先日、ノキアブランドのスマホ市場への参入が発表されました。どんな製品が出てくるか、いまから楽しみなのですが、個人的にはノキアが過去に出したくても出せなかった、幻に終わった端末の復活を期待したいところ。ということで、今回はそんなノキアの試作モデル「Nokia E80」をご紹介します。
Symbian搭載のビジネススマホとして開発されていた
ノキアフリークの方でも、Nokia E80の名前を知っている人はほとんどいないかもしれません。スライド式のQWERTYキーボードを備え、質実剛健なボディーデザインでビジネス市場を狙ったスマホ、それがNokia E80です。残念ながらこのE80は、製品化されることがありませんでした。しかし今回、とあるルートを通してその試作モデルに触れることができたのです。
Nokia E80は「Nokia E60」、「Nokia E61」、「Nokia E70」、「Nokia E90」という、ノキアのビジネス向けスマホ「E Series」の初代ラインアップと同じ、「E00番」の型番を持つ製品です。外部コネクタは旧ノキアの独自コネクタにミニUSB。ハードウェアキー回りを見ればわかるようにOSはSymbian。ディスプレーをたたむと、コンパクトな携帯電話サイズになるというギミックを持った製品でした。
QWERTYキーボードを備えたノキアの横スライド式端末は、2008年発売の「Nokia N97」が有名ですが、このE80はそれよりも前に開発された模様。ディスプレー部分をスライドさせると、そのまませりあがるように立ち上がり、机の上に置くとちょうどいい角度で画面を見ることができます。
QWERTYキーボード搭載端末としては縦にサイズが長く、指先でも楽にタッチタイプできるE90がありましたが、このE80はE90よりも上下がコンパクトで、必要な時は片手でサクッとスライドさせてキーボードを出す、なんて使い方が想定されていたのでしょう。
電池カバーは金属製。素材の形状や質感は「Nokia E72」の世代とは異なることから、それ以前の時代に開発されたものでしょう。N97とのギミックの関連性からすると、開発は2007年前後のようです。
ディスプレーを持ち上げるヒンジの部分にはさりげなく「NOKIA」のロゴが入っています。もしも製品化され、これを使っていたら「あ、ノキアの最新スマホだ!」と周りの人から注目されたかも。
使い勝手のいいキーボードとソニー製バッテリー
E80の最大のハイライトは、もちろんキーボード。数字キーは独立していないものの、コンパクトにすべてのキーがまとまっています。また、E90のようにコンタクトやメッセージなどよく使うアプリキーが複数配置されています。これを使ってメールやメッセージをサクサクと入力してみたくなりますね。なお、残念ながら電源が入らず、動作確認はできませんでした。
バッテリーを外すと、端子がたくさんみえますが、これは試作品だからでしょう。ラベルにも「PROTO 83」の文字が見えます。また、SIMスロットのあるあたりはうっすらとしたくぼみが見えるだけで、スロットは実装されていないようです。
なお、電池はノキアのスマホで一般的に使われていたノキア純正の「BP-4L」。このBP-4LはソニーのOEMによるリチウムイオン電池だったことが知られていますが、E80に装着されていたのは、なんとソニーのラベルがそのまま貼られていました。試作モデルと言うことで、電池も社内にあった適当なものが入れられていたのかもしれませんが、ソニーロゴのBP-4Lというのはノキアマニア、ソニーファンにとっても貴重な存在かも。
キーボード需要はなくならない、コンパクトな端末も欲しい!
E80が市場に出てこなかったのは、ビジネス向けキーボード端末としてE90のできがよかったことや、メッセンジャー端末としては「E Series」ではなく「N Series」のN97で、というマーケティング上の理由があったのかもしれません。あるいは非タッチパネルのE80では市場で受け入れられず、2010年登場の「Nokia E7」までこのスタイルの製品は開発が止められたのかも。
いまやほとんどのスマホがQWERTYキーボードを搭載しなくなりました。一方、最後の望みともいえる「BlackBerry Priv」は、縦スライド型のためキーボードを引き出すと縦長になってしまうという欠点があります。QWERTYキーボード端末の需要は以前ほどないにせよ、外付けキーボードはいまでも新製品が登場するなど、キーボードを必要としているユーザーはまだ多いはず。ノキアブランドのスマホが復活するときには、E80のようなコンパクトで横スライド式のQWERTYキーボードを内蔵した端末をぜひ出してほしいものです。

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