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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第371回

Kabylakeの本命は来年末投入の14+プロセス版 インテル CPUロードマップ

2016年08月29日 11時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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2015年~2017年のインテルCPUのロードマップ

Kabylakeは2017年1月末にリリースか?

 さて、その次がKabylakeである。現時点ではCPUコアそのものには一切手が入っていないのはほぼ間違いない。違いがあるのは冒頭に書いたとおりGPU側の、それもビデオデコーダーとおそらくはエンコーダー周りだけ、というのが現実的なところであって、あとは動作周波数のアップである。

 その動作周波数であるが、意外にがんばっており、2bin(200MHz)程度の向上が見られている。ただし動作周波数/消費電力比の関係の改善は今回は無理だったようで、Kabylake世代でハイエンドのCore i7-7700Kの場合、TDPが95Wと若干増えているのは致し方ないところであろう。

 まだこのKabylakeの投入時期は明確ではないのだが、一応準備が整えば2017年の早い時期(1月末?)にはリリースしたい意向のようで、最初はCore i7とCore i5、これに続いてCore i3とPentiumグレードを1~2ヵ月後(2月末?)には投入することにしたようだ。

 Celeronグレードの投入はもう少し後になりそうだ。というのは、Kabylakeの世代では、DDR3Lのサポートが削られることになるためである。

 物理的にコントローラーが削られるのではなく、単に未サポートというだけらしいのだが、バリュー向けには未だに若干DDR3を使う構成などが残っており、これを引き続きサポートするためにはCeleronグレードはSkylakeのままにしておいたほうが都合が良い、という判断なのだろうか?

 併売してもいいような気はするのだが、流通在庫のDDR3がある程度払底する2017年末頃までCeleronグレードは後送りになると思われる。

 Kabylake世代ではもう1つ、PCHも変更になると思われる。一応機能的には現在のIntel 100シリーズでも利用可能なはずではあるが、かつてHaswell RefreshやBroadwellがIntel 9シリーズを必須としたように、SKUによっては新しいPCHを必須とする形でリリースされるらしい。

 この新しいPCHは現在はKabylake PCHと呼ばれており、実際にはIntel 200シリーズとして登場することになると思われる。もっとも機能的にこのIntel 200シリーズがどこまで違うのかというと、PCI Expressのレーン数やSATAポート数、USBポート数などは現行のIntel 100シリーズと差が見られず、またUSB 3.1のコントローラの搭載も今回は見送りらしい。

 したがって、おそらくはIntel Optane SSDのサポート程度に留まるのではないかと思われる。あとはオーバークロッキング周りに若干の変更があるかもしれない。

 さて、そのKabylakeに「おそらくは反映されない」、もしくは「最初のKabylakeには反映されないが、来年後半にはひょっとすると」という可能性があるのが、新しい14nmプロセスである。

 下の画像は今年のIDFにおける“Building Winning Products with Intel Advanced Technologies and Custom Foundry Platforms”というセッションの資料からの抜粋である。

2005年に投入された65nm世代のP1264以降は、High Speed Logic向け(偶数)とSoC向け(奇数)がラインナップされている。2011年には22nmのP1270、2012年には22nm SoC向けのP1271が提供されたのだが、この22nm世代はさらにもう1つP1271.9と呼ばれる、FPGA向けのプロセスも追加されている

こちらはもう少し先の話だが、10nm世代では10/10+/10++と3つの世代があることがすでに予告されている。つまり、2022年あたりまで10nmプロセスは利用されることになりそうだ

 このセッションはIntel Custom Foundryという、インテルが提供するファウンダリサービスの詳細を説明するものだが、このセッションで初めて14nm世代に新しく14+と呼ばれる新しいプロセスが追加されることが明らかになった。

 そもそも14nm世代は4つもプロセスがある、というのがこの図からも明らかであるが、最初に投入された2013年のものは製品の製造に事実上失敗しており、次の2014年のものがBroadwell-Y/U向けに利用されたプロセスで、これがその後Broadwell-HやSkylakeなどに幅広く利用されることになった。

 ただこれはもともと省電力向けに設計されたもので、デスクトップやXeon向けにはあまり適さないものだった。これをカバーすべく現在開発しているのが14+で、強いてナンバリングすればP1273に相当することになる(あるいはP1272.9かもしれないが)。

 前述のスライドにもあるように、12%パフォーマンスが向上したとしており、条件が一緒ならその分動作周波数を上げられることになる。Skylakeではベースクロックが最大4GHzだったのが、4.5GHzあたりまで引っ張れる計算だ。

 ただし、これを利用するためには物理設計のやり直しが必要になる。だいぶ前の話になるが、連載260回で、22nm世代でハイスピード向けとローパワー向けはそもそもFinFETの寸法が異なるという話を解説した。

 これは14nm世代でも同じであり、おそらく14+と呼ばれるプロセスは、従来の14nm世代とFinFETの寸法が異なると思われる。ということは、配線のやり直しが最低でも必要となり、FinFETの世代では望む特性を得るためにFinFETの数を増減させる形になるため、回路によってはFinFETの数そのものも変わってくるだろう。

 Kabylake世代でもマスクそのものは作り直しであるが、CPUコアやメモリーコントローラーなどはほとんど変更がなく、あくまでGPUあるいはビデオアクセラレーター周りのみに変更があるという話である。

 だからこそ今年中にOEMにモバイル向けの出荷が可能なわけだが、CPUコアからキャッシュまで全部設計し直しという話なら、早くて来年の第2四半期くらいまでモノが出ないことになる。

 というわけで、少なくとも今年出荷のモバイル向けや、来年初めに出荷されるデスクトップ向けは、プロセスそのものは従来の14nmのままである可能性が非常に高い。ただしその先は? というとやや怪しくなる。これは次の話につながる。

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