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EV化や自動運転は本当にメディアが騒ぐほど急激に進むのか? フランクフルトモーターショー2017現地レポート

2017年09月17日 06時00分更新

文● 中尾真二(ダイヤモンド・オンライン

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9月24日まで、ドイツ、フランクフルトメッセでモーターショーが開催されている。業界は電動化と自動運転の動きが加速し、各地のモーターショーも様変わりしているようだが、現地から目玉となるコンセプトカーや変わったクルマ、クルマ以外の展示などをお伝えする。(フリーライター 中尾真二)

いちばんの目玉はメルセデスAMG「プロジェクトONE」

 モーターショーの華はやはり各社のコンセプトカーだろう。メルセデスは、メッセのメインエントランスに一番近いホール全体を使いAMG、Smartとともに展示を展開。注目は「プロジェクトONE」というハイブリッドスーパーカーだ。ボディはAMG GTRをよりシャープにしたような外観。デザインはフロントよりリアのディフューザーやセンターマフラーのデザインが特徴的だ。

メルセデスベンツ AMG プロジェクトONE

 エンジンは、AMGのF1エンジンをベースにダイムラーのEVおよびハイブリッド技術を投入し、1000馬力だという。GTRもF1エンジンをベースにした市販車両で、俗に公道を走るF1マシンなどと呼ばれている。すでに市販モデルが存在することもあって、コンセプトカーながら内装の作り込みもクオリティが高い。コンセプトだけ先行したハリボテ感がまったくない。

 コネクテッドカーも近年コンセプトカーの定番だ。メルセデスはプロジェクトONEとともに「コンセプトEQA」を発表した。EQAはコンパクトセグメントの100%EVモデル。特徴は、前後のアクスルごとにモーターを搭載した4WD車。航続距離は400km。EVは動力性能に優れ(バッテリー消費さえ気にしなければ)、EQAも0~100km/h加速は5秒前後だという。

メルセデスベンツ コンセプトONE

 同社はすでに2022年までに全車種EVラインナップを発表している。EQAは実用性の高いコンパクトセグメントEVのマイルストーンとなりそうだ。

 アウディは完全自動運転といわれるレベル5(無人走行まで想定)を可能にする「アイコン」というコンセプトカーを発表した。ハンドルやペダルを配した内装は未来感あふれる。4つモーターが4輪を駆動、バッテリーは開発が進む全固体電池を利用し、高出力ながら航続距離は800kmを目指すという。ちなみに全固体電池とは、リチウムイオンなど従来型のバッテリーと違い、内部に液体を使用しないバッテリーだ。

ランボルギーニはアヴェンタドールのオープンカー

 ほとんどのメーカーがEVや自動運転を推してくる中、昔ながらのわかりやすいクルマを展示するメーカーもある。ランボルギーニもそのひとつだ。

ランボルギーニ アヴェンタドール

 ランボルギーニは「アヴェンタドール」のロードスタータイプをお披露目した。V12エンジンに7速ISRギアボックスを搭載。最高出力720馬力(8400回転)、最大トルク690NM(5500回転)の4WD車だ。最高速度は350km/h。0~100km/h加速は3秒。

 アウディはR8の後輪駆動モデルRWSを発表している。アウディはクアトロをルーツとする4WD、もしくはFFを主力としている。今回あえて2WDの後輪駆動車を投入する理由は「ユーザーに、レーシングカーのようなハンドリングを楽しんでもらえるように」とのこと。

アウディ R8 RWS

 エンジンは従来のR8 V10と同じで最高出力540馬力となる。2WDとなるため重量は50kgほど軽くなる。クアトロは80年代の世界選手権ラリーで4WDシステムで鮮烈なデビューを飾り、あまたの実績を残したメーカーだが、近年ではル・マン24時間レースなど耐久レースで後輪駆動車を手がけている。スポーツモデルの後輪駆動のノウハウを持っている。

クルマ以外もおもしろいモーターショー

 クルマ以外の展示もなかなかおもしろい。メルセデスの展示ホール前では、同社のEQコンセプト(EVプラットフォーム)にインスパイアされたという2人乗り電動マルチコプターが展示されていた。

