このページの本文へ

「アウトドア会議」が職場の空気をガラリと変える効用

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
ドームテントが会議室を兼ねる。ここであぐらをかいて向かい合うだけで、肩の凝らないくつろいだ雰囲気になりやすい

 職場を離れて、アイデアがひらめくとき、あなたはどの場所にいるだろうか。

 車を運転しているとき、湯船につかっているとき、シャワーを浴びているとき、空いている電車に乗っているとき、散歩中のとき――等々があげられるだろう。

 こうして見ると多くの場合、1人で自由に思いを巡らすことができる場所にいる点が共通している。自分にとって心身ともにリラックスしやすい環境をつくることで、新たな発想が浮かびやすくなるのだ。

 リラックスした瞬間にひらめきが生まれる場所は、人によって千差万別だろう。

 では、オフィスで仕事をしているとき、アイデアはどこで思いつくか。組織(場合によっては部署、プロジェクトチーム等もあるだろう)で動くために、理想的な場所で発想を生み出すのは、難しいと感じられるのではないだろうか。

 そこで今回は、仕事の一部を屋外に持ち出して、自由闊達なアイデアを引き出すことに取り組む企業に注目した。

キャンプでアイデアが
浮かびやすくなるのは本当か?

 その企業は、アウトドアブランド・スノーピークの66.7%出資とハーティスシステムアンドコンサルティング(旧社名アイ・エス・システムズ)の33.3%出資による合弁会社「スノーピークビジネスソリューションズ」(愛知県名古屋市)である。同社はアウトドアオフィスの提案と導入サポートを行っている。「Outdoor Small Office / Third Office」の頭文字をつなげてOSO/TO(オソト)と読ませ、仕事の一部を屋外に持ち出すことでチームの結束力を高め、自由闊達なアイデアを引き出そうというのだ。

 なるほど、青空の下でテントを張り、川のせせらぎや鳥のさえずりをBGM代わりにして語り合うことができれば、さぞかし談論風発となることだろう。そして夜には焚き火を囲んで話し合えるなら、話は自ずと人生哲学の領域にまで及び、より高まった結束力がチームに生まれることも確実だ。

 だが、レクリエーションとしてのキャンプならともかく、仕事となると、当然のことながら疑問も湧いてくる。パソコンを持って移動となると、どこで行うかの場所選びが問題になる。ノートパソコンの電源用にディーゼル燃料の発電機をレンタルしなくてはならないし、都会と比べて電波状況が思わしくない山間部で行う場合は、ネットがつながらない恐れもあるからだ。23区内にオフィスを構えている会社なら、そこから現地へ向かう場合、往復だけで半日がかりだ。果たしてアウトドア会議は、企業で取り入れられていくのであろうか。

 ここで、先ほど出てきたスノーピークビジネスソリューションズを詳細に紹介しよう。同社は、2016年7月設立の新しい会社だ。公式サイトを開くと、キャンプ場にテントを張り、そこにノートパソコンを持ち込み、焚き火を囲んで語りあうスタッフの姿が動画で映し出されている。

 これを見ると「スノーピーク社のメンバーが分離独立して……」というストーリーを思い描きたくなるだろう。しかし、実際に設立のきっかけをつくったのは、ITシステム開発/コンサルティングという一見畑違いな業務を行っているハーティスシステムアンドコンサルティング(旧社名:アイ・エス・システムズ)社の方だ。同社の名古屋支店開設を機に、スノーピークとの共同出資で合弁会社を設立し、IT関連との兼業でアウトドアオフィス事業を展開する運びとなった。

会議室の椅子をアウトドアチェアに
変えることから始めてみる

 取材当日、オフィスを訪問してまず驚かされたのは、ビデオ会議用大画面モニターなどのIT機器と、テントや椅子などのアウトドア用品が同居するそのたたずまいだ。代表取締役の村瀬亮氏に案内されたのは、会議室を兼ねるドーム型のテント。靴を脱いでテント内で向かい合い、お話を伺った。

「IT技術そのものよりも、それに関わる人と人との関係性こそが企業成長の原動力になる」

 村瀬社長はシステム導入支援業務を長年手掛けてきたなかで、こう実感した。良好なチームビルディングに何より役立ったのがアウトドア経験だったと振り返る。

「職場における普段の役割分担から離れ、力を合わせてテントを立て、一緒になって食事をつくる。すると、お互いが相手の意外な一面を知るようになります。その結果、職場の雰囲気もガラリと変わり、チームワークも高まったんですよ」

