今回取り上げるのは、Osborne Computer Corporationである。企業としてはそう長く存続したわけではなかった(1980~1985年)。
そのうえ、製品は大きく言えば1つだけなのだが、同社の散り方はマーケティングのあり方に非常に大きなインパクトを与えたという観点で、欠かすことのできないメーカーだ。
出版社を売却した資金で
コンピューターメーカーを創設
Adam Osborne氏(2003年没)は1972年、Osborne & Associatesというコンピューター向け書籍専門の出版社を作り、自身がそこでさまざまなコンピューター向けのマニュアル本を出版する。
彼はこのビジネスをうまく軌道に乗せ、最終的に1979年に大手出版社であったMcGraw-Hill Publishing Company(現S&P Global)に会社を売却することに成功する。
ただ彼はコンピューター関係のライターというだけではなく、自身もシリコンバレーで形成されていたHomebrew Computer Club(自作コンピューターを作るホビイストのクラブ)に頻繁に顔を出していた。
ちなみにこのクラブの常連メンバーにはSteve Wozniak、CromemcoのHarry GarlandとRoger Melen、IMSAIのThomas "Todd" Fischer、Morrow DesignsのGeorge Morrow、BYTE shopのPaul Terrell、Processor TechnologyのBob Marshといった面々が名前を連ねている。
いずれも創成期のマイコン企業、もしくはその関連企業の中核を成したメンバーだ。どの企業も当時は従業員を片手で数えられるか、まだ創業してない段階での話なので、未来のコンピューター企業の巣とでも言うべきものだ。
そしてMcGraw-Hill Publishing Companyに自社を売却してそれなりに手元に資金を蓄えたOsborne氏も、自身でマイコンを作ることを決意する。
Osborne氏が望んでいたのは、低価格なポータブルコンピューターである。ここで言う「ポータブル」は「アメリカ人男性なら持ち運びできる」の意味なので、昨今のノートPCを想像してはいけない。
参考にしたのは、XeroxのNoteTakerである。NoteTakerはあくまでも研究目的で製造されたもので、総生産台数も10台ほどでしかない。これをもっと現実的な価格と構成で実現しようというわけだ。
画像の出典は、“Daves Old Computers”
この目的のために、Osborne氏はOsborne Computer Corporationを1980年に設立、Lee Felsenstein氏を雇って製造に取り組む。
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事
-
第882回
PC
IBMが0.7nmチップの製造に成功! 変態的CFET構造NanoStackの凄みと、あまりに高すぎる製造コストの壁 -
第881回
PC
同一周波数で消費電力18%削減! 進化した「Intel 18A-P」はどこが変わったのか? -
第880回
PC
次世代NVLinkの布石か? TSMCの光電融合技術「COUPE」がもたらすAIサーバーの光接続 -
第879回
PC
なぜAIには「光」が必要なのか? NVIDIAが解説するスケールアップネットワークの低遅延・省電力化戦略 -
第878回
PC
もはや銅配線は限界? 3200Gイーサネット実現に立ちはだかる200GT/秒の壁 -
第877回
PC
「不良品ゼロ」と「水冷NG」の狭間で。ルネサスが明かした車載チップレットSoCのリアル -
第876回
PC
このままではメモリーが燃える! HBM4/5世代に向けた電力供給の限界と、Samsungが示すパッケージ協調設計の解 -
第875回
PC
1000A超のAIプロセッサーをどう動かすか? Googleが実践する垂直給電(VPD)の最前線 -
第874回
PC
AIの未来は「電力」で決まる? 巨大GPUを支える裏面給電とパッケージ革命 -
第873回
PC
「銅配線はまだ重要か? 答えはYesだ」 NVIDIA CEOジェンスンが語った2028年ロードマップとNVLink 8の衝撃 -
第872回
PC
NVIDIAのRubin UltraとKyber Rackの深層 プロトタイプから露見した設計刷新とNVLinkの物理的限界 - この連載の一覧へ











