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単なる「ホウレンソウ」社員が時代遅れになる理由

2017年08月24日 06時00分更新

文● 中野豊明(ダイヤモンド・オンライン

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常識的な社会人のふるまいとして、ホウレンソウ(報告、連絡、相談)の励行が言われて長い年月が経つ。もちろん、ホウレンソウはチームで仕事を進めていく場合で円滑な業務遂行に必要な基本的ルールだが、最近はあまりにホウレンソウに依存する人間がスピーディーな業務完了を妨げるケースも増えている。こうした「勘違いホウレンソウ人間」とはどのようなタイプの人間で、なぜ彼らが会社をダメにするのか解説しよう。(アクセンチュア マネジング・ディレクター 中野豊明)

実はグローバルの方が
活発なホウレンソウ

 私がまだ学生だった頃、サラリーマンの父から「社会に出たらホウレンソウが重要だ」と何度も言われ、しまいにはかなり辟易しながら父の話を聞いていた記憶がある。時を経て、私はアクセンチュアに入社し、チームワークを必要とするプロジェクトを進めるにあたり、自然とホウレンソウの重要性を知るようになる。日本人同士で仕事を進める際にはもちろんのこと、グローバルのメンバーとのプロジェクトでは、とりわけホウレンソウが重要だ。

 意外かもしれないが、むしろグローバルメンバーの方がホウレンソウの頻度が高い。もちろんホウレンソウという言葉は使わないが、コミュニケーション、アップデート、キャッチアップ、フライバイ、パルス(コール)などなど、ホウレンソウに類する表現が山のようにある。

 会社によってそれぞれ言い方やニュアンスが異なるのだろうが、アクセンチュアの場合、アップデートはマネジメントに対するオフィシャルな状況報告のことである。キャッチアップは、マネジメント同士が近況をカジュアルに共有する際に用いられることが多い。フライバイは通常は承認申請を行うオフィシャルな会議に承認事項なしで状況を報告する際に用いる用語で、直訳では寄り添って飛ぶ(ランデブー飛行をする)という意味だ。パルスは、チームメンバー同士がカジュアルに状況共有する際に用いられ、互いに共振し合うという意図なのだろうから、ちょっとかわいらしい感じがする。

 ホウレンソウに関する表現がたくさんあるだけではなく、その頻度も非常に多い。日本人だけのプロジェクトの場合、報告・共有事項があっても週次の定例会議などがあると、共有の機会をその会議まで先延ばしにされることがある。一方で、グローバルメンバーはアジア、アメリカ、ヨーロッパと世界のどこに相手がいようと、必要だと思えばすぐに連絡を取る。

 連絡手段もメールや電話はもちろん、PCのSkypeなどによるメッセンジャーやネット会議、携帯電話のメッセージ送信(SMS、テキスティング)、大掛かりなビデオ会議など様々だ。

 内容も良いことの自慢ではなく、課題や問題の報告と相談がほとんどだ。悪いことほど早めに共有して、解決に向けたアドバイスを得ようとするからだ。

プロジェクトを台無しにする
勘違いホウレンソウとは

 悪いことほど早めのホウレンソウを、というのは非常に重要だ。小さな課題を抱え込むうちに事態がさらに悪化してしまうのは常だし、本人には打ち手がなかったり、打ち手の範囲が限定的だったりする場合でも、より上位のマネジメントならば簡単に解決できるケースも多い。

 それでは、プロジェクトを台無しにする勘違いホウレンソウとはどのようなものか。

 コンサルタントの付加価値とは、たとえ些細な事でも自分なりに考え、あらゆる角度から課題解決の道筋を検討したり、ビジネス発展の提案をしたりすることだと私は考えている。したがってホウレンソウの内容も、それを行う本人独自の考え方があってしかるべきなのだ。

「進捗に遅れがあります」「顧客からこのようなことを依頼されました」「提案の内容を思いつきません」これらはすべて勘違いホウレンソウである。また、こうした人ほど、ホウレンソウのタイミングが遅くなりがちで、結果的にプロジェクト全体に影響を及ぼす"手遅れ"を招きやすい。