Volocopter社のEVヘリ

 Volocopter社のEVヘリは、ネットなどで動画を見たことがある人もいるかもしれない。発売は2018年か2019年を目指している。2人乗りながら、18個のモーターによって最高速度は180km/h。航続時間は30分で、航続距離は30kmほど。用途は限定されるが、クリーンかつデザインはスマート。従来ヘリに比べれば騒音も少ない。

「空飛ぶ自動車」の展示もあった。

 AEROMOBILE社の「AEROMOBILE」は、全長約6メートル、全幅約2.2メートルの細長いボディの4輪車だが、後方に折りたたんだ翼をひろげると翼長8.8メートルの飛行機となる。総重量は積載も含めて960キログラムと自動車としては軽く作ってある。自動車モードの最高速度は160km/h。飛行機モードは360km/hだ。エンジンは自動車モードで110馬力のモーター走行となり、飛行機モードは排気量2リッターの水平対向4気筒エンジンを利用する。ターボチャージャーを搭載し、最高出力は300馬力となる。

AEROMOBILE

 翼は自動的に展開、収納ができるが、後部のプロペラの展開は手動となる。離陸に必要な滑走距離は595メートル。

電動化はクルマより自転車が人気?

 自転車関係の展示もある。broseというメーカーは、電動アシスト自転車のパワートレイン(モーターユニット)を作っている。同社のユニットはさまざまなメーカーに採用されており、ドイツではトップブランドのひとつだそう。特徴はモーターと変速機の接続に樹脂製ベルトを利用し、軽量化と低騒音化を実現したこと。電動アシスト自転車そのものは特別ではないが、ドイツでは都市部の環境問題と、道路・交通機関の渋滞・混雑のため自転車がかなりポピュラーになっている。電動アシスト自転車ならスーツを着た通勤でも汗をかかず、渋滞や満員電車に乗る必要もない。移動手段が分散されるとして社会的メリットも高い。

broseの電動アシスト自転車

 自転車ブームに便乗したのかは不明だが、自転車につないで移動できるEVの充電ステーションという展示も発見した。CHARGERYというサービスだ。

 充電ステーションといっても要は大容量のバッテリーユニットに車輪と電動アシストユニットを取り付けたもの。バッテリーの出力は24kw。重量は150キログラム。ユーザー登録すれば、30分以内に指定の場所にCHARGERYを呼ぶことができる。ただ急速充電ではないので、1回の充電に2時間からかかる。

 日本でも、EVやPHEVが普及すると、高速道路や道の駅の充電スポットが足りなくなるのではないかと言われている。自転車は高速道路には呼べないが、観光地の駐車場など、充電スポットを設置しにくいところでは、こんなサービスがあれば便利かもしれない。

人々は本当に無人カーをほしいと思っているのか

 最後に、取材全体を通じて改めて認識するのは、EVや自動運転の基本的な流れは止められないものの、こうしたいわゆる「モビリティ革命」は、メディアが騒ぐほど急激に進むのだろうか、という点だ。

 多くのメーカーがEV化、自動運転を目指すべくアナウンスを行っているが、注意深く聞くと、ガソリン車を完全に廃止するのではなく、全車種にEVを用意するという意味の場合もある。EVは、インフラ整備が進む日本や米国でも航続距離などで課題は残る。この9月に日米で大々的なワールドプレミアムを行った日産のリーフだが、フランクフルトではリーフの展示はおろか日産は参加さえしていない。他にも三菱、プジョー、ボルボなど参加を見送った企業も決して少なくない。EV化のニーズは中国の影響が大きいように、地域や市場ごとの温度差があるように見える。

 自動運転についても、レベル4だ5だと言われても、一般ユーザーには結局利用条件に制限があるなら「完全」でもなければ「無人」でもない。そもそも、ハンドルやペダルのない自動車を個人で買う必要がどれだけあるのか。個人が買える値段で提供できるのかさえ無視した議論やコンセプトがメディアには蔓延している。

 メーカーはビジネスなので、製品技術としてEVや自動運転をアピールしているがその一方、冷静に市場を見ている。そんな中、あえてメディアが煽り気味に取り上げてくれる自動運転をアピールせざるを得ないのかもしれない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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