従業員3万5000人が「場所にとらわれない柔軟な働き方」実現、サテライトオフィスも開設
富士通が今春からテレワーク制度、田中社長「自ら実践が責務」
2017年03月01日 07時00分更新
全社的な改革と部門ごとの改革、個人レベルの意識改革を並行して進める
今回のテレワーク勤務制度は、田中達也社長のコミットメントのもと、トップダウンで推進されているという。
田中氏が2月23日付けで社員向けに発信したメッセージでは、「日本を代表するICT企業である富士通が、自らICTを活用して、働き方改革をどう実践していくのか。それをやることが富士通の責務である」と述べている。加えて、一人ひとりの生産性を高めていくという考えを、人事評価制度に組み込むための運用見直しを行う考えも示した。
全社的な改革は働き方改革推進委員会が牽引する一方で、部門や本部ごとに「働き方実行計画」を策定し、業務特性や顧客事業などをふまえたうえで、主体的な計画立案と実践を行っていく。また、コーポレート部門は、今後も継続的に制度面の見直しやICTツールの提供などを実施し、環境整備を図る。
また、外出する機会の多い社員のテレワークを促すために、汐留本社および各事業所、主要ターミナル駅近辺に、社員が自由に利用できるワークスペースを用意する。昨年6月にはまず、本社内に「F3rd(エフサード)」が設置された。今後、3月中には新川崎テクノロジースクエアと川崎工場に、また5月には東海支社と東北支社にと、各事業所にも展開していく。主要ターミナル付近のサテライトオフィスには、社外の施設も利用する。
「F3rd」という名前には、自席でもない、顧客先でもない「第3のワークスペース」という意味が込められており、汐留本社のF3rdにはソロワークスペース、コラボレーションワークスペース、ミーティングスペース、ウェブ会議スペースなどが設置されている。林氏は、汐留本社のF3rdの利用率は「予想を上回っている」と紹介した。
社員の生産性向上、仕事の質向上を目指し、同社のAI技術体系である「Zinrai」を活用した取り組みも開始するという。
具体的には学習翻訳機能により、個人ごとの会話の癖を学習してメールやメッセンジャーの翻訳に活用し、海外拠点との言葉の壁をなくすほか、個人プロフィールや作成資料などのデータをもとに、課題解決において誰に相談すればいいのかを自動抽出する「人材マッチング」、勤務状況や社員の顔色から健康状態の悪化などを指摘する「健康管理支援」、回路設計業務における後工程の自動化などに活用するという。
現在、同社内ではAIに関して、約30のプロジェクトが進行しており、成果があがったものからサービスとして顧客に提供していく方針。
林氏は、「今回のテレワーク勤務制度の導入により、社員は育児や介護と仕事を両立でき、自己成長や専門能力向上に向けた時間が確保できる」と説明。多様な人材の活躍と、変化への対応力強化、さらにコンプライアンスへの対応が図られることで、富士通としてのグローバル競争力強化につながると述べている。