。まずどこから手を付ければいい?」「どうやって社内利用を促進した?」「何か利用に当たりルールを決めた?」「人事労務制度は変えた?」「マネジメントはどうしてる?」など気になることだらけだ。

サテライトオフィス導入に関する悩み

 利用促進に関してコメントした住友商事は、「サテライトオフィスの利用率が高い要因として、全社説明会等を通して、利用促進キャンペーンを強く打ち出したことが挙げられる」と語る。逆にリクルートは「利用を啓蒙する動画を作り、メールで配信したが開封率が2%だった(笑)」と失敗談を披露。組織長に理解を得られるよう、地道に説得と体験を重ねてもらったという。一方、日立ソリューションズからは、トライアル時に人事部門もちだった支出を現場部門に移した段階で利用率が一気に減ったという事例を披露。昨年から再び人事部門に負担を戻した結果、利用率はまた上がったという。働き方改革に会社としてどれだけコミットするか、予算面からも問われるようだ。

 また、人事労務制度に関して、利用制約を極力設けない運用を進めているサントリーホールディングスは、「2007年にテレワーク制度をスタートさせたときは、育児・介護の必要がある人に限っていたので、ほとんど使われなかった。特定の人しか使えない制度は、なかなか利用されない。誰でも当たり前に使えるよう、制度を変える必要がある」とコメント。一方、テレワークの導入に際しては、あくまで働く場所が変わるだけという前提で、評価や時間管理などの制度は一切変えてないという。「個人のモチベーションや会社へのロイヤリティの向上という意味合いはもちろんあるが、われわれは競争戦略として働き方を変えている」(サントリー担当者)。

 マネジメントに関しては、外販しているテレワーク対応の打刻ツールなどを用いており、積極的にITを活用しているという。「出退勤の連絡、業務の相談や雑談などのコミュニケーションをビジネスチャットで行なったり、今まで以上に積極的にコミュニケーションを取るようにしている。労働時間に乖離があった場合は、さらに細かく個人の労働時間管理を行なっている」(リクルート担当者)とのことで、労務管理については各社とも苦労しているようだ。

次のサテライトオフィスのトレンドは「子育て支援」?

 最後は育児中の女性のサポートがテーマ。今後のサテライトオフィスについてザイマックス不動産総合研究所が調べたところ、やはり「子育て支援付きオフィス」への関心は高く、キッズスペース付きのちょくちょく...も増やしているという。

「子育て支援付きオフィス」への関心が高い

 執務スペース横のキッズスペースには、子供を見守るスタッフ常駐しており、子どもが楽しく過ごせるイベントも用意しているという。子育て支援を担当する池田氏は、「ガラス越しにお父さん・お母さんが見えるので、作ったものをすぐに見せられ、親子で信頼関係が生まれています。第2・第3の幼稚園・保育園として、お子様が名前を付けてリピーターになってくれている」と語る。

 実証実験に参加したリクルートは、保育園の休業や家族の病気など、使う機会は意外と多かったと指摘する。「共稼ぎ家族から、子どもとの時間をとれるようになったという声をいただいた。親が見える場所でがんばって仕事しているのを見ているので、子どもが応援してくれたという声もあった」(リクルート担当者)と、キッズスペース併設オフィスの拡大に期待を寄せた。

 ザイマックス総研によると、今後都内ではオフィスの供給が増え、統合や移転が増える見込み。その一方で、テレワークやフレックス制、ダイバシティ重視など新しい働き方を進める企業が増えていくと指摘した。リクルートの馬立純一氏が「われわれも通勤時間をかけて出社し、会社でなにをすべきか考え直すべき時期に来ている。すぐにオフィス面積が必要なくなるとは思わないが、イノベーションを生むために、オフィスはどうあるかを検討していかなければならないと思う」とまとめ、働き方改革の苦労やメリットが垣間見えたイベントを締めた。

 働き方改革でとかくやり玉に挙げられがちな「日本の大企業」だが、座談会では制度や文化の面でさまざまなチャレンジを続けてきたことが浮き彫りになった。インフラやテクノロジーが成熟してきたことで、先進的な働き方への移行はどんどん加速していきそうだ。

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