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松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」 第102回

米国から戻ると、あらためて日本の電子マネーの便利さがわかった

2016年02月10日 10時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII.jp

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お得と利便性と財布の厚み

 それにしても日本の鉄道系電子マネーは非常に便利ですね。筆者は東京メトロ沿線に住んでいて、とりわけ半蔵門線を使っていたので、ANAのマイレージカードと東京メトロのPASMOが一緒になったクレジットカードを持っていました。

 サンフランシスコの高速鉄道BARTやシリコンバレーを南北に縦貫するCalTrain、ベイエリア地域のバスなどで利用できるCLIPPERというICカードがあります。これの不便なところは、いちいちBARTの駅の券売機でチャージしなければならない上、交通手段以外にあまり使い道がない点です。

 それに比べてANAとメトロのカードは、クレジットカードとPASMOとマイレージカードが1枚で済み、残金が少ない状態で自動改札機に近づければオートでチャージされる設定も可能だったため、急いでいても券売機に並ぶ必要がなくなります。そして、PASMOはコンビニや自販機、商業施設などでの買い物にも対応してくれます。

 なにより、今まで3枚だったカードが1枚にまとまるだけでも、財布の厚み的に相当なメリットがあると思いました。こうした地域の交通の利便性を考えたカードはベイエリアではあまり見かけません。

オープンとニーズ

 企業間の提携によって作り出すのではなく、例えばiPhoneやAndroidスマートフォンのNFCにカードの機能を追加していく。サービスというよりDIYの香りがする解決策の方が、米国では早そうに思います。

 おサイフケータイは日本で生まれたもので、Apple Payで騒いでいるより遙か昔の出来事でした。ただApple Payの場合、クレジットカードこそカード発行銀行との通信が必要になりますが、それ以外のポイントカードやストアクレジットは、アプリさえ開発すれば追加できるオープンさがあります。

 たとえばApple Payでクレジットカード決済をする際、家具屋さんのポイントカードアプリを入れていれば、一回のタッチでカード決済とポイント蓄積を済ませられるわけです。このあたりは、流通ごとのポイントカードや電子マネーが増えても、スマホ1台で済ませられるという点で、より良い世界になりそうな“予感”はします。予感だけですけれども。

 ここで前述の通り、「消費者の利便性」を中心にサービスが作られていくことの重要性も感じる次第です。お金や支払いは不安感もあり、より保守的になりがちです。日本におけるクレジットカードへの意識もよい例かも知れません。

 そうしたお国柄で電子マネーが当たり前のように受け入れられている様子を見ると、そうした保守的な気持ちを打ち破る便利さがあってこそです。

 電子マネーのシステムを核とした地域振興のようなプランを、国ではなく都市ごとに導入していく、そんな産業輸出は可能性があると思いますし、我々が思う以上に、海外の人からははるかに「クールなジャパン」だと思ってもらえるでしょう。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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