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セクハラ専務に20代女子社員が大逆襲!会社の危機まで招いた顛末

2017年08月22日 06時00分更新

文● 木村政美(ダイヤモンド・オンライン

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歓迎会や飲み会等でネチネチ絡んでくるセクハラ上司に悩まされていないか?(写真はイメージです)

今回は、既婚者でありながら、好みの女性社員が現れると自身の立場も顧みず口説きまくる専務のセクハラ問題。セクハラを理由に懲戒解雇の話を耳にするが、果たして本事例では専務が懲戒解雇となるのだろうか――?(社会保険労務士 木村政美)

<甲社概要>
 創立10年の広告代理店。従業員数は50名。社長は40歳と若く、広告業界ではかなりのやり手として知られ、業績は好調。社内はラフな雰囲気だが、きちっとした労務管理がなされておらず、特に従業員間の秩序が保たれていない面がある。
<登場人物>
A専務:42歳の既婚者で専務取締役。「社長とツートップ」と呼ばれるほど仕事ができるキレ者。その仕事ぶりに社内はもとより顧客からの信頼も厚い。しかしお気に入りの女性社員が現れるとセクハラ三昧の性格に豹変!?
B社長:甲社の社長。40歳
C子:新入社員。A専務のお気に入りとなり、セクハラの標的となる
D社労士:B社長の大学時代の同級生で社労士

 A氏はB社長が以前大手広告代理店で働いていた頃の先輩にあたる。2人は仕事の面で意気投合し、やがてB社長が会社を興すと専務取締役(以下、専務)になった。A専務の仕事に対する業績は申し分ないが、困ったことがあった。それは自分好みの女性社員が現れると、既婚者でありながら自身の立場も顧みず口説きまくってしまうのだ。

 B社長はこの事実を承知している。なにせ前職の大手広告代理店社員時代からの性癖なのだから。もちろんこれまで幾度となく注意してきた。しかし、A専務に「お前、誰のおかげでここまでこれたと思ってるんだ?俺に忠告か?思い上がるなよ!」と凄まれ、何も言えなくなってしまった。

 そんな折、新入社員として20代前半のC子が入社してきた。早速、営業課に配属され、A専務の下で働くことになった。C子は明るい性格で、容姿は色白で少々ぽっちゃりしている。これがA専務の女性に対する好みと合致していた。

歓迎会をきっかけに、
専務が新人にセクハラ

 C子が入社してから2週間後、会社近くの居酒屋で歓迎会が行われた。時間が経過し、宴席がますます盛り上がってきたころ、A専務は向かいの席に座っていたC子を側に呼び寄せた。そして、いきなりC子の手を握りささやいた。

「C子ちゃん。君の手は白くてふくよかで、かわいいね~」

 そして、「もっとこっちへおいでよ」と嫌がるC子を抱きすくめた。さらに矢継ぎ早に、「宴会が終わったらデートしようよ」と誘った。

 C子はびっくりしたが「どうせ酒の席のことだから」と思い、我慢してA専務に付き合った。歓迎会が終了するや否や、ネチネチ絡んでくるA専務を振り切って帰宅した。

 C子がますます気に入ったA専務は、その後電話やメールでも執拗に誘った。既婚者なのに「愛人にならないか?」と口説き、断ると「彼氏がいるのか?」としつこく聞いた。

 困り果てたC子は、他の管理職やB社長にも相談を持ち掛けた。しかし皆一様に「それはC子さんがかわいいからだよ。A専務は適当にあしらっておけばいいんだよ」という具合で、まともに取り合おうとしなかった。そして入社3ヵ月後、とうとう嫌気がさしたC子は、会社を退職してしまった。

弁護士事務所で突きつけられた
セクハラの動かぬ証拠

 それから1週間後のことである。会社に1通の内容証明が届いた。宛名は弁護士からのもので、開封すると「C子さんはAさんと甲社に対して、慰謝料を請求する」という内容だった。B社長とA専務は驚き、あわてて弁護士事務所へ出向いた。

「何言ってるんだ!セクハラだって?そんな証拠、どこにあるんだよ!」とA専務は弁護士に対して息巻いた。

「証拠ならありますよ。ここに!」

 弁護士が提示した証拠とは、C子がスマホで録音したC子とA専務の会話、2人がやりとりしたメール内容すべて、極めつきは宴会の席で同僚に録画をお願いし、嫌がるC子を抱きすくめていた場面である。弁護士は話を続けた。

「C子さんはAさんと甲社に対して、Aさんから受けたセクハラにより精神的な苦痛を味わったとして慰謝料を請求しています。慰謝料の金額が折り合わない場合は、訴訟を起こすことになります」

