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豊洲市場にアマゾンが入る!?小池都知事が狙う物流センター化の行方

2017年06月29日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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“首都の政治決戦”の様相を呈する東京都議選が終盤を迎えている。最大のテーマとなった築地市場の豊洲移転問題は、築地、豊洲の両立という小池百合子知事の奇抜な提案を受けて、賛否両論の議論が白熱している。そこへ、あの流通業界の“黒船”襲来が噂されているのだ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 岡田 悟、柳澤里佳)

アマゾンと都が豊洲活用で手を握るのではないかという噂が広がっている

 7月2日に投開票を控えた東京都議会議員選挙。論戦は終盤を迎えている。昨夏に当選した小池百合子知事率いる都民ファーストの会が、これまで多数派を形成し都政に絶大な影響力を発揮してきた都議会自民党を、どこまで追いつめられるかが焦点だ。

 論戦の最大のテーマが、築地市場の豊洲移転問題だ。6月20日、都は従来の築地を取り壊した後に土地を売却する方針を改め、「築地は守る、豊洲を活かす」をスローガンに、豊洲と築地の両方を活用する方針を発表した。

 流通業界関係者がこぞって注目したのが豊洲について。小池知事は「冷凍冷蔵・加工の機能を強化して、ITを活用した総合物流拠点にする」「湾岸地域の物流センターとして有効な立地。転配送機能や市場外流通機能を発展させることで新たなビジネスチャンスを生む」と発言している。

 ある物流企業首脳は「件の豊洲は考えられないくらい良い立地。まとまった広さがあるし、環状2号線の開通も予定されている。今一番勢いのある“黒船”が狙うのは当然だ」と語る。黒船とは日本の流通市場の“破壊者”米アマゾン・ドット・コムである。アマゾンと都が、豊洲活用で手を握るのではないか、と噂が広がっているのだ。

 というのもアマゾンは今、生鮮食品に非常に力を入れている。4月から青果、鮮魚、精肉、乳製品といった生鮮品1万7000点以上と、キッチン用品などを取りそろえる「アマゾンフレッシュ」という新サービスを都内の一部エリアでスタート。契約農園から仕入れた野菜や、築地で仕入れてその日の朝に加工した鮮魚を販売する「新鮮市」という企画を週2回開催したり、デパ地下でも人気の専門店ブランドを複数取り揃えたりと、流通大手のネットスーパー顔負けの、充実した内容だ。しかも配送は午前8時から深夜0時まで行い、注文から最短4時間で届ける。

 人気は上々で、6月には配達対象エリアを千葉と神奈川の一部エリアへも拡大。アマゾンは今後も準備が整い次第、配達エリアを広げていくという。

 こうしたサービス拡充には、新たな配送拠点が必須。冷凍冷蔵・加工の機能を持ち、立地も良い豊洲市場はまさにうってつけというわけだ。

アマゾン独自のシステム・装置は
豊洲では重量オーバー?

 とはいえ、実現には高いハードルがあるのも事実だ。

 ある都政関係者は「半年ほど前、市場問題プロジェクトチームを中心にアマゾンによる利用が検討されたが、積載荷重を理由に見送られた」と明かす。

 豊洲市場の建物については、定められた積載荷重が1平方メートルあたり700キログラムの個所が多くあり、築地市場をそのまま移転させて利用するにしても、荷物を満載したフォークリフトやターレットトラック(小型の電動運搬車両)が集中して走れば、重みに耐えられない可能性が指摘されていた。

 アマゾンは全国に「フルフィルメントセンター」と呼ばれる大型物流施設を持っており、独自のシステム・装置を導入しているが、その装置が豊洲では重量オーバーになってしまうというのだ。

 また別の関係者は「豊洲の利用をアマゾンに打診したものの、足元を見られ料金を叩かれそうになった」と明かす。つまり値段で折り合いがつかなかった面もある。

 さらには、市場で働く卸や仲卸業者が、アマゾンの参入に同意するかも懸念点だ。小池知事は「豊洲は将来的に物流機能も強化した中央卸売市場、プラス、物流センターとして効率経営に徹する」と述べている。よって、従来の市場とは別の「プラス、物流センター」として、アマゾンが入居、あるいは施設の一部を取得する、といった可能性が考えられる。

卸と仲卸業者の市場機能と
アマゾンの物流機能は共存できるか

 だが、そもそも市場を築地から豊洲に移すことの是非をめぐって長年、激しい論争が繰り広げられてきた。小池知事が6月20日に発表した、豊洲に移転しつつ、築地にも何らかの市場の機能を持たせるとの方針には戸惑いが広がっていて、収拾のめどは立っていない。そんな状況に、アマゾンの参入という新たな要素が加われば、議論が混乱を極めることは必至だ。

 現在、築地にある東京都中央卸売市場は、卸売市場法で定められたルールに基づいて運営されており、卸や仲卸業者は許可を受けて営業している。もっとも政府は、卸売市場法に細かい規制が多く時代遅れであるとして、抜本的な改正を目指す方針を6月9日に閣議決定している。小池知事も当然、こうした法改正の動きを念頭に新しい時代の市場を造ろうとしている。

 とはいえ、いくら卸売市場法が抜本改正されたとしても、築地で80年にわたり培ってきた卸と仲卸業者の市場機能と、アマゾンの物流機能を果たしてどのように位置づける、あるいはどのように棲み分けるのか。ただでさえ混乱した状況が、さらに複雑化するのは目に見えている。

 そんな事情を知ってか知らずか、「豊洲市場はITを活用して、ユビキタス社会の総合物流拠点となる」「豊洲は羽田(空港)、そして成田(空港)に近い」と繰り返す小池知事。その様子は、来るべきアマゾン参入を示唆しているとも、アマゾンへの“ラブコール”とも受け止められる。

 アマゾンの豊洲参画が実現すれば、旧態依然とした食品流通市場に新風を巻き起こすことになるのは間違いない。はたして改革者の看板をひっさげた両者は手を結ぶのだろうか。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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