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リクシル発のゼロ・エネルギー住宅で他社の建材を選べない不自由

2017年09月29日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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環境への負荷を減らすべく、国内におけるゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)の普及・促進を目的とした合弁会社(LIXIL TEPCO スマートパートナーズ)を立ち上げた面々。左から、東京電力ホールディングスの小早川智明社長、東京電力エナジーパートナーの川崎敏寛社長、LIXIL TEPCOスマートパートナーズの柏木秀社長、LIXIL Housing Technology Japanの吉田聡CEO、LIXILグループの瀬戸欣哉社長兼CEO Photo by Hitoshi Iketomi

 住宅設備と電力の“両巨頭”が提供する「日本初のサービス」は、果たして顧客に受け入れられるだろうか。

 9月21日、総合住宅設備メーカーのLIXILグループと、東京電力エナジーパートナー(電力小売り事業を主体とする子会社)は、一般家庭におけるエネルギー収支を実質ゼロにする「ゼロ・エネルギー住宅」(ZEH : Zero Energy House。略してゼッチと読ませる)の普及・促進を目指す新会社を立ち上げると発表した。

 ゼロ・エネルギー住宅とは自家発電設備や省エネ機器などを搭載する新築戸建住宅のことで、エネルギーの消費量を減らす機能を備えた高機能住宅を指す。設計はさまざまで、現在、家づくりに関する企業の間では顧客への売り込み合戦が盛んだ。

 政府は、2020年までに新築戸建住宅の過半数をZEH化するという目標を立てている。16年度の実績は、国土交通省などの集計によると4.3%にすぎない。これまでは、イニシャルコストの高さなどが壁となって、あまり進んでいなかったのである。

 そこで、政府の政策を後押しするという大義名分を掲げて、断熱性能の高い樹脂サッシなどの建材を豊富に取りそろえるLIXILと、東電グループの中でも新サービスの開発に意欲的な東電エナジーパートナーが手を組んで、双方のノウハウを持ち寄った「ZEHの導入コストを下げるパッケージ商品」を提供しようというのだ。

 LIXILの瀬戸欣哉社長兼CEOは、「日本のCO2(二酸化炭素)を減らすことに貢献したい」と大きく出た。

 そして、東電エナジーパートナーの元社長でもある東京電力ホールディングスの小早川智明社長は、こう危機感をにじませた。

「今後、電力供給事業が右肩上がりの状態になることはあり得ないという状況の中で、われわれは未来に向けた新しいビジネスモデルを開拓していく必要がある」

ZEHの普及・促進は
自社の顧客のみが対象

 ところが、この新会社のパッケージ商品は、太陽光発電システムも含めて、LIXILが持つ高機能のZEH仕様の建材を使って新築で家を建てることが前提となる。裏を返せば、LIXIL以外の建材は選べないのだ。

 LIXILの主張する売り文句は、こうなる。ZEHを実現するために必須となる太陽光発電システムは、LIXILの試算で約200万円の導入コストがかかる。だが、携帯電話の割賦販売とほぼ同じ仕組みの“10年しばり”があるため、顧客の負担は実質ゼロになる。要するに、事実上の0円販売でイニシャルコストを抑えられる。さらに、一定の条件が満たされれば、国からZEH補助金がもらえる。

 他にも、売りがある。太陽光発電システムを契約・販売する際、新会社と顧客は電気需給契約を結ぶことになる。日常的には、太陽光発電で得られた電気を0円で自家消費するが、発電量が不足した場合には電力が安く供給される。こちらは、ランニングコストを下げるための仕組みだ。今後は、LIXILの建材をたくさん使えば使うほど、電気料金が割安になるメニューも整備するという。

 10月からスタートする新会社は、20年までに2万件の契約を獲得し、売上高100億円を目指すとの目標を掲げた。サービスを提供するエリアは、関東から始めて関東以外にも拡大していく。電力事業では供給区域を超えての展開はなかなか難しいが、新業態のサービスであれば、理屈の上では全国どこへでも出ていける。

 しかし、消費者が住まいや暮らしで使う製品やサービスは、消費者が自由に選び、自分で空間をデザインするものである。消費者は、好きなものを好きなように組み合わせて生活の質(QOL)を高めたいのであって、電気や建材がほしいわけではない。

 ZEHの普及・促進と言いながらも、自分たちが提供する製品・サービスのみをカウントするのなら、その効果は極めて限定的なものになる。

 もとより、LIXILの瀬戸社長は起業家精神の重要性を訴えてきた。自らも、過去に国内外で11社のインターネット系ベンチャー企業を立ち上げた経験を持つ。その瀬戸社長がゴーサインを出した割には、いささかスケールの小さいローンチとなった。

 いくら「コスト負担を大幅に低減」と訴えても、今日では珍しい「消費者には選ぶ自由がない」という仕組みには、後味の悪さばかりが残る。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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