このページの本文へ

IaaS出身のAWSとSaaS出身のセールスフォースがPaaSで交わる

セールスフォースとAWSの協業で生まれる価値は「スピード感」

2016年10月14日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

10月13日、セールスフォース・ドットコムとアマゾン ウェブ サービス サービス(AWS)はパートナーシップの強化を発表した。SaaS出身のセールスフォースとIaaS出身のAWSが、PaaS領域を中心に連携ソリューションを開発し、パートナーエコシステムもや営業・マーケティング分野でも協力を進める。

セールスフォースは柔軟性を、AWSは価値実現の時間短縮を

 発表会の冒頭に登壇したセールスフォース・ドットコムの御代茂樹氏は、2020年のクラウド市場が2360億ドルに拡大し、新規開発アプリの中でクラウドアプリが85%に達するフォレスターの調査データを披露。「コンピューター産業がそのままクラウドの市場になる。変化のスピードを求める市場にクラウドは浸透しつつある」とアピールする。

セールスフォース・ドットコム マーケティング本部 プロダクトマーケティング シニアディレクター 御代茂樹氏

 こうした中、両社はお互いの強みを活かす協業が必要になってきたという。同じパブリッククラウドでも、セールスフォースとAWSの立ち位置は大きく異なる。CRMのSaaSからスタートし、Force.comやHerokuなどのPaaSに進んできたセールスフォースは、顧客の要望にフィットする要件を満たすため、インフラレイヤーでのIaaSの柔軟性が求められるようになってきた。カスタマイズにとどまらない個別最適システムの構築やクラウドネイティブのアプリケーション構築においては、さまざまなニーズに応えられるインフラの選択肢が必要になる。

クラウドのタイプ別の特徴

 一方で、仮想サーバーから上位スタックにサービスを積み上げてきたAWSとしては、顧客価値を実現する時間を短縮するために、パッケージされたSaaSや開発プラットフォームであるPaaSのコンポーネントが必要になってきた。現状、AWSはオンプレミスの仮想サーバーをクラウド上にマイグレーションした案件がまだまだ多く、顧客の求める価値の実現にはどうしても時間がかかってしまうのが難点と言える。

 こうしたクラウドのタイプ別の特徴から考え、インフラの柔軟性を求めるセールスフォースと、生産性の向上を求めるAWSが、おもにPaaSのレイヤーで協業を強めるというのが今回のポイントとなる。

セールスフォースとAWSがPaaSのレイヤーで歩み寄る

 もとよりHerokuはAWS上に構築されており、AIサービスである「Einstein」もAWS上で構築されることが発表されている。こうした経緯を受け、御代氏は「セールスフォースがフロントに立ち、(バックエンドに)データを蓄積し、冗長性を担保できるAWSがある。そしてHerokuが間に立つのが理想の環境になってくる」とアピール。両者の認知度を活かし、付加価値の高いクラウドを顧客に正しく理解してもらうためにも、パートナーシップの強化は必要になったという。

10年選手のクラウドベンダーが直面する市場ニーズの変化

 続いて登壇したセールスフォース・ドットコム アライアンス担当の手島主税氏は、今回の協業の背景については、クラウドに対する市場ニーズの変化があると説明する。セールスフォース側には、「IoTを活用できる全体のアーキテクチャがほしい」、「B2B・B2Cを統合したサービスモデルを構築できるパートナーを紹介してほしい」「PaaSの活用範囲を拡大させる新しいテクノロジーを提案してほしい」という要望がもたらされているという。

セールスフォース・ドットコム 常務執行役員 アライアンス本部 本部長の手島主税氏(左)とAWSJ パートナーアライアンス本部 本部長の今野芳弘氏(右)

 同じニーズの変化はAWS側にも顕著に表われている。AWSJ パートナーアライアンス本部の今野芳弘氏は、「グローバルな先進的な事例を把握し、より広範囲にクラウドを活用したい」「パートナーからも自社にあった提案してほしい」「スピードを挙げて、クラウドをビジネス拡大に活用したい」といった要望が顧客から求められていると説明する。従来型のワークロードをクラウドの仮想マシンで動かすというだけではなく、クラウドの特徴を活かしたアプリケーションに進みたいと考えるユーザーにおいては、ビジネスアプリケーションや開発プラットフォームの拡充が重要になる。

 こうした顧客のニーズに対応し、クラウドの多面的な活用とビジネススピードに見合う迅速性を実現するには、セールスフォースとAWSがタッグを組む必要があるというのが、今回の協業の背景にある。これを踏まえ、両社は「特徴の異なるクラウドをつなぐアーキテクト」「新しいクラウドエコシステムの拡大」「IaaSとSaaSをつなぐテクノロジーの推進」などを提案していくという。

セールスフォース・ドットコムとAWSからの提案

今回の発表はあくまで序章。そしてマイクロソフトとの関係は?

 具体的には、まず両社のエンジニアによるクラウドデザインセンター(CDC)を設立。AWSとセールスフォース双方からエンジニアをアサインし、両社を連携したサービスの提供を進めるという。

両社のエンジニアによるクラウドデザインセンターを設立

 また、パートナーエコシステムに関しても協業を進める。AWSのAPNコンサルティングパートナー・APNテクノロジーパートナー、セールスフォースのコンサルティングパートナー・ISV/OEMパートナー、定着化支援パートナー、SIerなど、両社のパートナーで新しい接点を創出し、IaaSからPaaS、SaaSまでを包括的に提案できるエコシステムを構築する。手島氏は、AWSとセールスフォースを連携した次世代の酪農クラウドを3ヶ月で実現したデザミスの事例を紹介し、「AWSとセールスフォースの連携で生み出せるのはスピード」とアピールした。

 さらにAWSをプラットフォームとしているHerokuを中心にした営業協力も推進する。AWS上に溜めたデータをHeroku Enterpriseで活用できる環境を提供するのみにとどまらず、グローバルと歩調あわせ、IoTやビッグデータなどを活用したソリューションも開発していく。今後は共同マーケティングも実施し、AWS SummitやSalesforce World Tour Tokyoなどの大型イベントはもちろん、共同セミナーも行なっていく予定となっている。手島氏は、「今回の発表はあくまで序章」と語っており、今後はより大きな協業につながっていくと見込まれる。

Herokuを中心に営業協力も図る

 一方で、セールスフォースは2014年にマイクロソフトとの提携も発表しており、WindowsやOffice、CRMなどの分野で連携を進めている。クラウドベンダーの熾烈な争いの中で、セールスフォースがどのような立ち位置を築いていくのか、今後が注目される。

カテゴリートップへ

ASCII.jp特設サイト

クラウド連載/すっきりわかった仮想化技術

ピックアップ