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日本だけが漁獲量減少、ノルウェー漁業を見習うべき理由

2018年02月16日 06時00分更新

文● 福田晃広(ダイヤモンド・オンライン

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昨年、サンマやスルメイカが記録的な不漁というニュースが大きく報道されたことは記憶に新しい。他にもホッケ、ウナギ、クロマグロといった魚の漁獲量減少も深刻な状況だ。ところが、実はこうして魚が減ってしまう理由は、世界が持続可能な漁業に変わって行く中で、日本特有なのだという。(清談社 福田晃広)

日本の魚が減っている!
最大原因はやはり「乱獲」か

海水温上昇などのせい、と解説する人もいるが、それでは世界の漁獲高が増えている理由に説明がつかない。日本だけが漁獲高を大きく減らしている理由は、やはり乱獲にありそうだ

 日本全体の魚の水揚げ量は1984年の1282万トンをピークに右肩下がりを続け、2016年には461万トンと約3分の1にまで落ちている。

 日本近海における03年のサンマ資源量は約400万トンあったものの、17年には約86万トンと急激に減少。日本全体のサンマの漁獲量は16年で約11万トンだったが、17年は約8万トンと半世紀ぶりの凶漁となり、危機的状態にある。

 スルメイカも同様で、15年には約11万トン獲れていたのが16年には約6万トンと、ほぼ半減。2017年も記録的な不漁だ。

 しかし、世界全体を見ると、水産物の水揚げ量は1985年の約9000万トンから2016年には、2倍を超える約2億トンへと増加の一途をたどっている。水揚げ量の減少は、日本特有のものなのだ。

 では、なぜ日本だけ魚の漁獲量が減っているのか。調べてみると、根本的な原因は、資源管理制度の不備から起こる乱獲にあるという。長年、この業界を取材してきた漁業ジャーナリストがこう解説する。

「専門家でも、海水温の上昇や、クジラが大量に魚を食べているために日本の水産資源に多大な影響を与えているという説を主張する人がいますが、諸外国でもほぼ同じ条件なので、それではなぜ日本の魚の漁獲量だけが減っているのかは説明できません。一番大きな理由として考えられるのは、長年、魚を獲りすぎているために資源量が激減しているということです」

 また、メディアでは特にサンマが減っている要因として、台湾や中国船による漁獲の問題が取り上げられるが、これも実態をよく知る必要がある。

 というのも、サンマは日本の沿岸部から遠く離れた場所から回遊して来る魚で、排他的経済水域(EEZ)内にやってきたものを、日本の漁船が獲っているにすぎないからだ。『サンマは日本の魚だから中国が獲るのは許せない』と考える人も多いかもしれないが、中国などの外国船が漁獲しているのは、日本のEEZの外側の公海にいるサンマで、国別のTAC(漁獲枠・漁獲可能量)が決まっておらず、『公海自由の原則』が適用される水域でのことだ。

漁業先進国と日本政府の
資源管理制度の違いが致命傷に

 漁業先進国である北米、北欧、オセアニア諸国では、国として厳正なTACを定めることで、乱獲を防ぐシステムを構築している。

 TACは、将来の資源量に悪影響を与えない漁獲量を科学的根拠に基づいて設定しており、このルールを破ると、ライセンスの剥奪や罰金などが課せられる。ノルウェーは約24魚種、ニュージーランドは約100魚種、アメリカでは約500魚種にTACが決められている。

 日本でも、1996年以来、サバ類、サンマ、マイワシ、マアジ、スケトウダラ、スルメイカ、ズワイガニの7つの魚種にTACを設定したが、実はその設定や運用が不適切だったため、まったく機能してないという。

「本来、もともと獲れている漁獲量よりも漁獲枠を狭めなければ規制にならないのですが、日本では対象になった魚種すべてが漁獲量よりも漁獲枠が大きすぎるため、規制になっていないのです。逆に漁獲枠まで獲り続ける努力目標のようになっていて、形骸化しています」(同)

 特にサンマやスルメイカは、TACの5割を割り込む漁獲量となっており、規制はほとんど意味をなしていない。

「米国やニュージーランド、北欧諸国でも、漁獲制限をしていない魚の方が少ないのが実態です。科学的根拠に基づいて最低限の漁獲枠を設定しなければ、“獲ったもの勝ち”の乱獲を止めることはできません。このままでは魚の資源量は減る一方です」(同)

20年間の漁獲制限で
資源回復に成功したノルウェー

 漁業で成長を続けている諸外国の多くは、1980年から90年代にかけて、多くの国がTACを設定し、それを漁業者や漁船ごとに割り当てる個別割当制度(IQ、ITQ、IVQ等)を導入し、次々に資源を回復させてきた。日本もこれらの先例に倣うべき部分は多い。

「たとえば、ノルウェーは60年代から70年代にかけて、ニシンを獲りすぎてしまい、枯渇寸前の深刻な事態に陥りました。しかし、乱獲を自覚して約20年間、禁漁に近い漁獲制限を実行し、見事に資源を回復させました。また、日本においても、2011年の東日本大震災の影響で一時的に規制がかかり、魚を獲ることができなかったことで、翌年は34年ぶりにサバの大群が北海道の道東沖に現れています」(同)

 ほかにも、太平洋のマダラやヒラメも同様に資源量が増えているのだが、現在のところ漁獲枠を設定する動きはない。数年後、再びこれらの魚種の資源が大きく減少してしまってからTACでの管理を始めても「時すでに遅し」である。

 こうした計画性に乏しい実態もあって、日本での漁業は斜陽産業のイメージが強い。しかし、たとえばノルウェーでは非常に効率的に稼げる仕事として認識されており、漁業者の99%が満足しているというデータもある。漁船ごとに漁獲枠が割り当てられることで、計画性をもって魚を獲ることができるし、単価も安定し、収入も高いからだ。

 一方、日本では、資源量と同時に生産額も減少し続けているため、将来性が見出せず、漁師の後継者不足も深刻だ。

『資源管理をやって魚が増えたとしても、そのときに漁師がいなければ本末転倒』と言われることがありますが、そんなことはありません。むしろ長期的に考えれば、しっかりとした規制を行って資源が増えれば、魚の単価も上がり、今よりも効率的に稼げるようになります。そもそも獲りすぎで魚も漁師も減り続けているのです。なので、国として資源管理をまず優先的にやるべき政策なのです」(同)

 日本は世界6位の海洋面積があり、国際連合食糧農業機関(FAO)が「世界で一番豊かな海」というほど、恵まれた環境にある。

 手遅れにならないうちにノルウェーのような成功事例から学び、科学的根拠をもとに、速やかに国がホッケ、マダラを始め主要魚種に漁獲枠を適用し、運用していかなければ、国産の魚が食べられない日がくるかもしれない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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