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三菱重工の商船事業、大赤字からのリストラ完了で囁かれる次の再編

2017年12月18日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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三菱重工の長崎造船所香焼工場は7隻同時に進むLNG船の建造に沸くが、今後、同船の商談減少で操業は落ち込む見込みだ Photo by Mieko Arai

 大型客船の工事の混乱で、2719億円にも上る巨額損失を計上した三菱重工業の商船事業。激しい市況の変化と激化する競争環境を乗り切るため、この事業で行っていた構造改革が完了しようとしている。

 2018年1月に、造船などの事業会社である三菱造船と三菱重工海洋鉄構(海洋鉄構)を新設。三菱重工本体の船舶・海洋事業部門も含め、商船事業の機能を全てこの2社に集約する。

 三菱造船では官公庁船、乗客志向型フェリーの設計・建造や、LNG(液化天然ガス)船の設計などを、海洋鉄構では大型船の建造や、防波堤といった大型海洋鉄構構造物の設計・建造などを行っていくという。

「一つにまとめてしまうと戦略がぼやけてしまう」。12月8日、一時あられがちらついた長崎造船所香焼工場で、大倉浩治・三菱重工船舶・海洋事業部長は客船2社体制を敷く理由をこう説明した。

 最先端技術に開発費を投じながら設計も手掛ける三菱造船と、船の建造コストの低減に強みを出すべき海洋鉄構では、目指す方向が違うというのだ。

 2社の船出を前に、「20~21年には、2社の合計売上高を現在の1000億円規模から1500億円に持っていきたい」と意気込む大倉氏。一方、社内外では早くも不安の声が上がっている。

水面下の第2ラウンド

 それも無理からぬ話だ。方向性は違えども、一社体制ならば人事や経理などの間接部門を一つにできる分、コスト削減効果を得られるからだ。

 三菱造船には別の不安も生じる。設計には船の造りやすさといった建造現場のノウハウが必須だ。三菱造船における設計の高度化や若手設計者の教育を考えれば、「大型船の建造も手掛けた方がノウハウを蓄積できる」と地元経済界の関係者は首をかしげる。

 海洋鉄構にしても、「コスト競争力を高めるのはいばらの道」(三菱重工社員)だ。三菱造船も海洋鉄構も、従業員の大部分は三菱重工からの休職派遣という形を取ることになっており、三菱重工の高い給与体系がそのまま引き継がれるからだ。役職給の変更等を進めても、人件費の負担は軽くない。

 新会社2社は、三菱造船が設計等を手掛けた船の建造を海洋鉄構が担うなど、業務面で連携していく方針だ。だが、安値攻勢を仕掛けてくる韓国勢などの存在を考えれば、三菱造船が連携相手に海洋鉄構を選べる保証はどこにもなく、海洋鉄構の自立が危ぶまれる。

 大倉氏は、新会社の売却などの業界再編について、「今は念頭にない」と否定する。しかし、「こいで駄目やったら後がないけん。完全に切り離さるんねぇ」とつぶやく長崎造船所の従業員の言葉通り、商船事業の構造改革には“第2ラウンド”が待っている可能性も捨て切れない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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