少し前までは珍しかった「ペン付きタブレット」は今や成熟をむかえ、各メーカーが特色のある製品を販売している。
ペン付きタブレットは、キーボードドックとドッキングしてノートパソコンのようにも使えたり、マイクロソフト系のソフトとの連携が標準機能として組み込まれていたりと、特色はさまざま。しかし、やはりペン付きタブレットで重要になるのは「書き味」だ。
その意味で、ドスパラ「raytrektab DG-D08IWP」は、4万9800円という価格ながら、優秀な書き味を実現している8型タブレットと評価できる。
ワコムの「Wacom feel IT technologies」を採用し、4096階調の筆圧感知に対応するほか、180Hzという高速なスキャンレートを実現。180Hzは、1秒に180回ディスプレーの表示が書き換えられることを意味する。人の感覚というのはかなり鋭敏で、60Hzや120Hzでは、素早く筆記をした際にもたつきを感じる人が多いだろう。
60Hzでさえ1秒のあいだに60回も書き換えているのだから問題なさそうに思えるが、2048段階、120Hzのモデルと本製品を比べた場合は顕著に違いがわかる。
スペック的にはAtom x5-Z8350(1.44GHz)と4GB DDR3Lメモリーという、同価格帯のWindowsタブレットでは定番とも言える組み合わせで、処理能力が著しく高いわけではない。それでも非常になめらかな書き味を実現できていることから、本製品とワコムの技術力の高さもうかがえる。
鉛筆のように細いペン
標準で付属するWacom feel IT technologiesは、バッテリー不要の電磁誘導式で、バッテリーを内蔵する一般的なデジタイザーと比較すると、重量にも使用感にも大きな違いが出る。「重みのある書き味の方が好み」という人もいるかと思うが、ちょうど鉛筆に近い握り心地と軽さを実現したこのペンは、さっと払うような筆記によく向いている。
また、標準でペンに入っているノーマルな芯のほかに、マーカーのような描き心地のフェルト芯と、より粘り気のあるエラストマー芯も同梱。好みの書き味や、制作するイラストの雰囲気に応じてペン先を付け替えて利用可能だ。
気軽にイラスト制作ができるデバイスとしていい
上の図はraytrektab DG-D08IWPと、イラスト制作ソフト「CLIP STUDIO PAINT DEBUT」で制作したデッサンである。鉛筆による筆記に近いようなタッチが確認できるのではないだろうか? 今回はデッサンを紹介しているが、より現代的なアニメ調のイラストや、デザインのラフ用途の制作などにも最適だろう。なお、raytrektab DG-D08IWPにはCLIP STUDIO PAINT DEBUTのシリアルコードが付属しているので、購入後すぐにイラスト制作が可能だ。
サイズは8型とコンパクト。ペンタブや大型のタブレットを使った方が適切なシーンもあると思うが、外出先でサッと取り出してスケッチしたりするときなどはコンパクトなほうが使いやすい。ポテンシャル的にも、大型タブレットと比べてそん色ないクオリティーを目指せるタブレットだと思う。
余計なソフトが入っておらず、価格も手ごろ。作業デスクに一台置いておいて、デザインやイラストのラフを描きつけたり、より本格的な着色に入る前の下絵用にすると、制作環境に一層の幅が出るのではないだろうか。
能力は確かなものなので、用途に限らずタブレットによるビジュアルの制作に興味があったり、携わったりしている読者には幅広くおすすめしたいタブレットである。
raytrektab DG-D08IWPの主なスペック | |
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CPU | Atom x5-Z8350(クアッドコア、定格 1.44GHz、キャッシュ2MB) |
グラフィックス | インテル HDグラフィックス400 (CPUに内蔵) |
メモリー | 4GB DDR3L |
ストレージ | 64GB eMMC |
無線LAN | IEEE802.11 ac/a/b/g/n |
Bluetooth | Bluetooth 4.0 |
センサー | 加速度センサー、GPS |
デジタイザー | Wacom feel IT technologies デジタイザー4096階調、スキャンレート180Hz |
インターフェース | microUSB×1(給電兼用)、ヘッドフォン出力×1、microSDカードスロット |
映像出力 | microHDMI ×1 |
バッテリーパック | リチウムイオンバッテリー |
バッテリー駆動時間 | 約4時間 |
サイズ | およそ幅214mm×奥行128mm×高さ10.1mm |
重量 | 約400g、ペン約5g |
OS | Windows 10 Home 64ビット版 |