動物動画が多いのは見た人が意味を付け足しやすいから
動画は静止した画像とは異なり時間的な継起性を持っているから、写真よりも撮影者の意図や映像の意味がより確定的であり、従って写真ほど多様な解釈を派生させない。
そこにコミュニケーションが発生するとすれば、作家の着想の奇抜さや動画そのものの品質にまつわる評価に過ぎず、いくら動画が身近になったとは言え、やはり写真の投稿のほうが人気を博しているのは、気軽さ/手軽さ以外にもそうした理由があるのかもしれない。
以上のような仮説に立脚すると、動画の多くが動物ネタであることにもわりと納得がいくような気がする。あまりにも単純な理由すぎて述べるのも憚れるくらいだが、要するに動物はしゃべる言葉がわからないからである。
動物動画はそこに記録された鳴き声や仕草や挙動に対して、彼らの真意はわからないものの、鑑賞者それぞれが意味の確定に向けて好き勝手に言葉を繰り出すことができる。動物動画は動画の中でも極めて写真的な性質を持つ稀有なジャンルと言えるだろう。
インターネットを媒介にしたデジタルカルチャーの根幹はやはり言葉であり、重要なのは言葉による第三者の参与性である。写真と動画の相違は撮影の気軽さ/手軽さ、データ容量にもとづく表示速度だけでなく、第三者による「編集性」の余地にもあるということを忘れてはならない。
著者紹介――高橋 幸治(たかはし こうじ)

編集者。日本大学芸術学部文芸学科卒業後、1992年、電通入社。CMプランナー/コピーライターとして活動したのち、1995年、アスキー入社。2001年から2007年まで「MacPower」編集長。2008年、独立。以降、「編集=情報デザイン」をコンセプトに編集長/クリエイティブディレクター/メディアプロデューサーとして企業のメディア戦略などを数多く手がける。「エディターシップの可能性」を探求するミーティングメディア「Editors’ Lounge」主宰。本業のかたわら日本大学芸術学部文芸学科、横浜美術大学美術学部にて非常勤講師もつとめる。

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