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21世紀の真空管「Nutube」搭載でおもしろい製品が出てきた

2018年01月27日 12時00分更新

文● 四本淑三

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NuPowerとは何ぞやのVOX「MVX150シリーズ」

 本家も抜かることはない。去年のNAMMに参考出品されていたNutube搭載のギターアンプ「MVX150」が、そのまんま発表された。キャビネット一体型の「MVX150C1」と、ヘッドアンプ単体の「MVX150H」の2種。

 MVX150C1は、UKセレッションの特製12インチ4Ωユニット「Redback」1発をマウント。ヘッドアンプのMVX150Hには、同じくRedback1発をマウントした新型キャビネット「BC112-150」が用意される。価格はMVX150C1が16万2000円、MVX150Hが11万8800円、BC112-150が5万4000円。

 アンプの仕様は共通で、出力は140W RMS@4Ω、70W RMS@8Ω、35W RMS@16Ωと発表されている。

左が「MVX150C1」、右が「MVX150H」と合わせて発売された新型キャビネット「BC112-150」

 Nutube搭載機なので出力の割には軽い。MV150Hは7.1kg、MVX150C1が19.4kg。キャビのBC112-150は15.4kgだから、全体として軽く済ませたいなら、MVX150C1の方が3kgほど軽い。ヘッドアンプだけ持って行けばいいなら、MV150Hは片手楽々コースだ。

 アンプは2チャンネル。メーカーいわくこれで「ピュア・クリーンからモダン・ハイゲインまでカバーする」そうだ。

 チャンネル1は、ゲインとワンノブ式のトーンとボリューム。それにCLEANとCRUNCHの切り替え、 そしてBRIGHT、FATスイッチが付く。チャンネル2は、ゲインと3バンドEQとボリューム、それにRHYTHMとLEADゲイン切り替え、BRIGHT、FAT、MID-SHIFTのスイッチ。マスターコントロールにはPRESENCEとRESONANCEがあり、超低域と超高域の調整が可能。デジタルリバーブも内蔵している。

MVX150H(上)のフロントパネルと、MVX150C1(下)のトップパネル。操作系も共通

MVX150H(上)とMVX150C1(下)のリアパネル。レイアウトが逆になるだけで端子や操作系は共通

 リアパネルに回ると、さすがVOXの設計者は凝っているなあと思う。Nutubeのバイアス調整ノブが付いているのだ、しかもチャンネルごとに。チャンネルはフットスイッチで切り替えられるから、バイアス設定の違うアンプを弾き分けられるのだ。

 スピーカーアウトの「WET ONLY」端子もユニークだ。これはエフェクトループを通った音や、内蔵リバーブの残響成分のみを出力するスピーカー端子。つまり、ここにキャビネットを接続すると、2チャンネル出力のアンプになる。もしかして、そのためにわざわざ独立したパワーアンプを入れちゃったのか? ちなみにセンド/リターンのエフェクトループは、パラレル/シリーズの切り替えスイッチ付き。

 最近のチューブアンプらしく、パワー・レべル・コントロールという、音圧感を維持しつつ、音量だけ落とせる仕組もある。これはフル、1/2、1/5、1/30、1/150、ミュートの6段階。マイキングやキャビネットの特性も入れ込んだ EMULATED LINE OUT付きなので、宅録にも使える。機能面では至れり尽くせりで完璧だ。

 しかしこの製品のニュースは「NuPower」と称する技術と、それを盛り込んだ新型のパワーアンプが搭載されていることに尽きる。

 メーカーのリリースによると「一般的な真空管アンプのパワー部と同様にNutubeをプッシュプルで使用し、さらにスピーカーの動的な特性を読み取り前段の回路にフィードバック」しているらしい。

 どんな仕組みかは謎に満ちているが、Nutube単体ではパワー管として使えないはずなので、ソリッドステート回路との組み合わせだろう。去年発売されたMV50のCleanみたいな、あの感じを想像すればいいのだろうか? サグ感やパワー感の歪んだニュアンスがリアルで、へたくそな私が弾いても気持ちのいいアンプだった。チャンスがあれば、これはVOXの開発部に取材をしてみたい。

 MVX150シリーズとBC112-150の発売は4月下旬予定。

MVX150シリーズ用に開発されたスピーカーキャビネットBC112-150のフロント(上)とリア(下)

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