 弁護士から説明を受けたB社長とA専務は絶句してしまった。この時点でようやく事の重大さに気づいたのだ。

コンプラ違反の会社と取引すると
自社のイメージダウンに繋がる

 さらに会社の営業担当がこの様子を大口クライアントに話してしまった。すると、「そんな問題のある会社とは取引できない」と甲社との今後の契約を白紙にされた。それはまったく予想外の出来事だった。

 困ったB社長は、大学時代の同級生でもあるD社労士を訪ね、A専務に関するこれまでのいきさつを話し、アドバイスを受けることにした。

 「A専務だけじゃなくて、会社にまで慰謝料請求だよ。そんなのって、ありか?」
「会社側としてはセクハラ癖のあるA専務を今まで放置同然、しかもC子さんからの相談にも応じなかった。これは職場環境配慮義務と使用者責任に問われるということだ」
「そうか……でも、あんなに証拠がそろっているとは思わなかったよ」
「録音や録画はスマホで簡単にできるし、メール内容が保存されていたのも、会社にとって不利だ」
「しかし、大口クライアントに契約解除されるとは、いったいどういうことだ?」
「コンプライアンス違反の会社と取引していると、自社のイメージダウンに繋がると判断されたと思うよ。それと社員のモラルのなさも原因かな。社内で起きた問題を外部に話した段階で、職務上、知り得た事実や取引上の情報が漏れるのを恐れたのではないかと……」
「弱ったなあ……。大口クライアントは失うし、C子からは高額の慰謝料を請求されるし……、どうすればいいんだ?」
「まあ落ち着けよ。まだ訴えられていないんだから解決策はあるよ」

 D社労士は、気落ちしたB社長をなだめつつ、以下のアドバイスを送った。

(1)C子の件に関してA、他の従業員に聞き取り調査を行い、事実確認をすること
(2)C子は弁護士を立ててきている以上、甲社としても弁護士に相談すること
(3)社内でセクハラ防止策を講じること
(4)従業員のモラル向上を図ること

 B社長は、会社の業績を上げることばかり考え続け、労務管理にほとんど向き合ってこなかったことを猛省した。そして心機一転、セクハラ騒動の解決に乗り出した。

A専務は懲戒解雇
となったのか?

 A専務は確かにわが社にとっての大貢献者で先輩であるが、今回は厳しく対処しなければならない。B社長は毅然とした態度でA専務や他の従業員にも聞き取りと事実確認を行い、さらにはA専務の過去の余罪まで調べ上げ調書にまとめた。その後、D社労士から紹介された弁護士に相談し、示談交渉まで依頼した。A専務は今回の件で、会社やB社長に対して多大な迷惑をかけたことを心から反省し、セクハラは二度としないと全社員の前で宣言した。

 B社長の素早い的確な判断と弁護士の尽力により、C子との示談はすんなりまとまった。特にB社長がこれまでの会社の対応について誠心誠意謝罪し、さらには社内でのセクハラ撲滅宣言をしたことが、C子の態度を軟化させたのだ。

 示談成立後、今度は社内秩序の整備に取り掛かった。管理職を対象としたセクハラ対策研修を行い、「社内でのセクハラは絶対に許さない」という会社方針を徹底させた。と同時にセクハラに関する社内相談窓口を設置した。これも「セクハラ撲滅」を考える社長の強い決意の表れであった。

 また、社内の秩序の乱れから規律が緩み、社員が大口クライアントに情報を漏らしたために契約解消という事態を招いた。こうした苦い教訓から、従業員全員の意識を徹底させるため、コンプライアンス研修と守秘義務に関する研修を定期的に行うことにした。さらに社内の秩序を乱さないように、社員が守るべきモラルやマナーについての再確認の必要性を痛感し、社員全員で就業規則等社内規程の読み合わせも行った。

 その後、甲社は社内全体の活気を取り戻し、新たな取引先も増え、会社創立以来の最高の売上高を更新しそうな勢いになった。

 セクハラの悩みは社労士に相談が多い問題の一つだ。A専務のように、程度がひどいと懲戒解雇になりかねないところだが、このケースでは労務管理ができていない会社であったために処分を免れたようだ。一方で本事例と比べてセクハラの程度がひどくなくても、懲戒解雇を会社から言い渡された話も耳にする。セクハラを起こした社員の切り捨てで事を済ませようとしても、根本的な解決にはつながらないだろう。

 もう一つ厄介なのは社員がセクハラの様子について取引先のクライアントに漏らしたために、契約を打ち切られたことである。社内の秩序が乱れて来ると社員のモラルや緊張感がなくなる。そのため、職場上知り得た情報を思わず漏らした典型例といえるのではないか。

 お勤めの会社ではセクハラ対策はできているか、社内の秩序が乱れていないか、今一度確認してほしい。もし、できていないのであれば、社労士や弁護士等と相談しながら対策を講じてもらいたいと思う。

本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため社名や個人名は全て仮名とし、一部に脚色を施しています。ご了承ください。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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