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地元愛あふれたヨコスカネイビーパーカーはどうやって実現したのか?

真紅の女子大生がYOKOS会議で訴える「地方創生=自分創生」

2016年07月04日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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自らを「開国」することが「自分創生」

 八村さんにとっての「地方創生」とは「自分創生」だという。「横須賀に行くと、自分で楽しそうなことをみんなワクワクしてやっている。それがほかの地域にはないことだと私は思っている」と八村さんは語る。そして、それを後押しするのが、吉田雄人市長や(ヨコスカテラス)小坂浩人さんなどさまざまな「ファンキーな大人たち」(八村氏)。世代を超えた縦のつながり、他の地域との横のつながり、これらを掛け合わせた斜めのつながりが生まれたことで、若者を盛り上げる基盤はますます加速しつつあるという。

ファンキーな大人たちが女子高生たちをサポート

 「自分たちを活性化できたことで、横須賀というまちも活性化できた」という八村さん。その一方で、「まちを出て行ってしまう人たちが、大好きなまちのためになにかしたいというピュアな思いだけで、やっていけるか」という課題もある。そのため、きちんと自身の足下を見つめ、人、モノ、金というどろ臭い部分を直視していく必要があるというのが八村さんの考え。「『創生』という字は『創る』に、『生きる』と書く。新しいモノを生み出すのは重要だけど、今までのものを『生かす』ことも重要」と八村さんは指摘する。

 150年前、ペリーが来航した浦賀を抱える横須賀は「開国」のまちでもある。「われわれが横須賀を謳うのは、なにか使命感があるからではないでしょうか? 『開国のまち』から、自らを開国する。こうした人たちが巣立つまち、そして戻ってくるまちにしなければと思っています。そして今日は自分を開国できた瞬間だと思っている」と八村さんは語り、セッションをこうまとめる。

開国のまちから、自らを「開国」する

 「地域創生は自分創生なんだという言葉をしっかり胸に刻んでいる。今は大学の近くに引っ越しましたが、横須賀の八村美璃として、日本の八村美璃として生きていく。みんな、自分を創生してワクワクしていることをやり遂げた上で、日本を、そして世界を活性化できればいいんじゃないかと思う」(八村さん)

若者が考える「ヨコスカバレー」を盛り上げるための「本音」

 引き続いて行なわれたパネルでは、ヨコスカバレーの土屋さんが登壇した2人にヨコスカバレーへの若者の取り込みについて聞いた。

パネルディスカッションにのぞむ竹岡さん、八村さん

 「よそ者」「若者」「馬鹿者」を巻き込み、オープンな環境で横須賀を盛り上げるというコンセプトを持つヨコスカバレー構想。この中で重要な「人」に関して、竹岡さんは「八村さんのヨコスカネイビーパーカーもそうですが、周りの大人から背中を押されて、実現できた。小さなことでも若者がやりたいと思っていることを、応援してくれる大人が重要。だから、よそ者にどんどん入ってもらって、違うカルチャーを持ち込んでもらいたい」と語る。

 八村さんは竹岡さんの意見に賛同する一方で、横須賀にはよそ者を排除するムラ社会が残っていると指摘する。「地元大好きな人が多い一方、新しいものが入ってくるのを拒絶してしまう場面を見受けることも多い。地元を盛り上げようという団体はいくつもあるけど、客観的に見ると、同じ目的でもバラバラにやっているなということはある」と八村さんは、チームとしての連携が必要だと語る。

 次に必要な「モノ」について、竹岡さんは「居場所」だと語る。「われわれもファミレスやカフェでミーティングしているけど、本当は若者が集まれるような拠点がほしい」というのが竹岡さんの意見だ。一方、八村さんは「広い横須賀の情報をまとめて見られる地元ポータル」だと語る。いろんなコミュニティがFacebookページを立ち上げているものの、地元情報が分散しているのが大きな課題だという。

 地元を盛り上げるためになにをすべきか。これに対して竹岡さんは「前例のないことをやる勇気」、八村さんは「時代を読む力」を挙げる。八村さんは「以前、私がスカジャンを着てても、誰も反応してくれなかった(笑)。でも去年、若者の間でスカジャンが流行った。あの流行をいち早く察知していれば、地元としてなにかやれることはあったんじゃないかと思う」と語る。そして、そのためには八村さんのように地元を離れる若者に対しても「アンテナ感度を上げるため、外に修行に出ている」という寛容な目で見て欲しいというのが八村さんの意見だ。

 その後、土屋さんの求めに応じて吉田雄人市長が2人の若者に対して質問。「若者がほしい大人の支援を具体的に教えて欲しい」と尋ねると、竹岡さんは「若者はコミュニティ内で活動することが多く、外の人たちとの接点が少ない。だから、学生に対して、社会人を紹介するシステムが欲しい」と答える。

 より本音の意見を市長から求められた八村さんは、お金だけじゃない先行投資が欲しいと応じる。八村さんは、「ヨコスカネイビーパーカーも実は他に商標登録されていたという山を乗り越えている。こうしたとき、われわれのような学生は社会的な信用がゼロなので、やれることが限られている。そういったときに盾になってくれるシステムがほしい」とのことで、若者・大人関係なく一体感を持って地元の盛り上げに関与できるシステム作りに先行投資が必要になると意見を述べた。

 自ら考え、自ら動く2人が持つ圧倒的な熱量が会場を覆いつくしたピッチ、大人の建前を切り裂く若者らしい本音が随所にのぞくパネル。世代をまたいで継続する地方創生の長い道のりの中で、いち早く若いパワーを取り込んだ横須賀のワクワク感が感じられた。そして、こうした若者たちの声をきちんと受け止められる基盤をきちんと構築できるか。ヨコスカバレーの次の展開に期待が集まる。

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