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デバイス管理を可能にするSORACOM Inventryはインパクト大

いよいよSigfoxにも対応!マルチLPWAの道に進むソラコム

大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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LoRaゲートウェイの通信に衛星を用いた実証実験も開始

 玉川氏の後半のセッションはLPWA(Low Power Wide Area)への取り組みの説明に費やされた。

 セルラー通信からスタートしたソラコムだが、この1年はIoTのラストワンマイルとして注目を集めるLPWAに注力。なかでも、免許不要な920MHz帯を用いて長距離の通信を実現するLoRaWANに関してはいち早く商用化を進め、サービスとしての「SORACOM Air for LoRaWAN」やゲートウェイ、デバイスなどを提供してきた。また、5月にはLoRaデバイスをオープン化し、エンドデバイスやモジュールの相互接続実験を実施している。

 今回はエンドデバイスであるGiSupplyのGPSトラッカー「LT-100」とSTマイクロの「ST LoRaWAN Discvery Kit」の相互接続試験が終了したことが発表された。また、フランスのKerlinkの屋外向けLoRaゲートウェイ「Wirnet iBTS Compact」も投入される。3G/LTEモジュールを搭載しており、技術適合取得も完了しているため、LoRaWAN導入の大きな切り札となるだろう。

Kerlinkの屋外向けのLoRaゲートウェイ

 さらにLoRaWANに関しては、新たにLoRaゲートウェイのバックホールに衛星回線を利用する実証実験も行なわれた。スカパーJSATの通信衛星を用いることで、セルラーの電波が届かない場所での通信も可能になったという。「電波は届かないが、電源はあるといった山奥でも、衛星通信を使って、どこにでもデータを送ることが可能になる」(玉川氏)。

LoRaWANのバックホールにスカパーJSATの衛星通信を使う実証実験

Sigfoxにもいよいよ対応!ソニーのLPWAでも実証実験を開始

 そして今回もっとも大きい発表は、これまでLoRaWANのみだったLPWAの選択肢を増やし、マルチLPWA戦略に舵を切った点だ。

 まずは5月に発表されたばかりのソニーの独自LPWAとSORACOMプラットフォームとの実証実験の開始が発表された。現在開発中のソニーのLPWAは1つの受信機で200km以上をカバーする長距離通信が大きな売りで、時速100km以上の高速移動時やノイズの多い都市部での通信も可能という特徴を持つ。独自技術とはいえ、既存のLPWAと比べかなりの伝送距離を誇るため、期待が高まる。

ソニーのLPWAとの実証実験をスタート

 920MHz帯を採用するLPWA規格の双璧をなすSigfoxのサポートも発表された。国内でSigfoxを展開する京セラコミュニケーションシステムズ(KCCS)のパートナーになり、SigfoxによるLPWAソリューション拡大にも注力するという。

 SigfoxはフランスのSigfox社が提供するLPWAサービスで、1国1キャリアの方針の下、グローバルでサービスを展開している。2017年6月時点で32カ国でサービスを展開。日本では昨年の11月にKCCSがデバイスあたり年額100円~という低廉な価格でサービスを提供することを発表している。サービスは2017年2月から東阪エリアでスタートさせており、2018年3月には政令指定都市を含む主要都市、2019年3月には人口カバー率で95%を目指すという。従来は上り通信のみだったが、利用可能な帯域が法令改正された後は、下り通信も可能になるという。

 今回発表されたソラコムのサービス名は「SORACOM Air for Sigfox」で、セルラーやLoRaWANと同様の使い勝手でSigFoxデバイスを扱える。ゲートウェイを用意する必要があるLoRaWANと異なり、SigfoxはKCCSが基地局とネットワークを運営しており、SIMも不要なので、Sigfoxデバイスを購入すれば、すぐに利用可能になる。

SORACOM Air for Sigfoxのネットワーク概要

 リファレンス用のSigfoxデバイスも、1台単位でWebコンソールから購入できる。提供されるのは、7種類のセンサーとバッテリを内蔵したプロトタイピング用端末「Sens'it(センシット)」と、接点出力センサーを簡単にSigfox連携できるオプテックス製のドライコンタクトコンバーターの2種類。価格はSens'itが税抜8478円、ドライコンタクトコンバーターが税抜3万9800円で、ともにSORACOM Air for Sigfoxの利用料(1年分のSigfox通信、SORACOMアプリサービス相当料)を含んでいる。

あらゆる無線とクラウドをセキュアにつなぐプラットフォームとしての価値

 セルラーに加え、LPWAの選択肢が増えたことで、今後SORACOMを用いたIoTでは用途にあわせてネットワークを選ぶことが可能になる。玉川氏をはじめとしたソラコムのメンバーがAWSから引き継いだ「オープン性」と「フェアネス」というカルチャーがサービスに色濃く根付いたことで、SORACOMのプラットフォームとしての価値はますます高まってきたと言える。

 玉川氏が最後に強調したのは、あらゆる無線とクラウドをセキュアにつなぐSORACOMのプラットフォームとしての存在意義だ。ソラコムはAWSのみならず、Microsoft AzureやGoogle Cloud Platformなど主要クラウドサービスへの対応を進め、今回はLPWAとしてLoRaWANだけではなく、Sigfoxにも対応した。今後さまざまなLPWA規格が登場しても、SORACOMのプラットフォームからは統合的に扱うことができる。これはIoTを作るあらゆるユーザーにとって、大きな福音と言えるだろう。

SORACOMはあくまでプラットフォーム

 玉川氏は、「提携したSigFoxからは、今後すべてのクラウドにつなぐことができる。また、Funnelとつないでいただいたブレインズテクノロジーはセルラーにも、LoRaWANにも、Sigfoxにも対応することになる。これはまさにネットワークの効果。デバイス、クラウド、ネットワークなどに関わる人たちも、こうしたイベントでつないでいきたい」と語り、セッションを終えた。

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