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非常用発電機が動かない!ずさん点検恐怖の実態

2017年03月13日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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非常用発電機で負荷運転を実施し、点検している様子。施設のオーナーは、点検票の提出を義務付けられている
災害による停電時に消火設備やエレベーターなどを動かすために使われる非常用発電機。だが、「その多くが作動しないのではないか」という驚くべき指摘がある。東日本大震災の際に作動せず、被害が拡大した一因となったにもかかわらずだ。東日本大震災から6年が経過した今月、その実態を取材した。 (「週刊ダイヤモンド」編集部 田島靖久、取材協力/ジャーナリスト・金賢)

 スイッチを入れ、エンジンを始動させるやいなや、ごう音と共にものすごい量の黒煙が排気口から噴き出した。辺り一帯には、目も開けていられないほどの煙と、タールの臭いが立ち込め、作業員たちが一時避難する騒ぎに。今年2月、ある商業施設に設置された非常用発電機を点検した際の出来事だ。

 非常用発電機とは、地震などで停電した際に、スプリンクラーや消火栓のポンプ、そしてエレベーターなどを作動させるために自家発電する設備のこと。病院や介護施設、劇場など、多くの人が集まる施設への設置が義務付けられている。

 しかし、適正な点検をしていないと、排気管やマフラーなどにたまった燃料やカーボンなどが作動時に燃え、この商業施設のように煙が出たり、時には火が付いたりすることまであるという。

 非常用発電機が火災の原因になるとは本末転倒な話だが、そこまで極端ではなくても、災害時など必要なときに作動しない発電機が数多く存在するのが現実だ。

 社団法人日本内燃力発電設備協会の調べによれば、2011年に発生した東日本大震災の際、津波で流されたものなどを除き、整備不良によって作動しなかった発電機が全体の41%、始動したものの途中で異常停止したものが27%もあり、被害を拡大させる原因の一つとなった。

 ところがである。非常用設備業界の関係者は、「その程度で済んでよかった」と明かす。

「全国に設置されている非常用発電機の多くが点検されておらず、万が一の際に作動しない可能性が高い。南海トラフ地震のような巨大地震が発生すれば、本当にまずい事態になるかもしれない」と、この関係者は指摘するのだ。

わずか45%しかない
点検済み施設の中に虚偽報告も多数

 非常用発電機の点検をめぐっては、年に1回、施設全館を停電させた上で非常用発電機に切り替え、スプリンクラーなどがきちんと作動するか確認することが義務付けられている。

 とはいえ、テナントが入居する商業ビルや病院などで全館停電させることは難しいため、非常用発電機に30%以上の負荷をかけ、正常に作動するか確認する「負荷運転」による点検も認められている。

 こうした点検を実施した後、各施設のオーナーは、負荷運転実施の有無やその内容などを記載した「非常電源点検票」を管轄の消防局に提出しなければならない。

 そこで本誌では、ジャーナリストの金賢氏の協力を得て、大阪市の病院や介護施設、ホテル、商業ビル、そして公共施設を対象に情報公開請求を実施、460施設の非常電源点検票を入手して、適切な点検が行われているかチェックしてみた。

 その結果、負荷運転を実施していたのは211施設、割合にして45.87%だった。つまり、半数以上の施設が負荷運転を実施していない、もしくは実施していても電源を入れただけで点検としては意味がない「無負荷運転」にとどまっていることが分かったのだ。

 阪神淡路大震災を経験した大阪市でこのありさまだから、「東京などの大都市圏では、7~8割が実施していないのではないか」と前出の関係者はみている。

 しかし、ある防災関係者は、「正直に答えているだけまし」だと語る。というのも、「実際はやっていないのに、やったことにして点検票を提出している施設がかなりある」(防災関係者)からだ。

 この防災関係者が、負荷運転したとする施設に出向いて確認してみたところ、実際はやっていなかった施設がかなりあり、「大手不動産会社の物件や、大型病院などもあった」(同)と明かす。

 本誌でも、今回、幾つかの施設に確認してみたところ、「面倒だから、実施したことにして提出した。今後は正直に記載する」と告白する病院やホテルが複数あった。

 ちなみに、虚偽報告をした場合には、消防法で30万円以下の罰金または拘留が科せられるのだが、「手間を考えたら、バレたときに罰金を支払った方がいい」と答える施設の担当者もいた。

 こうした現状について消防庁は、「把握していないし、点検を実施していない施設がそんなに多いとは考えていない」とする。

 しかし、前出の防災関係者は、「各地の消防局は点検票を受け取るだけで、中身など精査していない。ましてや、直接、検査に出向くことは皆無」とし、「消防庁は性善説に立ち過ぎ。点検したとしている施設の中には闇があり、実態を調査すべき」と指摘する。

 東日本大震災から、6年しか経過していないにもかかわらず、驚くべき現状がある。過去の教訓を生かすためにも、いま一度、行政と民間が一体となって取り組む必要があるのではないだろうか。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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