オーディオ・ビジュアル機器などを手掛けるブランド、オンキヨーは1993年から点字や音楽情報で目の不自由な人にも、オーディオを自身の手で楽しんでもらえる「ラクラクキット」の提供サービスを実施している。同社は、オーディオやビジュアルを通してすべての人に美しい音を伝えたいという思いから、ラクラクキットのほかに、日本教育科学研究所、毎日新聞社点字毎日と共同で「オンキヨー世界点字作文コンクール」も開催している。
視覚障害者の世界に点字と音の架け橋をしっかり築きたいという願いから、2003年に「オンキヨー点字作文コンクール」を創設。2014年からは、海外部門も設けてオンキヨー世界点字作文コンクールとして毎年実施しているのだ。
国内では、第12回から視覚障害の方を家庭、学校、職場、地域で支えている人を対象に、視覚障害者と接した体験を通しての思い、発見、社会に向けた提言が題材の「サポート部」を設け、一般社会への理解の輪を広げることを目指している。さらに、13回から、点字と音楽との融合を目指して、作詞を募る「作詞賞」を新設した。
入賞作品は、毎日新聞や点字毎日、同活字版紙上、オンキヨーのウェブページ、MBSラジオ放送などを通じて世の中にアピールしていく。加えて、点字と活字を併記した「入選作品集」も制作し、国内では1200の盲学校、点字図書館、公共図書館などに寄贈する。海外向けには、英語版入選作品集を制作し、開催地域だけでなく全世界の視聴障碍者団体(186ヵ国)に贈る。
11月7日には、Gibson Brands Showroom TOKYOで「第14回 オンキヨー世界点字作文コンクール」の表彰式を実施。国内部門で最優秀オーツキ賞を受賞した永井 慶吾さんの作品「バス通学」、作詞賞を受賞した田崎 博基さんの作品「もしも ぼくが ぼくで なかったら」が表彰された。
表彰式では、毎日新聞社点字毎日 編集長の三角 真理氏が登壇。三角氏は「今回は、国内から145作品、海外から131作品もの応募がありました。田崎さんの作品は、悲しいけど湿っぽくない歌詞で、心にしみる切なさとメッセージ性を持ち合わせていると感じました。今回審査と作曲を担当した徳永さんも、まさにぞっこんといった感じで田崎さんの作品を選びました。永井君の作品は、シンプルながらみんなに訴えるちからがある作品だと感じました。また、受賞を小学校を通じて連絡したのですが、教頭先生をはじめ学校全体で喜んでもらえて、とてもうれしかったです」と挨拶した。
続いて、オンキヨー 名誉会長の大朏 直人氏が登壇。大朏氏は「永井さんの作品を読んでいると、情景が目に浮かんできます。会を作って良かったなと思っています。小学生が最優秀オーツキ賞を受賞するのは初ですが、自分の考えをしっかり持っているということに大人たちが驚かされました。田崎さんの作品は、情景が鮮明に浮かぶ美しい表現だなと感じ、とても勇気をもらえました。たくさんの思いが作品を通じて、世界に広まってもらえればと思います」と述べた。
最優秀オーツキ賞を受賞した永井さんは、受賞について「とても驚きましたが、うれしかったです。受賞できたのは、お母さん、お父さん、先生たちのおかげだと思っています。白杖をつかって歩き始めて一番大変だったのは、振りすぎるということです。今後の目標は電車に乗ることです。電車に乗るには、駅までの道を覚えないといけないですし、ホームがたくさんあって難しいですが、がんばりたいと思っています」とコメントした。
作詞賞を受賞した田崎さんは、受賞について「オリンピックでメダルを取ったような気分です。作品は自分で描いた映像を追いかけ、心を入れました。自分で書いていて恥ずかしいと思いましたが、作曲していただけるということでチャンスだと思い切って応募してみました。曲をつけてもらえるように心がけたのですが、まさか本当に入賞するとは思いませんでした。とてもうれしいですし最高です」とコメントした。
また今回、田崎さんの作品「もしも ぼくが ぼくで なかったら」をボーカリストで作編作曲家の徳永 暁人さんが作曲。徳永さんは「今回審査も担当させてもらいましたが、素晴らしい作品が多くてよかったです。中でも田崎さんの作品は、パッとみてこれしかないと思うくらい、歌詞としてもクオリティーが高く、曲を付けざるをえないと感じました。ハイレゾ配信もするようなので、いろいろな人に聞いてほしいです」と挨拶した。会場では、徳永さんが実際に曲を披露し、表彰式を締めくくった。