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AI導入でリストラが進みやすい上場企業ランキングを初算出!

2018年02月05日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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『週刊ダイヤモンド』2月10日号の第1特集は、「企業も個人も生死を分けるAI格差」です。AI革命によるリストラがにわかに進み始めました。3メガバンクが3万人超の削減を打ち出し、損保大手も営業事務の9割自動化を決めました。日本企業のAIサバイバルがいよいよ本格的に始まったのです。個人も際限なき格差拡大の危機にさらされています。企業も個人も、あらがいようのないAI革命に対応できるか否かで生死を分ける「AI格差」時代の到来です。

ランキングトップとなったトヨタ自動車の豊田章男社長はCESでAI化を宣言 Photo:REUTERS/AFLO

 今後、AI化が一気に進みやすく、潜在的にリストラの可能性が高い企業はどこなのか。そこで本誌のデータ分析担当の小島健志記者が東証1部上場企業を対象に、定量的なデータを基にAI化スコアを作成、「AIリストラが進みやすい上場企業ランキング」を初算出した。

「AIを通じて、顧客の要望を予測できる車内のパーソナルアシスタントにしたい」。今年1月、米ラスベガスの家電見本市「CES」において、トヨタ自動車の豊田章男社長はこう言って、AI化を宣言した。実際、副社長格に米AI研究会社トヨタ・リサーチ・インスティテュートのギル・プラットCEOを招聘し、一気にAI化を図ろうとしている。 

 AI・ロボット化を推し進めるのは、トヨタだけではない。メガバンクや通信大手など、こぞってかじを切っているのである。AI革命は人が要らなくなる革命であり、ビジネスマンであれば、その進展によって「仕事が奪われる」という可能性を覚悟しなければならない。

 では、AI・ロボット化が進みやすく、潜在的にリストラの可能性が高い企業はどこなのか。本誌では、東証1部上場企業2065社を対象に、定量的なデータを基に「AIリストラが進みやすい企業ランキング」を初算出した。

 詳細は本誌をご覧いただきたいが、まずAI関連キーワード(AIやRPA、深層学習など9単語)を定めた。そしてこの1年間において、それぞれの単語に関連する記事が企業ごとにどれだけ出たのかを調査。記事が多ければ多いほど、AI・ロボット化に関する取り組みが進んでいると分かる。

 次に、そのトップ300社に絞って社長・会長の影響力を数値化した。AI化には内部からの反発が予想される。それを承知で推進できるのは、在任期間が長く強い影響力を持つ社長か、持ち株比率の高いオーナー的経営者の存在が欠かせない。実際、AI化ができているのは、トップが強い権限を持ったオーナー系企業が多い。日本IBMの久世和資最高技術責任者は「オーナー企業には新しいことをやる土壌があり、改革が進んでいる」と指摘する。

 また、従業員数が多いところこそがAI化の余地があると想定した。さらに稼ぐ力(EBITDA=利払い前・税引き前・減価償却前利益)も加味して、実際に投資までつなげられるのかを考慮した。

 これら5指標を偏差値化して合算、「AI化スコア」として算出した。次ページの表はその上位10社のランキングである(本誌には上位240社を掲載)。

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 トップとなったのは前出のトヨタ、2位はソフトバンクグループ(SBG)となった。SBG傘下のソフトバンクは昨年の社員大会で、技術部門1.4万人を2年で半減させると衝撃的な人員削減策を打ち出したばかりだ。

 その他、オーナーの支配力が高い企業が上位に来た。永守重信氏率いる日本電産や、ロボットホテルを展開するエイチ・アイ・エスなど、いずれもAI化が一気に進んでも何らおかしくない。AI革命によって、日本では2030年度までに最大2700万人が失職するとの試算もある。あなたは大丈夫? ぜひこのランキングを参考にしてもらいたい。

個人も企業も逃れられない
二つのAI格差

 世界で今、AI(人工知能)による革命が起ころうとしている。AIがあらゆる産業で激烈な生産性の向上を実現し、18世紀後半に始まった産業革命を超えるインパクトを経済に与えるといわれているのだ。