「進捗に遅れがありますが、追加の要員投入でキャッチアップできる可能性があります。その際の追加コストはこれぐらいになります」

「顧客からの依頼に対して、自分はAとBという対応方法があると思います」

「今回の提案は、顧客の意向を考慮するとA領域の拡大ですが、自分はB領域にも同じぐらいの潜在的な可能性があると思います」

 コンサルタントに限らず、自分の存在意義を高めようとするならば、単なる情報の横流しや泣き言の相談をする勘違いホウレンソウではなく、後者のような自分なりの付加価値を加えたホウレンソウが、まずは必要なはずだ。

 先日話をしたあるIT企業の営業担当役員は、「最近の自社の営業は顧客のいうことしか聞けず、売り方に何の工夫もない。みんないつも真っ白な営業計画書を持ってくるから、この前、ついに頭にきて『24時間考えてから話に来い』と言ってしまった」と苦笑していた。

現場で重大な決断が迫られる場合
ホウレンソウを超える勇気が必要だ

 別の大手IT企業の役員の経験談では、次のような話を聞いた。

 自分が営業責任者を務めた大規模プロジェクトが稼働直後にサーバの容量不足で一斉にダウンしてしまった。

 事前に綿密かつ十分な容量の見積もりをしたにもかかわらず、アクセス数がはるかに想定を超えてしまったのである。稼働が週末にかかっていたことから、役員会の承認を得る時間がなく、自己判断でサーバの大増設を指示したのだが、それは自分の決済金額範囲をはるかに超える金額だった。

 どうにかサーバの容量不足は解消され、週明けには安定化の目途は立ったが、月曜日の出社早々開催される臨時役員会議で顛末の説明をすることになった。役員会議での説明に先立ち、彼は会議で辞意を表明する覚悟を決めていた。トラブル対応のためとはいえ、多額の追加投資を誰の了承も得ずに勝手に実行していたからである。

 ところが、会議ではトップマネジメントから非難されることもなく、「よく頑張ってくれた。大変だったな」と労いの言葉をもらっただけだった。

 この行為は果たしてホウレンソウの常識を超える愚行だったのか、会社のリスクを回避する英断だったのか、それとも単なる蛮勇なのか。

 一つ言えるのは、彼がホウレンソウにこだわり、サーバ増強を即座に判断しなければ、障害の回復にはなお数日を要すこととなり、ユーザーの信頼が著しく低下していたことは間違いないということだ。

 この話に関連して、一方で、「ホウレンソウは部下に対して常に胸襟を開き、どのような内容であっても適切なアドバイスができる上司としての度量について語った言葉である」との話を知人から聞いたことがある。

 こちらの解釈も非常に興味深く、含蓄に富んだものだが、今回は紙面の都合上、深堀りすることはまた別の機会に譲りたい。

キーワードはノーサプライズ
ホウレンソウを超える管理

 考えてみると、ホウレンソウは課題やリスクなど概ねよくない事柄に関する早めの報告と連絡と相談について語った言葉である。

 最近、アクセンチュアでは、ホウレンソウを将来的には不要にする可能性のあるマネジメント手法に着手している。

 キーワードはノーサプライズである。

 ノーサプライズとは即ちすべてのことを計画の下に、もしくは予兆管理の下で行うというものだ。従来、予算やスケジュールを計画よりも良く着地させることができると、社内の評判は良くなるのが常だった。

 ところが最近は、予定より良い着地であっても事前にホウレンソウがないとサプライズと言われ敬遠されるケースもある。これはあらゆることを管理するKPI(重要業績評価指標)が準備され、モニターされ、マネジメントに共有されているため、ホウレンソウの遅れすら把握できるからなのだが、これだけ定量的な見える化が進み、予兆管理ができるのであれば、いつか近い将来にはホウレンソウは不要になるだろう、と思えるのである。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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