10月19日に開催された、ドコモの2016年冬春モデル発表会。ここではGalaxy Note7の発売見送りやドコモのドローンなど多数の話題が出たものの、モバイル業界の関心を集めたのは「MONO」です。
注目は、ドコモが初めてオリジナルのスマホを出したこと、そして一括648円という格安スマホも驚きの価格設定にあります。
総務省ガイドラインも認める「廉価端末」とは
いま、総務省のガイドラインによりスマホの「実質0円」販売は禁じられています。これは「月々サポート」により毎月の通信料金から一定額が割り引かれ、24ヶ月利用した際の割引額を合計すると、端末を実質的に0円で買ったことになるという販売モデルでした。
しかしMONOの一括648円は、これとは別の「端末購入サポート」が適用されます。これは12ヶ月間の利用を前提として、最初に648円を支払うだけで良いというメリットがあります。途中解約では違約金が発生するものの、24ヶ月に比べて縛りはゆるく、端末購入時に割賦を組むなどの負担がない点に特徴があります。
総務省のガイドラインでは端末の大幅な値引き販売を禁じていますが、ドコモの吉澤社長は「ガイドラインが定める廉価端末に該当するので問題ない」と回答しています。ガイドラインの廉価端末とは、消費者への小売価格または業者への卸売価格が3万円以下のものと定義されています。
ならば、iPhoneの小売価格を3万円に設定し、通信料金で回収すればいいのでは?と思いつくところですが、「小売/卸売価格が調達費用を下回る場合は除く」という条件が付いています。ドコモによればMONOの調達価格は3万円以下で、この点もクリアしています。
ドコモが格安端末に求める要件が明確に
すでにSIMフリー端末や格安SIMを使いこなしている人なら、MONOが安いとは感じないでしょう。いくら端末価格が安くとも、月々サポートがつかなければ2GBで6500円などの料金を満額払っていく必要があるからです。
しかしドコモのユーザーの中で、格安スマホに不安を抱いていたり、ドコモショップで使い方を教わっていたりする人なら、話は変わってきます。MONOはドコモから離れずに使える格安スマホというわけです。
ドコモが企画し、ZTEが製造したという端末のスペックも興味深いものがあります。ドコモの国内4つのLTEバンドに対応し、防水に対応、バッテリーは3日持ち、本体にはストラップホールやマナーモード用の物理スイッチを搭載。グローバル向けの低価格端末にはない独自機能が目白押しです。
単に格安端末をラインアップするだけなら、ファーウェイやASUSの安価なモデルを調達するほうが早いでしょう。しかしそれらの端末は、ドコモのユーザーが安心して使うには性能や機能がまちまちで、不安が残るというわけです。
MONOのCPUはSnapdragon 617で性能は悪くないものの、メモリは2GB、コストダウンのためおサイフやワンセグ、指紋認証は省かれています。機能が全部入りのハイエンドモデルからはなかなか見えてこない、ドコモが何を採用して何をあきらめたのかという取捨選択を見ていくのも面白いでしょう。
大手キャリアの廉価端末は次の主戦場になるか
大手キャリアによる「実質0円」や「一括0円」の端末販売がなくなり、「大手キャリアは高い」と感じるユーザーが格安スマホに目を向ければ、市場全体で価格競争が起こるはず。これが総務省の見立てといえます。
しかしメイン端末を格安スマホに切り替えるユーザーが続出し始めたことで、大手キャリアは警戒を強めています。今後、長期利用者への優遇や、ポイントサービス、ソフトバンクの「牛丼無料」に象徴されるサービス競争が次々と繰り出されるでしょう。
その中でドコモのMONOは、端末の競争で「次の主戦場はここだ」と指し示す形にもなっています。すでにisaiやQuaといった独自ブランドを持つKDDIや、Y!mobileが絶好調のソフトバンクが乗ってくれば、2017年はガイドラインの線上ぎりぎりでの戦いが激化することになるでしょう。
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