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「ふるさとテレワーク」は地方を救うか!? 第5回

会議やチームワークの意識も激変

生産性、急上昇!これぞ景観美の南紀白浜テレワーク

2016年03月25日 06時00分更新

文● 川島弘之/TECH.ASCII.jp

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社会貢献が根付いた暮らしに

 残業や通勤時間が減った代わりに生まれたのが、こうした自由時間だ。1人あたり月間64時間にも上ったとのことで、主に家族との時間、自己啓発、地域交流、社会貢献に活用された。

 「地域イベントに積極的に参加したり、宿泊施設で日曜日にアイロンがけを手伝う人もいたり。そうやって地域に認知されてくると、生きがいを感じて、それが仕事のやりがいにつながる。そんな好循環が生まれているようだった」(吉野氏)

 それは、日常に社会貢献が根付くような感覚だったという。

 実証実験では、観光・防災・子育て・ボランティアのアプリも開発した。例えば、子供の誕生日を登録すると予防接種などをプッシュ通知したり、災害時に近隣の避難所やルートを案内したりするものだ。これらはどの地域でも共通課題なので、横展開も視野に検証している。

防災アプリの概要

 移住者の視点でいえば「コミュニティ」がやはり重要だ。「移住で心配だったのは、自分は会社、子供は学校があるのに対して、専業主婦なのでコミュニティの接点がなかった妻のこと。家族のケアは移住のポイントだと思う。良かったのは、仕事が早く終わるので夜のコミュニケーションが増え、気持ちの変化をリアルタイムに感じられたこと。今では妻もうまくやっているようだが、現状では地域にコミュニティが点在していてバラバラなので、地方創生としては今後、多地域のコミュニティをつなげることも重要になるかもしれない」と吉野氏。子育てアプリには、ママ向けのコミュニティ機能も実装する予定という。

 アプリは現状ではまだ役場と移住者に限定しているが、春を目処に、地元住民や観光客も自由に使えるように正式公開する。和歌山県としては「土地勘のない観光客への案内と津波対策の意味合いが大きい。情報提供手段が色々とある中で、有力な選択肢の1つにしたい」とのこと。その後はさらに、アプリの仕様をテンプレート化し、横展開できるよう他自治体にも公開する予定という。

 このほか、白浜町の児童生徒を対象に、ゲーム感覚でプログラミングが学べる講座(Hour of Code)も実施した。累計150名以上が参加し、保護者からは「(こんな取り組みを)待っていました!」という声も。将来的には学校の課外授業として定例化できないか、教育委員会も交えて検討中という。

Hour of Codeの様子(出典:Salesforce Villege)

 こうした社会貢献・地域交流がスタッフ個人でも積極的に行われた。Salesforce Villageでテレワークをしていた女性は「今朝は浜辺でヨガをしてから出勤した」という。もちろん「ペーパードライバーだったので移住当初は慣れなかった」という意見もあるが、「朝のモチベーションがとにかく高い」と吉野氏。暮らしは豊かになっているようだ。

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