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葬式簡素化で「お別れの会」急成長、気になるその中身

2016年10月10日 06時00分更新

文● 古田雄介(ダイヤモンド・オンライン

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超高齢社会に突入して9年。年間死者数は増加の一途を辿るが、1件あたりの葬儀費用と会葬者数は下降線を描き続けている。そのなかにあって、葬儀後に日を改めて「お別れの会」を開催する取り組みが広がりをみせている。コンパクトに葬送を済ませる昨今のトレンドとは真逆のアプローチといえそうだが、どんなニーズが隠されているのだろうか。(取材・執筆/古田雄介)

葬式が終わったしばらく後に
もう一度「お別れ会」をする

 葬式といえば、通夜式をした翌日に葬儀・告別式をするのが一般的な流れだ。それから火葬場に向かい(地域によっては葬儀の前)、初七日法要などを済ませて精進落としで締める。しかし最近は、ここから数日~数ヵ月経った後に「お別れの会」や「お別れ会」を開くケースが増えてきている。

少年野球の監督だった男性のために開催されたお別れ会。題して「父ちゃんのお別れ会」では、少年たちが”献球”で故人を偲んだ 写真提供:鎌倉新書「Story」

 たとえば、50歳の若さでガンによりこの世を去ったある男性は、少人数の身内だけで執り行う「家族葬」で送られた半年後、改めて斎場を借りて開かれたお別れ会で、監督として熱心に取り組んだ少年野球の仲間たちにユニホーム姿で偲ばれることになった。

 白いカーネーションでホームベースをかたどった祭壇を設置し、葬式のときの数倍になる185人の参列者に献花ならぬ“献球”をしてもらうというスタイルだった。

 また、高齢で安らかに亡くなったある女性の葬儀後、その子どもと孫、ひ孫たちは、一族のつながりを確かめるようにささやかなホームパーティを開いた。開催地は故人を含む一族全員で赴いた最後の旅行先である安曇野。家族写真に囲まれた庭園にキャンドルなどを置き、親族と友人15人で追憶のときを過ごしたという。

 お別れの会の定義は漠然としており、ホテルのフロアを貸し切って数百人を集める社葬に近いものもあれば、前述のように少人数が屋外で行うパーティもある。会場も規模も式次第も自由で、宗教的なしがらみもない。共通するのは葬式の後に行うということくらいだ。

 葬儀社がお別れ会も手がけるようになったのは2000年以降で、活発化したのは2010年代に入ってから。とくにここ数年は顕著に伸びている。2011年に「お別れナビ」を立ち上げた日比谷花壇は、お別れの会の実施件数が昨年比147%で伸びているという。

葬式そのものは簡素化が加速
偲び足りない気持ちが「お別れ会」につながる

葬儀と違い、宗教やしきたりからは自由で、あくまでも親族や友人たちが納得のいく会を追求するのが「お別れ会」の良さ。屋外での会合もアリだ 写真提供:鎌倉新書「Story」

 バブルが弾けて以来、葬式は小規模化の一途を辿っている。

 派手で豪勢な祭壇が持てはやされ、会葬者が大挙して集うような贅沢な葬式はとうの昔に鳴りを潜め、いまは少人数で慎ましやかに送るスタイルが主力になりつつある。

 都市部では、ほぼ身内だけで行う家族葬が全体の過半数に迫るほど増えており、斎場を経ずに火葬場に向かう「直葬」や、通夜と葬儀・告別式を同日に済ませる「一日葬」が年々伸びている。

 葬儀はなるべく安く、小規模でさっと済ませる。そんなスタイルが当たり前になる一方で、葬式だけでは死別に納得するのに十分な時間や空間がとれなかったり、参列すらできなかったりする人も増えてきているようだ。そうした“追悼の渇き”が、お別れの会という新たな場を求める原動力になっている。

 葬儀社紹介サービス「いい葬儀」を手がける終活ポータルサイト運営大手の鎌倉新書も、そうしたニーズを感じ取って2015年12月にお別れの会サポートサービス「Story」を始めた。

 事業責任者の堀下剛司氏は、Storyの取り組みをこう語る。「厳粛に結婚式を行ったあと、新郎新婦のアイデアが盛り込まれた披露宴を開くように、お葬式と切り離して、故人を偲びたい人たちが、もっと自由な形で偲べるような場を作りましょうというのが基本の考え方です」

 こうしたアイデアがあっても、2000年代は葬儀の延長線上の取り組みをしようにも参加者や事業者側から「不謹慎だ」という声が返ってくるのが当たり前だった。「終活」という言葉が流行り、死やその周辺へのタブーが薄れた2010年代に入ったからこそ実現できた側面があろう。

準備期間が2ヵ月に及ぶことも!
「非効率でもプロセスに重きを置く」

 実際、高齢者住宅でお別れ会を開いても「縁起でもない」と言われることが少なくなり、結婚披露宴も開かれるようなホテルのホールやレストランでも、お別れ会のために貸し切りできるところが増えてきたという。世の中の理解は相当に進んでいるようにみえるが、実施件数が突然爆発的に増えることはなさそうだ。

 前述の「Story」で、多くのお別れ会の案件を手がけてきたプロデューサーの井野貴亮氏でも、同時に掛け持つのは5件が限界だという。1件あたりの話し合いは2ヵ月に及ぶことがザラで、途中で保留になったり取りやめになったりするものもある。

 あくまでもオーダーメイドで、納得いくまで心を込めてこそ、「お別れ会」を開催する意味がある。「ある意味で非効率であり続けることが、お客さまと向き合う上で重要」(同)だそうだ。

「お別れ会をしたいという方がいらしたら、まずはとことんお話を伺って思いをぶつけてもらうところから始めます。1日2~3時間の打ち合わせを何日も続けて、これはというコンセプトが見つかったら、それを核に会場を決めたり細部を詰めたりしていきます。当事者意識にはこのプロセスが欠かせないので、焦らないよう肝に銘じています」(井野氏)

 伝統に裏打ちされた型に重きが置かれる葬式に対して、お別れの会は型に囚われないことが肝要になる。まったくの白紙から納得のいく催しにするにはそれなりの手間暇が必要になるので、今後もじわじわと浸透していく流れになりそうだ。

 最後に注意点をひとつ。お別れ会の相談は、大往生で亡くなった人より若くして亡くなった人の周囲から受けることが多く、開催のタイミングは没後数ヵ月~半年というパターンが目立っている。発起人は、親族であったり友人であったり、さまざまである。

 つまり、葬式からしばらく経った後に友人たちが発起することが多いのだが、その場合も遺族に事前に相談する心構えは外せない。日比谷花壇は「どのようなお別れの会でもご遺族の意向が一番重要となります。ご遺族が出席されない場合でもお別れの会の趣旨をお伝えし、会を開く許可を得られてから進めましょう」とアドバイスする。

 もしも、近しい人の訃報に接した後、偲び足りないという思いが胸に残ることがあったら、お別れの会を発起してみるのもいいかもしれない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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