性能をトコトン追求するエンスージアスト向けのCPUとなるのが、インテルの「Core X」シリーズ。つい先日の7月14日に発売が開始されたばかりのこのCPUを搭載した「G-Master Hydro-X299」が、早くもサイコムから登場している。しかも、単純に話題のCPUを採用したというだけではなく、高速グラボ(ビデオカード)も合わせてデュアル水冷仕様にしたゲーミングPCだとなれば、俄然興味がわいてくるというものだ。この最新CPUの実力はどのくらいなのか、搭載モデルの魅力はどこにあるのかを探ってみよう。
ゲーム実況も視野にいれるなら8コア16スレッドの「Core i7-7820X」が狙い目
最新のCore Xシリーズは、4コアから10コアまで幅広くラインナップを揃える高性能CPU。中でも特に注目を集めているのが、つい先日登場した開発コード「Skylake-X」となる6コア以上の3モデルだ。少し細かい話になってしまうが、比較用としてゲーミングPCでの採用が多い「Core i7-7700K」を加えて主なスペックをまとめてみたので、どれだけ違いがあるのかをチェックしてみよう。
CPUのスペック | ||||
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Core i9-7900X | Core i7-7820X | Core i7-7800X | Core i7-7700K | |
コア数 | 10 | 8 | 6 | 4 |
スレッド数 | 20 | 16 | 12 | 8 |
ベースクロック | 3.3GHz | 3.6GHz | 3.5GHz | 4.2GHz |
TB最大クロック | 4.3GHz | 4.3GHz | 4GHz | 4.5GHz |
TBM3.0 | 4.5GHz | 4.5GHz | 非対応 | 非対応 |
対応メモリー | DDR4-2666 | DDR4-2666 | DDR4-2400 | DDR4-2400/2133 DDR3L-1600/1333 |
メモリーチャネル | 4 | 4 | 4 | 2 |
PCIeレーン数 | 44 | 28 | 28 | 16 |
Skylake-X採用の3モデルと、Core i7-7700Kとの比較。一番目につくのはコア数違いだが、それ以外でもメモリーチャネル数の違いや、TBM3.0対応などで違う部分がある |
漠然と、コア数が違う程度の差だろうというイメージがある3モデルだが、よく見ると結構違いがある。例えばCore i7-7800Xは対応メモリーが遅いほか、ターボブースト時の最大クロックも低い。さらに、「Intel Turbo Boost Max Technology 3.0」(以下、TBM3.0)に対応していないのも大きな違いだろう。このTBM3.0は、最大2つのコアに限られるものの、ターボブースト時よりもさらに高いクロックで動作するという機能だ。多コアCPUはマルチスレッド処理に強いものの、動作クロックが低くなるためシングルスレッド処理では廉価なCPUに負けてしまうことがあるのだが、この弱さを解消してくれる重要な機能と言えるだろう。実際、Core i9-7900XやCore i7-7820XのTBM3.0時の動作クロックは4.5GHzまで上昇するため、Core i7-7700Kと比べても遜色ない性能が期待できるわけだ。
ゲーミングPC用として考えた場合、この動作クロックの高さが重要だ。最近のゲームであればマルチスレッド処理に対応していることが多いが、そこまでCPU性能が要求されないということもあり、想定されているのは4スレッドや8スレッドと言った比較的少ないものだ。いくらCPUが10コア20スレッド対応だといっても、コアが遊んでしまっては意味がない。こういった現状を踏まえてゲーミングPC用のCPUを選ぶとなると、基本となるベースクロックが高く、TBM3.0でCore i7-7700Kに匹敵する4.5GHz動作が可能な「Core i7-7820X」が最有力といえるだろう。
単純にゲームをプレイしたいというだけならCore Xシリーズを選ばず、素直にCore i7-7700Kでいいじゃないかとも思ってしまうが、それはそれで間違いではない。しかし、マルチスレッド処理に強いということは、複数の処理を同時に行っても性能低下が起こりにくいということでもある。とくに有望な使い方となるのが、ゲームの実況配信だ。リアルタイムで映像の合成やエンコードといった処理が行われるため、性能の低いCPUだとゲームの画面が止まったり、遅延が起こってしまったりと、実況どころではなくなってしまうわけだ。とくにフルHDなどの高画質で配信したい場合などには、Core Xシリーズのコア数の多さが効いてくる。
「Core i7-7820X」搭載の「G-Master Hydro-X299」で基本性能をチェック
