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全国の私有地の2割が「所有者不明」、法務省も本格調査へ

2017年09月20日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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空き家問題が深刻化する中、未登記のまま放置される不動産はますます増えそうだ Photo by Kosuke Oneda

「この10年間でこれほど関心を集めたのは極めてまれなこと」

 民間シンクタンクの東京財団が9月7日に行ったフォーラムは、当初の参加予定者200人を上回る240人が会場に押し掛け、急きょ別室でパブリックビューイングが行われる大盛況となった。会場内は中央省庁や地方自治体の職員、行政書士や司法書士などの業界団体関係者、学識者、議員などの熱気に包まれた。

 これほど多くの関心を集めたのは、フォーラムのテーマが「所有者不明土地」だったことにある。

 所有者不明土地とは、その名の通り、不動産登記簿等を見ても持ち主が誰なのか分からない不動産のこと。東京財団では2009年からこの問題の研究を続けてきた。

 事態の深刻さが見えてきたのは今夏。今年6月に法務省が公表したサンプル調査の結果によれば、最後に登記されてから50年以上経過している土地が大都市で全体の6.6%、中小都市・中山間地域で26.6%に上ることが明らかになった。また、同月に民間有識者らによる「所有者不明土地問題研究会」(座長は元総務相の増田寛也氏)も、所有者不明土地の面積は全国の私有地の約2割に当たる410万ヘクタールとの推計を公表した。

法務省が本格調査へ

 不動産登記は義務ではないため、相続時に移転登記をしなくても罰則はない。人口減少などで価値が低下し、一方で固定資産税や維持費ばかりが掛かる不動産は、相続人に所有権を移転するメリットはなく、不動産登記ならぬ“不動産投棄”されるケースが増えてきた。

 問題が顕在化したきっかけは11年の東日本大震災だった。津波の被災地から高台などに住宅を移転する「防災集団移転促進事業」において、所有者が分からず土地取得が難航する事態に陥った。

 所有者不明土地が増えれば、こうした公共事業や民間の土地取引において大きな障害となる。また、「所有者不明土地を自分の土地と偽って第三者に売る“地面師”などの詐欺集団が増えるのではないか」(不動産業界関係者)と懸念する声もある。

 こうした中、国もようやく対策に向けて動き始めた。政府は6月に閣議決定した骨太の方針で、関連法案を次期通常国会に提出する方針を決めた。また、法改正に後ろ向きだった法務省も、8月末に提出した来年度予算案の概算要求で、所有者不明土地の本格調査に乗り出すために約24億円を計上した。

 この問題を放置すればするほど、法定相続などによって権利関係が複雑化し、所有者を特定するのが難しくなる。25年以降は団塊世代が75歳以上の後期高齢者となり、多数の相続が発生するのは確実。不動産登記を促す施策や情報基盤の整備、さらには所有者全員の同意がなくても土地を利用できる法制度への見直しなど、早急な対策が必要だ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 松本裕樹)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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