蓋を開けてみれば……ではないが、Galaxy Note 7問題の裏側で伸びたのはAppleではなかったようだ。Gartnerの最新のデータでは、SamsungもAppleもシェアを落とし、Huaweiら中国勢が続伸するという結果になった。

Samsungは前年同期比で過去最大の減少
11月中旬、大統領選後のアメリカに行く機会があった。街はクリスマスの飾りがされ、車に乗るとラジオからはクリスマスソングが聞こえてくる。人々は11月末の感謝祭やクリスマス休暇の予定が目下の話題(大統領選挙の話はなんだかタブーのようにすら感じた)。今から1ヵ月ぐらいの間、年間で最もあらゆる製品が売れる時期に入った。
だが、その時期に世界でスマートフォンが売れるのかとなると雲行きは不透明だ。Gartnerが発表した2016年第3四半期(7~9月期)のスマートフォン市場の世界データでは、出荷台数は前年同期比5.4%にとどまった。
第3四半期の注目は2つあった。1つ目はGalaxy Note 7の影響、2つ目はiPhone 7の動向だ。
Samsungは予想どおり大きなマイナスとなった。出荷台数は前年の8358万台から7173万台と14.2%も減少。これは2014年第4四半期に記録した12.3%以来過去最低記録の更新となった。SamsungはGalaxy S7が好調で、GartnerによるとGalaxy Note 7も出足は良かったとか。回収前にすでに250万台のNote 7が世界市場に出荷されていた。 しかし8月末にバッテリー問題が報告され、9月初めに米国で回収が行なわれた。Samsungは別のバッテリーを搭載した機種を出すが問題は解決できず。米国、カナダ、ドイツ、ルワンダ、ニュージーランドなど各国政府が飛行機での持ち込みを禁止した。ニュージーランド政府は国内のネットワーク事業者のサービス上での利用を禁止した。
Gartnerのアナリストは、Galaxy Note 7の撤退という決断を評価しながらも、「Samsungブランドのダメージは大きく、短期的にはスマートフォンの販売増は難しい」とコメントしている。
一方でAppleのシェアも伸びていない
特に中国で急ブレーキ
では世界シェア2位のAppleはどうか。SamsungがマイナスならAppleがプラスと予想してしまいがちだが、Appleのシェアは11.5%で、これまでで最低だという。2015年の第3四半期のシェアは13%、出荷台数は前年同期から6.6%の減少となった。
足を引っ張ったのはAppleにとって最大の市場である米国と中国。米国では8.5%、中国ではなんと31%も減少したという。9月に発表されたiPhone 7は中国で買い替え需要を喚起できていないというのがGartnerの分析だ。
Galaxy Note 7問題が大きくなったとき、恩恵を受けるのは同じくハイエンドのAppleだろうと見る向きは多かった。たとえばKGI SecuritiesのアナリストはGalaxy Note 7を注文した消費者の約半数がiPhone 7に流れると予想していた。ところがその流れは限定的だったようだ。
シェア3位は変わらずHuawei。2016年Q3は3248万台を売り上げ、前期の2741万台から増加。シェアは7.7%から8.7%に増やした。Appleとの差は2.8%に詰めた。このままなら、Huaweiは近いうちにAppleを超えて2位になりそうだ。(思えば、数年前のMWCでHuaweiが真っ白なブースを設けた時がある。このときに「Appleを意識してのブースデザイン?」と聞いたところ否定されたが、「デザインは最優先事項」とHuaweiのブース担当は付け加えた。わずかの間にあっという間にのし上がった)。Gartnerも「honor」ラインが好調で米国と欧州への拡大により、今後も成長が期待できるとコメントしている。
4位はOppo、5位はBBK Communication Equipment(Vivo)だ。ともに中国ブランドで、Oppoも元々はBBKの子会社としてスタートしている。なお、Counterpointの調査では、中国国内ではOppoがHuaweiを超えてトップに立ったようだ。シェアはそれぞれ前年同期の3.4%から6.7%に(Oppo)、2.9%から5.3%に(BBK)に拡大した。

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