PC事業の甘えを指摘
富士通の田中社長は構造改革への取り組みとして、事業部門の改革、デジタル革新、お客様フロント改革という3つを掲げており、2017年度までは「形を変える」取り組みを重視。2016年度からは並行する形で「質を変える」変革に取り組んでいる。
「形を変える」では、ビジネスモデル変革を継続。事業形態最適化のさらなる追求と、グローバルフロントの強化が課題であり、一方で「質を変える」では、先端テクノロジーの開発やサービス基盤の強化、デジタルソリューションの拡充を進め、つながるサービスへの投資集中、社内実践によるサービスの飛躍的向上に取り組むことをあげる。
ユビキタスソリューションの再編は、「形を変える」という観点での象徴的な取り組みであり、PC事業のレノボグループとの統合は、その最たるものだといえる。
田中社長はPC事業に関して「高い信頼性を持ち、新たな技術にも挑戦するという意味からも、もともと非常にいいものを持っていることは理解している。PC事業で培ったブランドも大事にしたい」としながらも、「PC事業にはひとつの事業体としては利益があがらなくてもいいという発想からは決別し、独自に利益を追求し、独自の強さをきちっと追求してもらいたい」と同事業が持つ甘えの構造からの脱皮を求めながら、「独立した環境のなかで新たなアイデアを創出し、富士通のコア事業とのシナジーを発揮できるものがあれば、連携によって強さを発揮すればいい。独立した立場から自分たちの事業をもう一度見直してほしい」とする。
そして「コモディティー化が進展した市場環境のなかで強くなるためには、さまざまな検討をし、いまある課題を打開する道筋を探っている」と語りながら、「まずは部品の調達価格から改善する必要がある。その点で、レノボグループが持つ調達力は魅力。これまでとは違う形で体質を強化することで、富士通のコア事業とのシナジーを高める方向を模索したい」とする。
レノボグループとの協議内容については「現時点では具体的なことは言えない」とするが、「富士通、レノボのそれぞれの強みを生かし、PC事業の強化を図る。一番いい形を模索している」と語る。
富士通のPC事業は2017年には、レノボグループと統合することは、高い確率で実行されることになりそうだ。その動きのなかで、2011年にレノボグループ入りしたNECパーソナルコンピュータとの間に発生する製品ラインアップや生産体制、サポート体制の重複部分について、どう統合、再編するのかも気になるところだ。また、国内シェアで45%以上となる3社連合の市場への影響力の強さにも注目が集まる。
レノボ、NECパーソナルコンピュータ、富士通クライアントコンピューティングの動きから目が離せない2017年になりそうだ。

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