 このアウトドア経験を活かそうと思い立った村瀬社長は「社内の空気を変えるためにも、アウトドアの機会をぜひ他社にも提供したい」と考え、アウトドアオフィス提案事業を始めたという。

 同社のトップページには「自然と、仕事が、うまくいく。」という標語が記されている。チームでアウトドアに飛び出せば、取っつきづらい印象のあった相手とのコミュニケーションも自ずと生まれ、メンバー間の結びつきもより強固になっていく。

 そうした職場外の交流の機会として、昔から日本企業で広く行われてきたのが、いわゆる「飲みニケーション」だ。そちらも、気心を通じ合うという面では少なからぬ効用があると思われるが、それと比較して、アウトドアならではの良さがあるとすれば、それは一体どんなことだろうか?

「飲み会と一番違うのは、森林に囲まれ、心身ともリラックスしやすい環境のためでしょうか、アウトドア会議では、ネガティブな話題はなく、前向きのアイデアがどんどん出てくる点ですね」と村瀬社長は言う。

 確かにそうだ。職場を離れた飲み会になると、「全く、うちの課長ときたら……」と言うような愚痴話になってしまいがちだ。それはストレス解消にもなるかもしれないが、仕事帰りの飲み会からイノベーションが生まれた例があるのだろうか。

椅子が簡単に折り畳めるから、会議のフットワークも軽くなり、「じゃあ外でやろうか」という話にもなりやすい

 だが、そうは言っても職場のチームでキャンプに出掛けるのは、日帰りでもそうそう簡単にできることではない。他に方法がないのか、疑問をぶつけてみた。すると、村瀬社長が指し示したのは、会議テーブルを囲むアウトドアチェアだった。

「これは普通の会議室用の椅子より安いですし、簡単に折り畳んで外に持ち出せます。この椅子を持って屋上なり、近所の公園なりに出かけてミーティングをするだけで、職場の重苦しい空気や硬直したアイデアを打ち破ることができるのです」と同社長が言うように、まずは会議室用の椅子から持ち出し可能な折畳式のアウトドアチェアに変えることを提唱している。

創造性と集中力を高める
「ウォーキング会議」というスタイルも

 さらに一歩進んだ「ウォーキング会議」というスタイルがアメリカのビジネス界で注目を集めている。アンケート調査の結果、その有用性が明らかになりつつある。

 これは、様々なIT企業で経験を積み、アップルの経営幹部も務めたニロファー・マーチャント氏(女性)が、2013年にIT・エンターテイメント・デザインの専門家が集うTED(Technology Entertainment Design)カンファレンス(本部はニューヨーク)で提唱したものだ。やり方は、遊歩道や公園などをひたすら歩きながら話し合うだけ。会議室や喫茶店での打ち合わせとの違いは大きく、ウォーキング会議の実践者では「創造性が高まる」というアンケート回答が5.25%、「集中力が増す」という回答が8.5%多い結果となった。

 もちろん、歩きながら行う場合は、人数もせいぜい3人までといったところだろう。プロジェクターもホワイトボードも使えないのは言うまでもない。だが、メモ帳を持ち歩いて、大切なことはメモ帳に書き留めれば事足りる。ビジネスパートナーとのオフラインでの濃厚な共有時間が、得がたいひらめきを生む。

 そして先ほどの村瀬社長が話していたように、折畳式のアウトドアチェアにしておけば、外に持ち出せてアウトドア会議もできる。少人数で気分を変えて話し合いたいときにうってつけだ。

 会議をオフィス外に持ち出す習慣ができてくると、大きな公園の近くといったロケーションが魅力的な立地に思えてくるはずだ。今ITベンチャーの間では五反田が、渋谷よりも賃料が安いわりに交通も便利であることから、エキサイティングな街として人気を集めている。雰囲気のよい公園の近くに集まる流れがあってもよさそうだ。

「アイデアに行き詰まった」「社内の空気は息苦しい」などで思い悩んでいたら、上司や同僚に思い切って「会議はあの公園でしませんか?」と提案してみてはいかがだろうか。

(待兼音二郎/5時から作家塾(R)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