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ディズニー「モアナと伝説の海」に宮崎駿監督の影響

2017年02月28日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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本年度アカデミー賞の長編アニメーション部門と主題歌部門にノミネートされたディズニー・アニメーション最新作『モアナと伝説の海』。3月10日の公開を前に来日した、ジョン・マスカー、ロン・クレメンツ両監督がインタビューに応じた。 (「週刊ダイヤモンド」編集部 小島健志)

最初の視察旅行で会った
タヒチの長老の話

──今作は、南の島の少女モアナが大海原を舞台に冒険をする作品です。モアナは崖を登ったり、敵と戦ったりするなど強い”プリンセス”で、作品にはロマンスもありません。モアナが祖先の霊と共に航海をするシーンが印象的でしたが、ディズニーらしくないですね。いかがでしょうか。

Photo by Aiko Suzuki

ジョン・マスカー らしくないとは、その通りかもしれませんね。

ロン・クレメンツ ええ。これまでディズニーが手掛けてきた多くの作品には、欧州の民話やおとぎ話に基づいた西洋的な要素が含まれています。ですが今回、われわれはオセアニアを舞台にした作品を作ることにしました。

 最初から今までと違うプリンセス像を狙ったわけではありません。視察のために実際にオセアニアの島々を巡り、物語を作っていく中で自然とそうなっていきました。

 特に、そこに住む人々が祖先とのつながりや自然との関係をとても大切にしていることを知りました。

マスカー そうですね。タヒチからハワイまで伝統的な船で実際に航海した、若い女性の船乗りに話を聞きました。彼女は「エイやサメのような海の生物が祖先のように自分たちを見守ってくれている」と言うのです。

 また、最初の視察旅行でお会いしたタヒチの長老の話が忘れられません。「何年もの間、私たちはあなた方の文化にのみ込まれてきた。一度ぐらい私たちの文化にのみ込まれてはみませんか」と。

 そこで、われわれが出会った人々や、体験した素晴らしい文化・音楽を観客に伝えたいと決めました。もちろん、海底で発光した生物が出てくるシーンではピクシーダスト(妖精がまとう輝く粉が代表例)を入れるなど、ディズニーらしさも溶け込ませています。

 私のお気に入りは、エイとなったモアナの祖母が彼女を助けるシーンです。ここは宮崎駿監督作品っぽくていいかなと思っています。

われわれは宮崎作品が
本当に大好き

──クライマックスシーンも宮崎監督作品『千と千尋の神隠し』を連想させるところがありました。宮崎作品の影響を受けているのでしょうか。

マスカー 多少なりとも、ありますね。ボスのジョン・ラセターを含めて、われわれは宮崎作品が本当に大好きですから。彼の作品の多くに自然の力強さや自然を擬人化したような表現がありますが、そのような影響を受けたところが表れたのかもしれません。

Photo by A.S.

クレメンツ 本作のオープニングには、幼いころのモアナが小さな亀を助け、そこで海との絆をつくるシーンがあるのですが、それがクライマックスに関係してきます。また、ある問題に対しての解決方法は「戦う」ではなく「癒やし」である。そんなところにも宮崎作品っぽさがあるのかもしれません。

 オセアニアの島々には自然が擬人化された神話が多く残っています。そこに住む人々は海とのつながりを常に感じています。「海は生きている」と考え、海を生き物のように扱う。そのことも作品に影響を与えています。

──3DCG技術によって、海を生き物のように再現することに成功していますね。

マスカー 過去に手掛けた『リトル・マーメイド』では、手描きアニメーションで海を描きました。そのときはそのときで大変でしたが、今回はその100倍、大変でしたね。宝石のような美しい海を見せるには空間や質量、光の屈折や反射など、CGで表現しなければならないことがたくさんありました。また、『アラジン』の魔法のじゅうたんのように、海にも命を与えたい。そのために、キャラクターとエフェクトのアニメーターたちが一緒になって海の表現に挑みました。

アニメーターにとって
「描く」ということは基礎

── 一方で、ミニ・マウイというキャラクターには手描きアニメーションが使われています。なぜCGと手描きという両方の技法を用いたのですか。

クレメンツ ここは、『アラジン』のランプの精ジーニーを担当した、エリック・ゴールドバーグたちが手掛けました。紙と鉛筆で描いたものをマッピングしたのです。

 ミニ・マウイとは、モアナのパートナーで半神半人のキャラクター、マウイの分身です。マウイにはナルシス的であり傲慢ながらも良心がある。ハートのある人だと分かるように、ミニ・マウイにその役割を与えました。それには手描きアニメーションの方が面白いと思いました。

マスカー 手描きアニメーションもCGも両方使うことで、20、30代の若いCGアニメーターがエリックのような伝説的なアニメーターから学ぶ機会を得られました。それが良かったですね。

──2003年にディズニーがCG制作への転換を掲げたことで、お二人はいったん、会社を辞められていますよね。その後復帰した後、2009年の『プリンセスと魔法のキス』では手描きアニメーションに回帰しています。手描きとCGとの間で苦しんできたのだと思いますが、その違いと良さはどこにあるとお考えですか。

マスカー ははは、そうですね。私自身、まだ絵を描いていますし、やはりアニメーターにとって「描く」ということは基礎だと思います。数本の線だけで豊かな表現ができるし、アイデアでパパッと描ける。

 それがCGとなると、デザインをきちんと決めてモデルを作らなければならない。時間がかかります。

クレメンツ 本作も当初、手描きアニメーションを検討しました。ですが今回は、われわれが実際に見た世界を観客に体験し、没頭してもらいたかった。それにはCGが最適でした。

マスカー そうですね。雰囲気に入り込む没入型の作品にはCGが向いていると思います。とはいえ、それは題材によって決めればいいと思います。

 視察の際、地元の人に「画家かイラストレーターはいるのか」と尋ねました。すると、「いない」と。そこで、様式や基礎となるデザインで何か参考にできる物がないかを探しました。それが彫刻だったのです。島の風景や人々の様子を見ると、確かに「彫り」を感じる文化だった。ならば、CGが向いているなと感じたのです。

 ですが、もしも日本を題材にできるならば、私自身、葛飾北斎や歌川広重が大好きですから、線の表現や画質の良さを生かせる手描きアニメーションを選ぶと思います。物語によってどちらがいいかを決めることになると思います。

ジョン・マスカー監督(写真右)とロン・クレメンツ監督は共に1953年生まれ。2人は『きつねと猟犬』(1981年)の製作を通して出会い、以来コンビを組み『オリビアちゃんの大冒険』(86)で脚本・監督デビュー。その後も『リトル・マーメイド』(89)、『アラジン』(92)、『ヘラクレス』(97)、『トレジャー・プラネット』(2002)、『プリンセスと魔法のキス』(09)を手掛け、ディズニーのアニメーション黄金期の一翼を担ってきた。『モアナと伝説の海』は3月10日公開予定。 Photo by A.S.

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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