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利用者の本音が飛び出した「SORACOM LoRaWAN Conference 2017」

低速・長距離・省電力なLoRaWANが実現する、ちょっと先の未来

2017年02月09日 11時30分更新

文● 重森大

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実際に使ってわかったSORACOM Air for LoRaWANの特長と課題

 最後のパネルディスカッションでは、ソラコムの玉川氏がモデレーターを務めた。パネリストは九州通信ネットワーク 執行役員 サービス開発部長 松崎 真典氏、フューチャー CEO室ディレクター 池田 博樹氏、ウイングアーク1st 営業本部 クラウド営業統括部 アライアンスディレクター 武市 真拓氏。やはり同じように、それぞれの取り組みがまず紹介された。

ウイングアーク1st 武市 真拓氏

 ウイングアーク1stはオフィスが入っているビルのトイレにセンサーを設置、トイレの利用状況を可視化した。同社は渋谷のオフィスビルを5フロア使っているが、下は4階から上は21階まで間隔が空いている。ビル内をいくつのゲートウェイでカバーできるかという実証実験だったが、中間に近い14階オフィスに設置したゲートウェイ1台で上下17フロアに広がるセンサーすべてと通信ができたとのこと。

17フロアに広がるオフィスのトイレを1台のゲートウェイでカバー

 フューチャーはスマートシティならぬスマートビレッジ構想を進めるためにSORACOM Air for LoRaWANを活用する実証実験を行なった。京都府与謝野町の町役場にゲートウェイを設置し、畑や軽トラックなどに設置したセンサーとどの程度通信が可能か検証。移動速度が高いと通信状況が悪くなることや、天候や時刻でも通信状況が変化することがわかった。ドローンにデバイスを装着して飛ばす実験も行ない、正常に通信できることを確認したという。

フューチャー 池田 博樹氏

 九州通信ネットワークは橋梁監視にSORACOM Air for LoRaWANが使えないかと試した。従来の方式ではセンサーや通信機器を動かすために電源敷設工事をする必要があり、工事費や運用コストが高く気軽に導入できなかったが、SORACOM Air for LoRaWANなら低コストでセンサーからのデータを収集できるのではないかと期待している。またこちらでもドローンにデバイスを装着してどの程度の速度、距離で通信可能かを検証している。移動基地局としてSORACOM Air for LoRaWANを搭載したドローンを川の上で飛ばし、データを収集してくるモデルを検討しているそうだ。

 やってみてわかったこととして池田氏が挙げたのは、路地に固定しているデバイスでも周囲の状況により感度が変わるということ。天候などに左右されているようなので、これからより多くのデータを取って検証する必要があるとした。また松崎氏は田舎で人通りも少ない橋梁など、目視確認に行くのは大変だけれど多額の監視コストもかけられない場所で役立ちそうな感触を得たようだ。

九州通信ネットワーク 松崎 真典氏

 実証実験からわかった課題について玉川氏が聞いたところ武市氏は、ラスト30メートルの情報収集手段として有望だが、ビル管理などのためにはビルオーナー理解が必要だと語った。続いて池田氏は、一見何もなく見晴らしが良いと思える田舎町でも高低差が結構あり、通信の障害になり得ることが分かったので、地形の確認も重要と述べた。

高い建物がなくても高低差のある山間部では通信状況が地形に左右される

 所有モデルと共有サービスモデルのどちらが魅力的かという質問では、松崎氏は共有サービスモデルでスモールスタートし、サービスが成長したら所有モデルに移行できるようにしてほしいと要望を述べた。池田氏は所有モデルと共有サービスモデルの両方を組み合わせて安価に冗長構成のように使えないかと提案していた。

 玉川氏からの最後の問いは、これからのソラコムに期待することとは?というもの。これについては3人が揃って、レイヤー1とアプリケーションレイヤーのコンソールパネルを別に用意して欲しいと語った。現状ではデータが来ているかどうかしか、コンソールからは見えてこない。データが送信されていないのか、LoRa通信に異常が発生しているのか、ゲートウェイより先のセルラー通信が切れているのか、データ取得できない原因が見えにくいという。

 セッションの最後にはそれぞれ次のように参加者に語りかけて、カンファレンスは幕を閉じた。

「使ってみてはじめて分かることが多いので、少しでも興味がある人はぜひ使ってみて欲しい」(武市氏)

「LoRaWANのコンソーシアムみたいなものを作って、サービスを素早く立ち上げられるパートナーを集めたい」(池田氏)

「九州には共有アクセスポイントがまだないので、SORACOM Air for LoRaWANを共有サービスモデルで試してみたいというところがあれば、協力していきたい」(松崎氏)

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