このページの本文へ

1点物の洋服づくりを気軽に頼めるサイトが人気の理由

2017年05月25日 06時00分更新

文● 吉田 由紀子(ダイヤモンド・オンライン

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

めっきり街で見かけることが少なくなった仕立て屋。縫製職人は年収200万円を切る人が大半で、食べていくことが難しいのだ。そんななか、ネットで職人と注文者をマッチングするサイトが人気を集めている。

ネット経由でオーダーメイド!
プロ職人と注文者をつなぐサイト

 素敵なシャツを見つけて試着してみたら、どうもサイズが合わない。腕の丈が少し短い、肩幅が窮屈……。せっかく気にいったデザインなのに、サイズが合わずに涙をのんだ。こんな経験はないだろうか。世の中には大量に洋服が流通していても、自分の身体にぴったりフィットするものは案外見つけにくかったりする。

 自分にジャストフィットした洋服を着たければ、オーダーメイドするのが早いのだが、町のテーラー(仕立て屋)が少なくなった今では、気軽に注文服を作るのは難しい。

オーダーメイドが欲しいけれど、どこに頼んだらいいのかわからないという注文者と、お客探しに困っている縫製職人をマッチングするサイト「nutte」は、サービス開始から2年で、2万3000名ものユーザーが集まる人気サイトに成長した

 そんな時代を反映してか、ネット経由でオーダー服を作るサービスが人気を呼んでいる。「nutte(ヌッテ)」は、プロの縫製職人とユーザーを結ぶマッチングサイト。1点から思い通りの服をプロに作ってもらうことができる。婦人服、紳士服、子ども服から和服、舞台衣裳、下着、ペットウエア、バッグ、小物類までどんなジャンルでも製作が可能だ。

 オーダーメイドといっても高価なものばかりではない。たとえば、お祖母さんが着ていた半纏(はんてん)を使って、お孫さんのために普段着を作ったケース。注文した方は、大切な形見の品だけに失敗を恐れて自分ではハサミを入れられず、職人さんに頼んだそうだ。おかげで、プロにデザインを任せることができ、可愛い日常着になって大満足したという。

 また、市販品ではカバーできない注文例も多い。からだの不自由なお子さんが入学式に着る洋服とか、背中が曲がったお年寄りが、孫の結婚式に出席するための晴れ着など、一般のテーラーでは難しい注文も可能だ。

 もちろん、おしゃれが目的の注文も多い。「気に入った布地を見つけたのでワンピースを作ってほしい」「フィギュアスケート用の衣裳をお願いしたい」「ウエディングドレスを作製してほしい」。オーダーの内容は多種多彩である。

ダイレクト注文が
日本のアパレルを変える理由

お祖母さんの半纏を子ども服にリメイク。プロの縫製職人がデザインも担当し、可愛らしい普段着になった。

 注文する場合は、WEBサイトに内容を詳しく掲載する。専門的なことがわからなければ、その旨を書けばOK。職人は注文内容を見て、自分が引き受けられそうな案件だと判断したら、注文者にコンタクトをとる。気にいった職人に直接オーダーすることも可能だ。

 取引きが決まれば、あとは製作に入る。デザイン画や見本品があれば送付。製作プロセスはWEB上で見ることができ、双方が納得するまで何度でも相談ができる仕組みだ。

 2015年2月に始まったこのサービス。わずか2年余の間に急成長を遂げている。今では、登録している縫製職人は1100名。ユーザーは2万3000名を数える。職人には厳しい審査を課しており、パターンの読み方や製品のクオリティをnutte独自の基準で評価し、ビギナーからプレミアムまで5つのランクに認定している。

 nutteを立ち上げたのは、伊藤悠平さん(株式会社ステイト・オブ・マインド代表)。伊藤さんは自身も縫製職人として働いた経験を持っており、その時の苦い経験が、このサービスにつながったという。

「私は縫製の仕事を10年続けましたが、残念ながら、この仕事だけで食べていくのは難しかったんです。縫製業は人脈が頼りで、知り合い経由で注文が来るケースがほとんどです。季節によって波があるので、量の調整も困難になり、常に安定していません。そういった体験から、技術を持ちながらも、それを活かす場がない職人さんが大勢いるのでは?と考え、彼らの時間と技術を活用する場を作りたいと思いました」

 実際、縫製職人の年収は200万円を切るのが現実だ。時給にしたら1000円以下。というのも、従来の縫製業界では何社もの仲介業者が中に入るので、その分、多額のマージンを取られる。これだけでなく、中小の業者は倒産して支払いが不可能になるケースも少なくない。また、大量生産する縫製工場では、部分ごとに作業を分担することが多く、一着をまるごと作り上げる機会が少ない。そのため技術が身につきにくいという。

「とにかく、業界全体で後継者が不足しています。職人さんの年収を上げることで、若い人が参入しやすくなる職業にしていきたい」(伊藤さん)

「ようやくこの仕事一本でいけるように」
服飾産業の復活にも一役

 かつては、品質の高さから世界中で人気だった日本の洋服。しかし、安価な大量生産品が台頭し、今や市場規模は縮小する一方である。日本国内に流通しているアパレル製品の国内生産比率は、わずか3%にまで減少してしまっている。

 こういう現状を打破する糸口が、nutteが行っているダイレクト注文である。発注者と製作者が直接取り引きを行うので、余分なマージンを引かれることもない。また発注側は、細かい要望を直接伝えることができ、出来上がりの感想も直接届けることができる。その声が職人の励みになり、技術向上にもつながっている。

 また、既存の縫製工場では嫌がられる小ロットでの注文も可能だ。小回りが効くので、中小のネットショップからのオーダーも多いという。

「これまではイヤな仕事でも受けざるを得ない状態でした。こちらが選ぶということができなかった。でもnutteでは、自分がやりたい仕事を見つけて契約ができる。そこがうれしいです」

「別のアルバイトをしながらじゃないと縫製は続けられない状態でしたが、ようやくこの仕事一本でいけるようになりました。将来はプロ向けに洋裁の指導をしていきたい。こんな夢を持てるようになりました」

 こんなふうに、nutteで仕事を始めた職人さんからは、希望の声も多く届いている。

 縫製に限らず、織物、染織など、日本の財産と言ってもいい服飾の技術。これらを守り、次世代へつなげていく意味でも応援したいサービスである。

(吉田由紀子/5時から作家塾(R))


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