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北ミサイル対応は不十分、防衛予算の「使い道」を読み解く

2017年09月20日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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第二次安倍政権が発足して以降、日本の防衛関係費は右肩上がりで増えている。北朝鮮の核・ミサイル暴発リスクや中国の侵攻リスクが高まっていることが、防衛予算膨張の“免罪符”になりつつある。防衛予算の最適な使い道とは? 注目すべきポイントを絞って、予算項目を点検した。(「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子)
photo:新華社/アフロ
第二次安倍政権が発足して以降、日本の防衛関係費は右肩上がりで増えている。北朝鮮の核・ミサイル暴発リスクや中国の侵攻リスクが高まっていることが、防衛予算膨張の“免罪符”になりつつある。防衛予算の最適な使い道とは? 注目すべきポイントを絞って、予算項目を点検した。(「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子)

 9月13日、北朝鮮は国連安全保障理事会で採択された制裁決議について、「極悪非道な挑発行為の産物」と国営メディアを通じて猛反発した。北朝鮮による軍事挑発がエスカレートすることだけは間違いない。

 日本では、防衛省が2018年度予算の概算要求で、過去最大となる5.2兆円の計上を決めたばかり。北朝鮮の核・ミサイル開発など、周辺地域の情勢緊迫化が“免罪符”となり、防衛関係費は6年連続の増額となる見通しだ。

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 膨張する防衛予算──。果たして、その使い道は適正といえるのか。ここでは、注目すべき予算項目を三つ挙げる。

 第一に、北朝鮮対応として計上された弾道ミサイル防衛関連経費だ。費用説明のトップの欄に、初めて陸上配備型迎撃システムの「イージス・アショア」が明記された。一方で、同じく新たなミサイル防衛手段として検討されてきた高高度防衛ミサイル「THAAD(サード)」導入は見送られた。

 弾道ミサイル防衛には、ミサイルが大気圏外に出て放物線を描いて落下を始める「ミッドコースフェイズ(中間段階)」を狙うタイプと、大気圏に再突入し標的に落下する「ターミナルフェイズ(最終段階)」を狙うタイプがある。

 現状、日本の装備では、イージス護衛艦がミッドコースで迎撃し、地上配備型迎撃ミサイル「パトリオット(PAC3)」がターミナルを狙う段取りになっている。

 今回、明記されたイージス・アショアとは、陸上にイージス護衛艦と同様の設備を設置して迎撃を行う、ミッドコースタイプ。一方の見送られたTHAADは、PAC3よりも高高度で迎撃できるターミナルタイプである。

 ある防衛省職員は、「予算に限界があり、低価格のイージス・アショアを優先させた」と言う。だが、「イージス艦と守備範囲が重複するイージス・アショアよりも、PAC3と守備範囲をすみ分けて対応できるTHAADを推す声が根強い」と元自衛官は打ち明ける。

「当座は、PAC3の射程を延ばした換装システムで乗り切ろうとしているが、ミサイル防衛に必要な対処能力は不十分。有事には間に合わない」(別の元自衛官)というのが実情なのだ。

 第二に、中国の侵攻リスクに備えた島しょ防衛に関わる費用だ。来年3月には、自衛隊初となる「水陸機動団」の創設が迫っており、予算項目でも島しょ防衛を重要視していることが見て取れる。

 ちなみに、中国の17年度の防衛予算は1兆0444億元(17.7兆円)と日本の3.4倍。日本周辺の兵力で比較しても中国とは雲泥の差があり、北朝鮮対応だけに明け暮れるわけにもいかない。

10年間変わらない陸海空の機関別シェア

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 第三に、自衛隊員の慢性的な人材不足が見て取れる予算項目である。例えば、「護衛艦の建造」。新型装備の導入を急ぐ背景には、「多機能化を急ぐことで現場自衛官の過剰任務を軽減させる狙いがある」(前出の元自衛官)。

 これらに加えて、主要国の軍事配備が陸から海・空へシフトする中、日本では、政治力のある陸上自衛隊(陸自)偏重の予算配分が目立つ。実際に、この10年で機関別の内訳はほとんど変わらない。

 防衛関係費の6割以上は自衛隊の運営コスト(人件・糧食費や維持費等)であり、現状の防衛戦略に適した要員構成にしなければ陸自偏重の傾向は変わらない。そこにメスが入らなければ、装備品等購入費や武器などの研究開発費へ資金を回すこともできなくなる。

 有事が迫る今こそ、めりはりをつけた予算配分にすべき──。長らく指摘されてきた至極当然のことに着手すべき時が来ている。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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