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死者数は20年で26倍!熱中症を防ぐグッズと意外な“秘策”

2015年06月25日 06時00分更新

文● 大来 俊(ダイヤモンド・オンライン

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高齢者の多くが自宅で罹患
急増する熱中症の真実

 本格的な夏の到来を前に、日本国民は今年も「あのリスク」に備えなければならない。毎年、多くの人が亡くなる「熱中症」だ。

 あまり知られていないことだが、熱中症による死亡者数は急増している。環境省の資料「熱中症環境保健マニュアル2014」によると、1993年以前は年間平均の死者数は67人だったが、94年以降は492人に増大。猛暑だった2010年は1745人に上り、93年以前の年平均に比べて何と26倍にもなっているのだ。死亡者のうち65歳以上の割合は、95年は54%だったが、2010年は79%に増え、高齢者が大半を占めるようにもなった。

東急ハンズ新宿店の暑さ対策コーナー担当の内田諒さん(右)と販売促進担当の渡部貴志さん。熱中症対策グッズの売れ行きも好評だ

 救急搬送者数も激増している。09年は1万人余りだったが、猛暑の10年には5万人超、同じく猛暑が続いた13年には6万人近くに上昇。年齢別では65歳以上が半数を占めた。

 昨年は西日本で冷夏、東日本でも夏後半から気温が下がり過ごしやすかったにもかかわらず、救急搬送者数は4万人と高止まりしている。近年の熱中症被害の拡大は、温暖化やヒートアイランド現象に加え、高齢者人口の増大が背景にあるだろう。

 もう一つ確認したいことがある。国立環境研究所が「熱中症患者情報速報平成26年度報告書」で示した、「年齢別にどの場所で熱中症になっているか」を表したデータだ。それによると、65歳以上の高齢者は55.4%が「住宅」で発症している。高齢者は暑さへの感度が鈍く、発汗もしづらいことから、クーラーをかけずに家の中にこもり、知らぬ間に熱中症にかかってしまう場合が多い。それに対して7~18歳の子どもは「運動中」が47.4%と最も多い。

 男性の働く世代は仕事中が多い。19~39歳では39.3%、40~64歳では35.2%が「作業中」に熱中症を発症している。

単なる水やお茶では
熱中症予防には不十分!

 他の資料も当たってみよう。厚労省の「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(2010~2014年)をみると、建設業が死者50人、疾病者(休業4日以上)710人と最も多く、製造業、運送業、警備業がそれに次ぐ。ただし、商業でも死者6人、疾病者137人が発生している。死傷リスクは全業種に及ぶと言っても過言ではない。

 働く世代にとっては、自分の熱中症へのケアもさることながら、高齢の親や自身の子どもの熱中症対策にも注意する必要があるだろう。

 どのような対策が有効か。最も手っ取り早い手段が、よく言われるように水分をマメに摂ることだ。熱中症とはひと言で言えば、暑さや運動によって体内に生じる熱を外に十分に放散できず、体温が上昇してしまって起こる健康障害だ。

 熱を体外に放散するルートは主に2つ。「皮膚の血流から外気への熱伝導による放熱」と「汗をかいて蒸発する時の気化熱による放熱」だ。つまり人間は体内に熱が溜まらないように、血流や汗の量を増やしたりして、せっせと外に放熱するおかげで、暑い中でも生きられる。

 ここでポイントとなるのが「血液量」だ。血流を増やすには十分な血液量が必要。また、汗は血液から作られる。すなわち、暑い中で汗をかくことによってどんどん失われていく血液量を補充することが重要になる。そして、血液の成分はその9割が水分だ。水分をマメに摂ることが血液量を補充することにつながるわけだ。

 しかし、どんな水分でもいいというわけではない。実は単なる水やお茶では不十分だ。発汗して塩分を失ったカラダは塩分濃度の回復を優先する。そんな時に水やお茶を飲んでしまうと、ますます体内の塩分が薄まってしまう。

 そこでカラダは濃度を調節するために飲んだ水分の半分程度を体外に排出してしまうのだ。さらに緑茶や烏龍茶にはカフェインが含まれ、カフェインには利尿採用があるため、余計に排出が促進されてしまう。同じくカフェインが入っているコーヒーや、利尿作用があるビールなども避けるべきだ。