CPUの話はこれくらいにして、実際の性能を見てみよう。今回使用したのは、CPUに「Core i7-7820X」を搭載したサイコムの「G-Master Hydro-X299」。ストレージにシステム用のNVMe対応SSD、データ用の2TB HDDを追加したほか、メモリーは32GB、グラボに水冷仕様のGeForce GTX 1080 Tiを採用。ゲームからクリエイティブ用途まで、オールマイティにこなせる最強クラスの仕様となっている。
試用機の主なスペック | |
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機種名 | G-Master Hydro-X299 |
CPU | Intel Core i7-7820X(3.6GHz) |
グラフィックス | GeForce GTX 1080 Ti(外部出力はHDMI端子、DisplayPort) |
チップセット | X299チップセット |
メモリー | 32GB |
ストレージ | 512GB SSD(NVMe)、2TB HDD |
PCケース | Fractal Design DEFINE R5 White |
内蔵ドライブ | Pioneer BDR-209BK/WS2 |
I/Oポート | USB 3.0端子、USB 2.0端子、ヘッドフォン端子ほか |
電源ユニット | CoolerMaster V750 Semi-Modular RS750-AMAAG1-JP(750W 80PLUS Gold認証) |
OS | Windows 10 Home |
直販価格 | 39万4700円(税込) |
まずはCPUの基本性能として、「CINEBENCH R15」のスコアーを見てみよう。比較対象とするのは、高性能ゲーミングPCとして一般的に採用が多い「Core i7-7700K+GeForce GTX 1080 Ti」を組み合わせたPCだ。このPCだとCPUのスコアーは959cb、シングルコアのスコアーは187cbとなっていたが、どこまで速度が違うだろうか。
結果は見ての通りで、CPUのスコアーは1774cb、シングルコアのスコアーは195cbとなった。CPUのスコアーは、なんと約1.85倍。コア数が2倍となっているものの、ベースクロックの比率で見れば約1.7倍程度の上昇しか見込めないはずだが、それを上回るスコアーとなった。ターボブーストによるクロック上昇がかなり効いているという証左だろう。
もうひとつ注目したいのが、シングルコアのスコアーでもわずかながら上回っている点だ。シングルスレッド動作で不安のあるCore Xシリーズだが、TBM3.0の効果なのだろう、しっかりとスコアーを伸ばしているのが確認できた。
続いてゲーム性能への影響を見るため、「3DMark」でチェック。「Core i7-7700K+GeForce GTX 1080 Ti」ではFire Strikeが21000、Time Spyが8580というスコアーだったが、Core i7-7820Xではどうだろうか。
グラボに搭載されているGPUが同じということもあって、スコアーの差はCINEBENCH R15ほど激的ではない。Fire Strikeでは21739と微増しただけだが、Time Spyでは9743と1割以上スコアーを伸ばしている。さらにTime Spyで細かな値を見てみると、CPU testの結果となるfpsがCore i7-7700Kでは17.36fpsだったのに対し、Core i7-7820Xでは32.54fpsにまで大幅にアップしている。ゲーム性能としてCPUの影響が小さい事もあってスコアーにはそれほど大きな差は出ていないが、CPUの性能の高さは確実に出ているようだ。
もうひとつゲーム性能を測る定番ベンチとして、「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」でチェックしてみよう。解像度はフルHDとし、最高品質、フルスクリーンモードで比較している。「Core i7-7700K+GeForce GTX 1080 Ti」でのスコアーは18489だ。
Core i7-7820Xではスコアーは16624と、残念ながら負けてしまっている。実は同じ多コアCPUとなるRyzen 7でもこのベンチはスコアーが低くなる傾向があり、どうも多コアCPUでは不利な結果が出ることが多いようだ。現在はスコアーが低く出てしまうが、今後のマルチスレッドへの最適化次第では、大きく化けるポテンシャルがあるだろう。
なお、スコアーが見劣りするといってもゲームがプレイフィールに差が出るというレベルではなく、快適にプレイできるラインは確実に超えている。より詳細なレポートを見ても、平均フレームレートは123fpsを超えており、文句なしに速い。