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月刊 格安SIM王 第16回

通話よりネットが重要! 怖いのは月末のパケット切れ

災害時でも大丈夫? 格安SIMは被災地でも役に立つのか!?

2016年05月27日 11時00分更新

文● 正田拓也 編集●ASCII.jp

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格安SIMは災害時でも頼れるの?

現在は“ネットが順調に使えるか?”こそ重要

 携帯電話といえば、災害時には欠かせないもの。音声通話だけの時代は、輻輳を防止するために災害時はなるべく使わないように言われてきたし、事実、災害発生直後は掛けたくても掛からない、つながらない……が常識だった。

 ところが、SNSが発達し、さらにスマートフォンの時代になると、日常のみならず緊急時も、集中すると輻輳しやすい音声通話ではなく、メールやSNS投稿で済ませるようになってきた。

 特にSNSならば、一度投稿すれば1対1の連絡をしなくても安否が伝えられる。また、誰でも閲覧できるタイプの投稿、たとえばTwitterや一般公開設定のFacebookに書き込んでおけば、誰かがリツイートやシェアすることで、自分の安否が広まりやすい。

 そしてTwitterやFacebookのサーバーは、日本の自然災害とは無縁の場所にあるため、被災地から情報を一度書き込んでしまえば、熊本地震のように複数回にわたって大きな災害が起こったとしても、情報が消える心配はない。

 となれば、まずはきちんとインターネットにつながってさえいれば、格安SIMであろうと災害時も問題がないわけだ。

 そして格安SIMは、単体で成立しているサービスではない。3大キャリアと格安SIM事業者の差が出るとすれば、ドコモやauの無線区間とバックボーンを使ってインターネットに出てからの話だ。

1対1の通話よりも、多数が同時に閲覧できるSNSへの書き込みのほうが、安否確認に有用かもしれない

じつは、基地局を守るのは3大キャリア
そして緊急地震速報が鳴るか否かは携帯電話次第

 逆に言えば、無線区間はドコモやauと同条件と思ってよい。たとえば、携帯電話の基地局が被災して壊れた際に、修理や交換をするのは格安SIM事業者ではなくドコモやauだ。これは別に格安SIMのためではなく、自分たちのユーザーの利便性を守るためでもあるからだ。

 であれば、ドコモやauの回線からインターネットに出て行く部分さえしっかり守られていれば、格安SIMだからといって災害時に不利になることはない。常日頃から回線の安定に対して誠実に向き合っている格安SIM事業者なら、災害時でもまず大丈夫と言ってよいだろう。

 ちなみに緊急地震速報だが、ドコモの場合、緊急地震速報に対応した携帯電話にドコモネットワークを使っている格安SIMを挿していれば、ドコモとの直接契約の有無にかかわらず、緊急地震速報の警告音は問題なく鳴り出すことが多い。

 auの電波を使っている格安SIMでもそれは同様で、緊急時にauの基地局が出す緊急信号を受信して警告音が鳴り出す仕組みに携帯電話側が対応していれば、地震が迫ったとき、あのけたたましい警告音が鳴リ出すのだ。少し難しい話になるが、mineoではそのあたりも解説したページがあるので詳しく知りたい人は読んでおくとよいだろう。

緊急地震速報は、携帯電話側の対応次第。ドコモ、auが販売する機種であれば概ね問題ない。なお、SIMフリー機種は緊急地震速報の機能が搭載されていない/速報が届いても解読できない可能性がある

3大キャリアとの決定的な差は?

 では、格安SIMでも緊急地震速報に対応した携帯電話を選んでおけば、災害時も3大キャリアと遜色ないかと言えばそうでもない。問題は災害伝言板。

 たとえばドコモが用意した伝言板は格安SIMから利用できない。しかし、これはNTT東日本、NTT西日本が用意する「災害用ブロードバンド伝言板(web171)」を使うことで災害伝言板の問題はクリアできそうだ。

SNSでつながっていない人たち向けに、NTT東日本/西日本の「災害用ブロードバンド伝言板」にも安否確認を書き込んでおこう

 しかし、よくよく考えてみると、何かあった場合に災害用伝言板を使っている人がどれだけいるのだろうか。被災で軽いパニック状態のなか、普段使わないシステムをまともに使いこなせるかと言われると……。祖父母など、デジタルに疎い人々であればなおさらだ。

 安否確認を真っ先にしたい身近な人ならSNSでつながっているはずで、スマホから「無事だよ」と書き込みしただけで親しい人への告知は完了、場合によっては“拡散”してくれる人もいるだろう。実際、熊本地震に遭遇したITライター氏の経験談もそれを実証している。

熊本地震で実家が被災した九州在住のライター氏曰く、「安否の確認にもっとも役に立ったのはLINEグループ」。1度の投稿で多数に安否を伝えられる手段として重宝したようだ

 現実的には、身近な人がたくさん見てくれているSNSへの書き込みが、災害時の安否確認としては有効となる。つまり、音声通話よりも安定したデータ通信ができること。これが災害時にも有効な格安SIMの条件と言えるだろう。

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