 飲むべきは塩分(ナトリウム)が含まれているスポーツドリンクだ。さらに糖分を含むこともポイント。糖分があると腸でのナトリウムの吸収が促進されるからだ。

 ここ数年、熱中症が注目を浴び、様々な熱中症対策飲料が店頭に並んでいる。購入時はナトリウムと糖分を含有しているか、必ずチェックするといい。全国清涼飲料工業会では、熱中症予防に適した清涼飲料の条件として、ナトリウム濃度が少なくとも100ml当たり40~80mg含有することをガイドラインで示している。この数値も参考になるだろう。

キング・カズ公認の
冷却タオルが人気

 水分補給以外の対策では、外側からできるだけカラダを冷やすことも効果的だ。特に血流の多い手首や首回り、脇、肘や膝の内側、額、こめかみなどを冷やすと、熱を外に逃がすことができる。

 東急ハンズ新宿店では4月下旬から3階に暑さ対策コーナーを設けて、カラダを冷却できる様々な商品を販売している。「今年は5月に暑い日が続き、出だしの売れ行きがとても良かった。男性も暑さ対策の意識が高まり、購買行動の時期が年々早まっている」と、売場担当の内田諒さんは話す。

 内田さんには男性に売れ筋の暑さ対策商品を5つ上げてもらった。まず一つ目が、最近種類が増えている「ひんやりマフラー系」のカテゴリーの中でも、今年特に注目されているという「COOL CORE」(ITSUMO、1944円、税込み以下同)。水に濡らし、3~5秒強めに振るだけで生地が冷たくなる。プロサッカー選手の三浦和良選手が公認していることが売り文句だ。

 筆者も実際に使ってみたが、確かに生地が冷たくなり、額や首回りの冷却に便利だ。生地に水分が含まれている限り、振れば何度でも冷たくなる。仕事中は帰社時に、休日はアウトドアなどで使える。子どもの運動時に首に巻かせることも一案だ。ただし、一度濡らすと携行しづらい。外出時に持ち歩けるように、濡れた商品を入れる専用ケースが付属すると使い勝手がよくなるだろう。

 シャツの下に着るインナー「EKSLIVE」(ワコール、2160円)と、部屋着に使えてスーツの下にもはくことができるステテコ「HEYATEKO」(ワコール、2160円)も売れ筋だ。いずれも吸汗速乾が特徴で、汗による熱放散をサポートする。筆者はHEYATEKOを試してみたが、部屋で涼しく過ごすことができた。また、インナーとしてもズボンと肌の密着を防ぐことができて快適だ。

「おしゃべり熱中症計」(デザインファクトリー、3996円)は、部屋に置くと重宝する。気温と湿度を10分おきに自動的に計測し、熱中症の危険度を5段階のLEDサインで知らせてくれる。気温だけでなく湿度も測るのは、湿度が高くなると汗をかきにくくなり、熱中症リスクが高まるからだ。さらに、「気温35℃、湿度70%、危険、危険、こまめに水分とってね」「エアコンはついてる?」などと声で対策をアドバイスしてくれる。オフィスに置くほか、暑さに気づきにくい高齢者の部屋にあると便利だろう。

 最後に紹介してくれたのが、ミニ扇風機と水のスプレーボトルが一体化した「MAGI COOL」(950円)。顔や首すじなどに水をスプレーして扇風機の風を当てると、気化熱によって肌表面の熱が奪われ、冷却できるという仕組みだ。

塗る、吹き付ける
冷却グッズも効果あり

 肌に直接塗ったり、シャツに吹きかけたりして冷却効果のあるグッズについても、東急ハンズと同様に暑さ対策商品に力を入れるロフト(武蔵境店)で調べてみた。汗っかきの筆者が「使える」と思った商品はこれだ。

左から「どこでもアイスノン」、「シャツクール」、「ピタリスウェット」

●「シャツクール」(小林製薬/540円)

