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三菱商事が伊藤忠から1年で首位奪還でも素直に喜べない理由

2017年02月13日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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 伊藤忠商事の業界トップの座は“三日天下”に終わりそうだ。

 三菱商事が2016年度通期純利益予想を3300億円から4400億円へ上方修正し、3500億円に据え置いた伊藤忠を抜き去る見通しとなった。

 三菱商事は15年度に資源関連の減損計上で約1500億円の赤字に転落し、首位の座を伊藤忠に明け渡したが、わずか1年でトップに返り咲くことになる。

 だが三菱商事の社内には、伊藤忠が初の首位に立ったときに、それこそ狂喜乱舞したほどの熱狂はない。それが業界の“優等生”を宿命付けられた三菱商事の社風といってしまえばそれまでだが、あまり大っぴらに喜べない事情もあるようだ。

原料炭高騰が追い風に

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 三菱商事が決算発表した今月2日、鉄鋼大手3社の16年度第3四半期決算も出そろった。経常損益は新日鐵住金が41%減の1085億円、ジェイ エフ イー ホールディングスは30%減の441億円、神戸製鋼所は260億円の赤字に沈んだ。3社の主な減益要因は原料炭の高騰だ。

 原料炭価格は、15年末に1トン当たり80ドルを割り込んだが、中国の供給抑制や生産障害などを背景に昨年夏以降に急騰。11月には310ドル前後の高水準に達し、原料炭を主原料とする鉄鋼メーカーとすればこの価格上昇が痛かった。

 一方、三菱商事をトップの座へ押し上げた立役者は、オーストラリアで石炭事業を手掛ける子会社MDPだ。

 生産コスト改善に加え、原料炭の市況上昇で持ち分利益が増加し、1社ですでに1000億円以上を稼ぎ出した。だが原料炭の大口顧客である鉄鋼大手の不振を前に、三菱商事も「これほどの値上がりは想定外」(増一行CFO)と謙遜しているかのようだ。

 伊藤忠の岡藤正広社長もこうなる展開を予期してか、昨年11月の本誌インタビューで「資源価格の上昇はメーカーの収益を圧迫するだけで日本経済にとってマイナス。景気拡大でもうかっているわけではない」と、三菱商事を念頭にチクリと皮肉を漏らしていた。

 三菱商事が、首位奪還を素直に喜べない理由はまだある。

 それは昨年4月に就任した垣内威彦社長が「今度、首位に返り咲いたら二度と譲らない」と言明していることだ。

 原料炭価格は足元では170ドル近辺まで下げており、300ドルを超える“神風”が再び吹くとは思えない。垣内社長は非資源ビジネス強化の方針を打ち出してはいるが、資源の恩恵を受けずに伊藤忠に競り勝つことはできるのだろうか。

 「想定外」の資源高で、思いの外早く首位の座を手にしてしまいそうな三菱商事。本当の正念場は17年度にこそありそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 重石岳史)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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