GDC 2016レポート
クオリティーが異常、GDCの最新デモに見るVRの熱狂と成功の道筋
実在しない地上540メートルで足が震えた
今回のGDCで、初めて体験したVRデモも多数あった。そのうち、強く印象に残ったものを3つほど紹介したい。
ひとつ目が、昨年10月に公開された映画「The Walk」のVRデモのVive版だ。
この映画は、1974年にニューヨークのワールドトレードセンターのビルとビルの間を綱渡りで渡った人を扱った内容で、プロモーションとしてPlayStation VR用のデモが作成され評判を呼んでいた。そのVive対応版で、Viveのより正確な位置検出の特性を使ってスリリングな体験ができるようになっていた。
床には、1本だけ綱がテープで固定されている。それがVR空間に入るとワールドトレードセンターに1本だけ渡されたワイヤーが表示されているという状態になる。高さ540メートルで、眼下にはニューヨークの街並みが見える。耳元では、風の音がうなっている。
驚いたことに、デモを始めると足が震えた。そして、ワイヤーの上をうまく歩けないのだ。
このデモには、落下するといった要素は入っておらず、適当に歩いても絶対に安全であることは予想がついていた。それでも、身体がVRで見えている高さに反応してしまったのだ。恐怖感を感じるには十分すぎる迫力があるのだ。
人間の脳は、見えている影の濃さで、自分のいる場所の高さや、ほかのモノとの距離感を判断している。それにより、自分が安全な場所にいるかどうかを自動的に把握している。このデモによって脳は、VR映像の影などの情報から高さを見積もり、無意識に危険性を感じ取り、理性的には安全とわかっていても、それでも危険と判断させていると思われる。
3分ほどで終わる短いデモなので、もっと長時間この映像を見続けると、どのように感じ方が変わるのかといったことまでは確認することができなかったのだが、VRが持つ強力な実在感をあらためて確認させられることになった。
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