 衣類にシュッとスプレーするとメントール系の冷感成分が付着し、汗をかくたびにひんやりとして皮膚の熱を冷ましてくれる。シャツの下の下着に吹きかけて着用すれば、仕事中の暑さ対策になる。筆者も下着の胸、背中、脇やシャツの首回りに吹き付けて外出してみたが、高いひんやり効果を実感できた。

●「ピタリスウェット」(BCL/648円)

 ハッカ油やメントールなどを配合したボディ用クリーム。筆者は首回りや手首、額などに付けて外出。持続的に高い冷却効果が感じられた。

●「どこでもアイスノン」(白元/561円)

 ハンカチなどにスプレーすると、吹き付けられたミストが瞬時に氷状に変化する。実際にハンカチにスプレーして額に当ててみると、氷を当てたような冷感が得られた。炎天下の外出先でほてった肌に有効だろう。

 いずれのグッズもコンパクトなサイズのため、ビジネスバッグに入れて持ち運べる。外出先や出張先に携行し、冷却効果が薄れたり、必要性を感じたりした時にすぐさま使える点もメリットだ。

熱中症予防に最強!
運動直後の牛乳で暑さに強いカラダを作れ

 ただし、これまで紹介してきた方法は、本格的に暑くなってから有効な、いわば“対症療法”だ。熱中症対策でもう一つ大切なことは、梅雨が終わる前に、夏本番に備えて暑さに強いカラダを作っておくことだろう。

 その一つの方法として有効なのが、「少しきつめの運動」の直後に「牛乳を飲む」習慣を続けることだ。具体的に、信州大学の能勢博教授は「インターバル速歩」の後に牛乳を摂取することを推奨する。インターバル速歩とは能勢教授が考案したウォーキング法。競歩のようにサッサカ歩く「速歩」と、ゆっくり歩く通常のウォーキングを交互に繰り返すものだ。速歩では自分がややきついと感じる程度のスピードを保つ。

 例えば速歩を3分行った後、ゆっくり歩きを3分行い、それを5セット、計30分取り組む。その後に牛乳をコップ1杯(約200ml)飲む習慣を週4回続けていけば、徐々に暑さに強いカラダに改善していくという。数ヵ月前から始めるのが望ましいが、1~2週間でも効果が出始めるそうだ。

 理由を説明しよう。ポイントは牛乳に含まれる乳たんぱく質が、血液中のアルブミンという成分の原料になることだ。乳たんぱく質は消化吸収がとても速く、運動直後に飲めばすぐに肝臓に運ばれる。ややきつい運動後の30分~1時間は肝臓のアルブミン合成能が高まっているため、アルブミンが大量に作られ、血中に運ばれる。

 アルブミンには外から血管内に水分を取り込む作用があり、増えるとその作用が強まるため、血液量が増える。結果、前述の通り、血液量を増やすと体内の熱を放散しやすくなり、熱中症予防につながるというわけだ。

 さらに速歩による効果もある。速歩を行うと足の筋肉に大きな負荷がかかる。筋肉は運動によって傷んだ組織を回復させようと、運動直後は普段よりも積極的に糖質やたんぱく質を取り込もうとする。牛乳には糖質もたんぱく質も含まれているため、そのタイミングで飲めば、効率よく吸収され、筋肉が太くなっていく。

 足の筋肉が太くなるメリットは、血液の循環がよくなり、熱中症にかかりにくくなることだ。心臓から足に送り出された血液は、歩行などで足の筋肉が動き、血管に圧力がかかることによって再び心臓に戻される。こうして血液を循環させる役割があることから、足は「第二の心臓」とも呼ばれている。この機能は足の筋肉が多いほど働きやすくなるため、インターバル速歩と牛乳によって足の筋肉を増強することも、熱中症の予防に役立つのだ。

 そもそも日頃から運動する習慣を続けると汗をかきやすい体質になり、それも暑さに強いカラダ作りにつながる。熱中症の患者が急激に伸びるのが梅雨明け直後。暑さにカラダが馴れていないためだ。今年こそは暑さへの備えを万全にして、家族ともども熱中症を克服したい。

(大来 俊/5時から作家塾(R)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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