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企業ビジネスにAIの知性を組み込むために考えるべきこと、「IBM Think 2018」講演

「データとAIの時代」に向けたIBMの戦略、ロメッティCEOが語る

2018年03月26日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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“データとAIの時代”に課題となる「データへの責任」「雇用と新たなスキル」

 続いてロメッティ氏は、「データとAIの時代」における社会のシフトに話を移した。前述のとおり大きな可能性を持つ一方で、この時代には大きな課題ももたらされる可能性がある。

 こうした課題はIBMや企業だけでなく、社会にかかわるすべての主体が取り組んでいかなければならないとロメッティ氏は説明したうえで、「データに関する責任」「雇用とスキル」「インクルージョン(包摂)」といった具体的な課題を挙げ、IBMにおける取り組みを説明した。

 データに関する責任とは、顧客から預かったデータをどう利用し、さらにはどう守るのかという課題だ。プライバシーデータの取り扱いだけでなく、AI/Watsonの学習データを適切に扱うという意味でも、IBMにとってその責任を明確にし、顧客との信頼関係を構築することが不可欠である。

 ロメッティ氏は、IBMでは従来からコグニティブデータやプライバシーデータに関する原則を定めており、その中でたとえば「顧客企業のデータを用いて学習したAIエンジンは顧客自身に帰属すること」「顧客企業のビジネスモデルを侵害するようなビジネスモデルを取らないこと」を明記していることを説明した。「これは皆さん(企業)にとって本当に大切なことだと考えている」(ロメッティ氏)。

 さらに、単にストレージ上だけでなく、データがどこにあっても常時保護される環境が必要だとして、今回、IBM Cloud上でメインフレームレベルのエンドトゥエンド暗号化を実現したサービス群「IBM Cloud Hyper Protectファミリー」を発表している。

 また雇用とスキルの課題については、“AIの進化によってどの職業がなくなるのか”というよくある議論は少し間違っており、「わたしは100%、すべての職業が変わると確信している」と語る。つまり、これからはあらゆる仕事が「『人+マシン』でやる仕事」に置き換わっていくのであり、それにふさわしい新たなスキルセットも求められるようになると予測しているわけだ。

 「それでは、誰もが(AI活用のために)大学で博士号を取得しなければ職につけないような世界になるのか。“持てる者と持たざる者”の(大きな格差を生む)そんな世界は、良い世界とは言えないだろう。われわれ皆で、誰もが新たなスキルセットを身につけられる世界を準備し、従来のブルーカラーでもホワイトカラーでもない“ニューカラー”を生み出さなければならない」(ロメッティ氏)

 こうしたスキルセットを広く普及させるための具体的な取り組みとして、IBMではテクノロジースキル教育を行う6年制高校プログラムを官民連携で提供したり、社会人向け再教育プログラムに年間5億ドルを投資したりしていることを紹介した。

「コンシューマーAIとは別物」ビジネスAIとしてのWatsonをさらに強化

 そして、こうした企業と社会のシフトを受けて、IBM自身はどう変化していくのか。ロメッティ氏は、「データの時代」のソリューションを提供するIBMとなるべく、「新時代のイノベーティブなテクノロジー」「インダストリ(業界)ごとの専門性」「すべての製品/サービスに通底する信頼とセキュリティ」を目指して変革してきたと語る。

 「イノベーティブなテクノロジーに関してはまず、IBM Cloudが挙げられる。パブリック/プライベート/オンプレミスが単一のワンアーキテクチャで構成され、データやアプリケーションが相互に行き来できる。Watsonと統合された『AI Ready』、基盤からセキュリティを確保した『Secure to Core』に加え、ブロックチェーンや量子コンピューティング(IBM Q)など、次々と出てくる新しいテクノロジーにも将来的に対応できる点がポイントだ」(ロメッティ氏)

 またロメッティ氏は、「昨年、Watsonは利用企業数を2倍に増やし、1万6000社とのエンゲージメントを結んだ」と紹介したうえで、「ビジネスプロフェッショナルAIとコンシューマーAIとは別物だと考えてほしい」と述べ、Watsonが“ビジネスのための”AI基盤である優位性を強調した。

 「コンシューマーAIは、音声のテキスト化(Speech to Text)と検索のテクノロジーが中心。一方で、Watsonはビジネスプロフェッショナルの業界ナレッジを提供するため、(個々の企業が保有する)小さなデータからでも学習させることができる。そして、自社独自の洞察(開発したAIモデル)は守ることができる。IBMが他社に渡すことはない」(ロメッティ氏)

 今回のIBM THINK 2018においては、幾つかの新サービス/製品や機能強化が発表されている(それぞれの詳細については、あらためて次回以降の記事で紹介する)。昨年の年次イベントにおいて「データ+コグニティブ(AI)+クラウド」という方向性を明示したIBMだが、WatsonやAI/ディープラーニング関連の新発表を総合すると、顧客企業がデジタルインテリジェンスをより迅速、簡単に導入できるようサポートする方向へとさらに歩を進めたと言えるだろう。

 たとえばWatsonにおいては、旅行/運輸業界向けと外食業界向けのデータセットである「Watson Data Kit」が発表された。これを学習に使うことでWatsonがある程度の業界知識を備えた存在となり、上述したロメッティ氏のコメントにあるとおり、顧客企業はより少ない量の自社データで学習させるだけで業務利用できるようになる。

 またWatson/AIの継続的な学習作業を効率化するツール「IBM Watson Studio」が強化され、同ツール内でディープラーニングの学習ツール「Deep Learning as a Service」が提供されるようになった。オープンソースのフレームワーク(TensorFlow、Caffe、PyTorchなど)があらかじめ組み込まれており、IBM Cloudのリソース、GUIのニューラルネットワークモデル作成ツールなどを使って、容易にディープラーニングの学習処理が実行できる。

「Watson Studio」の概要(アーキテクチャ)

「Deep Learning as a Service」のGUIツール

 そのほか、Watson Studioと連携するかたちで、プライベートクラウド環境におけるデータ収集/管理や機械学習処理を容易にするコンテナベースのプラットフォーム製品「IBM Cloud Private for Data」、複数業種向けの学習済みWatsonを含むチャットボット開発ツールの「Watson Assistant」、iOSアプリ開発者向けの「Apple Core ML」とWatsonの統合なども発表されている。

 ロメッティ氏は、こうしたクラウドサービス/製品の強化だけでなく、人材や組織の面でもIBMが「シフト」を続けていることを説明した。

 「IBM自身の変革、備えるスキルの変革のために投資してきた。8000人のセキュリティエキスパート、1500人のデザイナー、1500人のブロックチェーン専門家、2000人のリスク&コンプライアンス人材を新たに育てている」(ロメッティ氏)

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