 AIでビジネスをしようとする者は、ばら色の未来を語りたがり、メディアはAIを組み込んだ機械に人間の仕事が奪われるとあおり立てる。

 革命の先にある世界は天国か地獄か──。

 一つ、言えることがある。あらがいようのないこの激流に対応できるか否かで、個人間そして企業間のそれぞれで「AI格差」が明確になるということだ。

 実はAI革命には産業革命よりも恐ろしい側面がある。歴史をひもときながら個人の格差について解説していこう。

 まずは図を見てもらいたい。これは「クズネッツの逆U字カーブ」と称され、資本主義経済の発展で格差は拡大するが、ある時期から格差は縮小し、不平等が是正されるという説をグラフ化したものだ。

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 実際、産業革命ではイノベーションで生まれた富が資本家らに集中し、格差が拡大した。

 BNPパリバ証券チーフエコノミストの河野龍太郎氏によれば、「英国でこの逆U字カーブの上昇(格差拡大)が止まったのは1860~70年代。『ルイスの転換点』を迎えてからだった」という。

 ルイスの転換点とは、工業化の進展で農村から都市への低賃金な農民の移転が進んだ結果、農村の余剰労働力が底を突くことを指す。この人手不足によって労働者の賃金が大幅に上昇し、産業革命の恩恵が広く行き渡るようになったとされる。

 さらに大恐慌後の1930年代以降、累進的な税制や社会保障制度が整備されたこともあって、格差は縮小していくことになる。

AI革命では人が要らなくなるため
格差の拡大が続く

 戦後、一貫して低下していた「逆U字カーブ」が80年代以降、再び上昇(格差拡大)に転じた。それを指摘したのが、フランスの経済学者、トマ・ピケティ教授だった。

 ではAI革命は拡大し続ける格差を是正できるのか。答えはノーだ。むしろ格差を助長しているとさえいえる。

 河野氏は「今回の革命では労働が不要になるから、困難な時代が長引く可能性がある。現在の米国で機械に仕事を奪われた低スキル労働者を吸収するのは、ウーバーイーツのような仕事ばかりであって、経済格差の拡大が止まるきっかけがなかなか見えない」との懸念を示す。

 一方で、AI革命による付加価値は「高スキルの技術者、資本やアイデアの出し手が持っていき、平均的な会社員の取り分が増えない」(河野氏)。

 つまり、AI革命は人が不要になる革命であるが故に賃金が上昇せず、その結果、格差が拡大し続けるリスクが高いというわけだ。

 人手不足による賃金上昇で格差拡大が止まった産業革命。格差が拡大し続けるという点では、AI革命はその産業革命より恐ろしいといえる。

 だからといって、AIがけしからんと言っても始まらない。AIが進化の歩みを止めることはなく、むしろAI時代を生き抜く知恵を身に付けることが重要だ。AIは遠い世界の話ではなく、あなたの身近にある絶対に知っておくべき教養になったのだ。

AI革命でGDPが50兆円増加
労働集約型は大幅増収の期待

 AI革命は個人のみならず、企業にも格差をもたらす。

 三菱総合研究所はAIで生産性を向上させた場合、2030年の日本の実質GDP(国内総生産)は595兆円となり、活用できないシナリオと比べて50兆円も上積みされると試算した。いち早くAIを導入し、活用できた企業がその果実を得られるのだ。

 世界的にも、AIの導入を急速に進めて生産性を向上させた企業が評価を高めている。

 特に、日本は就業者1人当たりの労働生産性がOECD加盟国中21位。主要7ヵ国では最低と生産性の改善余地が大きく、革命の恩恵を受けやすい。

 勘違いしてはいけないのが、AIを導入しさえすれば効果が出るわけではないということ。AIは膨大なデータを解析して、先入観や偏見、感情に左右されることなく、人間が予想だにしない法則を導き出す。その大半は地味なトライ&エラーの繰り返しであり、その積み重ねが他社との差を生む。

 AIの導入に二の足を踏んでいた企業がいつの間にか競争力を失い、淘汰の憂き目に遭うかもしれないのだ。

 特集では、どうして日本の名門企業はAI革命で負け組になりやすいかも徹底的に掘り下げました。問い合わせ100件のうち8割が失敗する中、AI導入が遅れる本当の理由などについて探っています。個人も際限なき格差拡大の危機にさらされており、「大卒ホワイトカラー」が働き方の大転換を迫られる背景などを追いました。企業も個人も、あらがいようのないAI革命に対応できるか否かで生死を分ける、「AI格差」時代の到来です。

(『週刊ダイヤモンド』副編集長 山口圭介)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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