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減塩食の味気なさを救う、意外な「野菜」とは?

2016年04月14日 06時00分更新

文● 大来 俊(ダイヤモンド・オンライン

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日本人はWHO基準の2倍も塩を摂取!
メタボの次は減塩が課題に

 毎年春は商品の値上げに注目が集まるが、今年は食塩が24年ぶりに約35%も値上がりすることが話題になった。とはいえ、「食卓塩100g」が税込み73円から98円に上がる程度で、値上げしてもまだ安価だ。それにもかかわらずこれだけ騒がれるのは、塩辛い食べ物が好きな日本人の国民性が多少影響しているのかもしれない。

食塩の過剰摂取が高血圧を引き起こすことは良く知られている。減塩が進んできてはいるものの、まだまだ日本人の食塩摂取量は多いのが現状だ

 実際、日本人の食塩摂取量(20歳以上)は、2014年で1日10g(男性10.9g、女性9.2g)と、WHOが目標値とする5gの倍だ。近年、国や学会などが「減塩」を啓発した結果、摂取量は徐々に減少傾向を示している。

 厚生労働省が毎年実施する「国民健康・栄養調査」を見ると、10年の10.6gから4年間で0.6g減った。しかし、国策である「健康日本21」(第2次)で22年の達成目標に掲げた「8g」には程遠い。

 なぜ塩を減らさなければならないかと言えば、過剰摂取をすると、高血圧になりやすくなると言われているためだ。

 塩の実態はナトリウムと塩素が結びついた塩化ナトリウム。ナトリウムは血液などの体液の循環や調節に重要な役割を果たし、本来は人間にとって欠かせない物質だ。しかし、とり過ぎると高血圧の原因になる。高血圧が続くと血管や心臓に負担がかかり、動脈硬化や心臓肥大が進行。その結果、脳卒中や心筋梗塞などを引き起こす危険が高くなる。

 ナトリウムのとり過ぎで、なぜ高血圧になりやすくなるかは十分には解明されていない。血中のナトリウム濃度が高くなると、薄めようとして体内の水分が血管内に移動。結果として血液量が増えるために血管壁への圧力が高くなり、血圧が上がるという説がある。あるいは、増え過ぎたナトリウムが血管壁にある細胞に水分とともに取り込まれ、血管がむくむために血液が通る道が狭くなり、血圧が上がるという説もある。

 他にも、ナトリウムが交感神経を緊張させるために血管を収縮させるといった見方もされている。いずれにせよ、塩分をたくさん摂ると高血圧になるという現象だけは確かなようだ。

 「自分はまだ高血圧と診断されていないから関係ない」と言う人もいるかもしれないが、油断は禁物。基本的に、血圧は年齢を重ねると誰しもが上がっていくからだ。健康でも、若い世代でも予防の観点から減塩生活は望まれている。メタボ対策で国民運動を展開し、一定の成果を上げつつある日本が、次にターゲットとすべきは「減塩」だ。

減塩しても味を支えるのは旨味成分
意外なアノ食材が食卓を支える!?

 減塩への取り組みの第一歩は、1日にどれだけ塩分を摂取しているかを知ることだろう。その目安を計算できる便利なツールが、秋田県が提供している「簡単!食塩摂取量計算Webサイト」だ。自分が1日に食べた料理と量にチェックを入れるだけで、簡単に食塩摂取量が算出できる。

 試しに筆者も使ってみた。朝食はバターを塗った食パンとハムエッグ、昼食はラーメンと餃子、夕食は豚の生姜焼きとごはん、ポテトサラダ、たくあん、豆腐の味噌汁。餃子に付けた醤油など調味料も計算に入れて、はじき出すと、なんと塩分は16.8gに!意識しないで食べているとWHO目標値の3倍は軽く超えてしまう。

 筆者は減塩には今まで抵抗感があった。醤油や味噌なども含め、塩分を控えめにすると、味気がなくなるからだ。これまで食品メーカーから減塩の醤油や味噌が発売されたりもしてきたが、今一つ大きなムーブメントにならなかったのも現実だろう。

 しかし、そうは言っても、高血圧の克服には減塩生活への移行が効果的だ。食品メーカーの間では、この国民的な課題を支援する新たな動きも出始めた。その一つが、カゴメによる「トマト」を活用した取り組みだ。トマトは、昆布や鰹節に多く含まれる旨味成分「グルタミン酸」が豊富。減塩料理によって失われた「塩味」をその「旨味」によって補い、塩を減らしても美味しさを損なわない料理を世の中に普及させていこうというものだ。

魚介類と野菜をトマトソースで煮込む簡単減塩料理「トマトパッツァ」。減塩市場拡大の起爆剤になるか?

 具体的なメニューとして提案しているのが「トマトパッツァ」。魚介類をオリーブオイルや白ワインで煮込む南イタリアの郷土料理「アクアパッツァ」をアレンジし、魚介類や野菜をトマトソースで煮込む。

 マスコミ向けの実演会でトマトパッツァを調理してみせた料理研究家の浜内千波氏は、「トマトソースのグルタミン酸、魚のイノシン酸、貝類のコハク酸など旨味成分の相乗効果で、塩分を減らしてもとても美味しく食べられる」と、旨味による代替効果を話す。

 筆者も食べてみたが、トマトの旨味や酸味が塩味不足をうまくカバーし、美味しく感じられた。自宅でも作ってみたが、フライパンに具材を並べてトマトソースを注ぎ、火にかけて最後に少し塩コショウをするだけの簡単調理なので、料理がそれほど得意ではない自分でもたやすかった。塩分をトマトの旨味で代用することは、手間が関わらず理にも適っており、その有効性を実感したというのが正直な感想だ。

 約50年前、日本の東北地方では食塩摂取が1日30g近くにも達していたという。時代とともにその量は減少し、今やその東北で最も多い岩手でも男性12.9g、女性11.1gに減った(13年)。それでも世界の目標値から見ればまだ過剰なのが現状。トマトの旨味成分に着目した減塩社会への挑戦は注目を集めそうだ。

(大来 俊/5時から作家塾(R)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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