この連載は江渡浩一郎、落合陽一、きゅんくん、坂巻匡彦が週替わりでそれぞれの領域について語っていく。今回は落合陽一が、TOKYO DESIGN WEEK 2016に出展した作品を紹介する。
やがて来る新しい自然観が計算機自然(デジタルネイチャー)
「TOKYO DESIGN WEEK 2016」に作品を出展した。今回展示のお題となっていたのは2020という言葉だった。某国際的スポーツイベントを意識してるのは言わずもがな、裏テーマは身体性ということだろう。身体性を感じるエアテントでの展示というお題だった。今回は学生さんとコラボでやることになっていたので、落合研=デジタルネイチャー研の学生さんと一緒に作る作品だ。
落合は日々、計算機自然(デジタルネイチャー)について考えている。この世界のすべてが嘘くさく感じた後にやってくる新しい自然観が計算機自然だ。
VR技術、IoT技術、AI技術、ヒューマンコンピューテーション技術が発展した先にはユビキタスコンピューティングの次の形が来ると思っている。それは実質(バーチャル)と物質(マテリアル)、人(ヒューマン)と機械(ボット)の区別がつかなくなった世界だ。
想像してほしい。我々は今、あらゆるものがインターネットに繋がり、あらゆるバーチャルリアリティーが普及していく世界の中で、なにがバーチャルリアリティーで表現されている「実質的な存在」なのか。なにが物質で表現されたアナログの「物質的な存在」なのか。区別がつかない世界に到達しようとしている。
またBotやプログラムとの会話なのか、人との会話なのかの区別がつかない状態も迎えつつある。あらゆる存在がデータのどのような表現形態なのか誰もわからない世界だ。
人も機械であるし、DNAも情報にすぎず、両者の間にはプログラムとしての意味しかない。そして実質世界と物質世界もやがて区別がつかなくなる。その世界を迎えたとき、我々にとってこの現実のすべてが疑わしくもあり、逆に言うとあらゆるものが利便性にあふれ、安全で安心でもある高度なインフラに包まれる。
そして人間という知性は「すべてを疑うコスト」を受け入れることができず、やがて人はあらゆる現実を疑わずに新しい自然観として受け入れるようになるだろう。という見立てのもと研究室を始めた。
そういうテーマを含めて屋外で身体性を持ったインスタレーションを作る。しかし、テントの中には入れない。だからやや離れた場所から視覚的に身体性を意識させる空間を作る、というお題とも読み取ることができた。
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