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東電グループの訴訟トラブル判明!背景に天下り先優遇の企業体質

2017年11月20日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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東電PGは10月23日、SE社との工事請負契約を一方的に解除。その裏では、SE社に対する強引な作業員引き抜き工作を行っていた Photo by Yasuo Katatae、Takeshi Kojima

次世代電力計「スマートメーター」をめぐり、東京電力ホールディングスの子会社と工事業者との間でトラブルが発生している。その元凶は、東電子会社による営業妨害にある。新経営体制が発足した東電は、稼ぐ体質への転換を標榜しているが、そんな理想とは懸け離れた、身内に甘い企業体質が明らかになった。(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男、堀内 亮)

 家庭用「スマートメーター」の設置工事をめぐり、工事を請け負う業者と発注元の東京電力パワーグリッド(東電PG。東京電力ホールディングス〈HD〉の子会社)との間でトラブルが発生し、法廷闘争へ発展する事態になっていることが、本誌の調べで分かった。

 節電の切り札とされるスマートメーターとは、次世代電力計のこと。通信機能が搭載され、電気使用料の自動検針や、使用電力量のリアルタイムでの把握が可能だ。

 東電は2020年度末での工事完了を目指し、14年度から従来型メーターをスマートメーターに切り替える工事を開始。17年2月末時点で管内の約2700万件の工事のうち、1000万件を終えた。

 トラブルの相手は、その切り替え工事を担っていたエスプールエンジニアリング(SE社)。同社は20年度まで拡大する工事需要を取り込もうと、14年秋に工事業務への新規参入を決定した。

 15年2月、東電PGが実施した業者選定の入札に応札し、北関東や静岡県エリアにおける工事を落札した。同年夏から、SE社は正式に工事業務を開始していた。

 事態が動いたのは、今年10月23日。東電PGがSE社に対して、北関東エリアでの契約を解除することを一方的に通知したのだ。東電PGは、「SE社の工事作業員の離職が続き、工期内に工事を完了させる能力がなくなったこと」を解除理由として挙げたという。

 ところが、SE社はその主張を真っ向から否定する。SE社幹部は「東電PGは、当社の作業員に対して度を超えた“引き抜き工作”を行い、当社がマンパワー不足で業務を遂行できないように営業妨害をした」と憤る。

 SE社は、社内外における一斉調査を実施した。具体的には、従業員へのヒアリング、会社のパソコンのメールチェック、外部機関による周辺調査である。その結果、「東電PGが組織的に引き抜き工作を行ったことが疑われる証拠をつかんだ」(同)のだという。

東電の新方針と乖離する商習慣、天下り

 なぜ、東電PGは関与が疑われるような営業妨害をする必要があったのか。前出のSE社幹部は、「引き抜きの目的は、当社に代わって“北関東の3社”が優先的に工事業務を受注できる環境をつくり出すことにある」と打ち明ける。

 北関東の3社とは、群馬電工、栃木県電気工事、茨城電設のこと。3社は東電グループ関連の工事を担う業者の集まりである「東京電力配電工事協力会」の中核企業で、長年にわたって東電グループから工事を受注してきた。3社は共に、15年2月の入札でSE社に仕事を奪われて割を食っていたのだが、東電PGはSE社との契約を一部解除した後、この3社に工事を発注している。

 表向きの理由は、電気メーターは計量法によって切り替えのタイミングが定められており、工事遅延は許されないため、緊急措置として実績のある3社に発注したというものだ。

 だが、それは建前だ。実は、この3社は東電グループOBの天下り先で、特別な会社だからだ。

 実際に、群馬電工の堀越俊夫社長は東電栃木支店副支店長、栃木県電気工事の町田恭一専務は東電配電部、茨城電設の小室秀夫社長は東電茨城支店竜ヶ崎支社長の出身である。つまり東電PGは、東電グループと親密なファミリー企業を優遇するために、営業妨害までして新規参入企業をつぶしにかかったのだ。

 東電PGは、契約の解除理由や一連の経緯について、「契約に関することなので回答は控える」とコメントしている。

 今回の3社の受注に正当性はない。というのも、3社への発注は“緊急対応措置”であるとして、発注価格が高く設定されているからだ。SE社は1件当たりの工事単価を1550円で落札したが、3社が受注した工事単価は2200円程度。工事単価が約700円も上がっているのだ。

 東電HDでは6月末に新経営体制がスタートしたばかり。新経営陣が策定した中期経営計画では、福島第一原子力発電所事故の対応に掛かる巨費を捻出するため、“稼ぐ体質”への転換が大々的に掲げられている。

 だが、今回のトラブルで露呈したのは、稼ぐ体質への転換どころか、採算度外視で親密企業との取引を優先するなれ合いの企業体質だった。にもかかわらず、東電PGは単価上昇の原因がSE社にあるとして、SE社に損害賠償請求を行う方針。SE社も逆提訴の構えを見せており、泥沼の法廷闘争になりそうである。

 東電HDの新体制が本気で改革に挑むならば、グループに蔓延った旧態依然とした商習慣、天下りなどの人事にも踏み込むべきだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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