最盛期を過ぎると浮き彫りになるメディアの本当の姿
ここ1~2年ほど、「マスメディアは喧伝されるほど影響力を失ってはいないし(今後もビジネスとして成立するかどうかは別問題)、ソーシャルメディアは期待されるほど影響力を持ってはいない」と、ことあるごとに言っているのだが、NHKが今年7月に公表した「日本人とテレビ 2015」という調査結果を見ると、「テレビ離れ」が着実に進行していることがよくわかる。
見出しを散見するだけでも「視聴時間は、1985年以降初めて“短時間化”へ」「幅広い年層で“ほとんど、まったく見ない”人が増加」など、暗澹たるタイトルが目白押しだ。
筆者も大学でよく学生と話しをするのだが、やはり「一人暮らしをきっかけにテレビを見るのをやめた」(つまり購入しなかった)という子が少なくない。そして「なければないでまったく問題ない」と異口同音に口を揃える。
他方で、「最近またテレビを観るようになった」という友人知人も増えており、テレビの復権などと呑気なことは言わないまでも、なにやら過度の期待をされなくなったメディアに特有の「見直し機運」のようなものが漂い始めている気がする。当たり前のように存在していたときには見えなかったのものの顕在化である。
2013年末にMITメディアラボ所長の伊藤 穰一さんやゲームクリエイターの水口 哲也さんたちと、メディア美学者である武邑 光裕先生を塾長とするメディアの未来を考えるセミナー「武邑塾」を立ち上げた。直近の2015年10月に開催した際のテーマはまさに「テレビの未来~Television Is the New Television」というものであった。
いわゆるマスメディアに直接的にフォーカスするという、これまでの未来志向のスタンスからすると異例の内容だったにもかかわらず、普段よりも3~4割多い、約200名の方が参加してくれた。
本連載の第1回で電話のことを取り上げた際、「メディアは最盛期を過ぎたときに改めてその魅力や本質が浮き彫りになる」と述べたが、先般の「武邑塾」での大盛況ぶりを見るにつけ、いままさに、オールドメディアの代表格たるテレビが再考される時期に差し掛かっているのではないかと思う。
実際、筆者もこのところTwitterのタイムラインやFacebookのニュースフィードを眺める時間が減って、テレビを観ている時間が増えている。
今回はそうした自分自身の気分の変化も踏まえつつ「テレビというメディアの最大の特徴とは何なのか?」について考えてみたい。
(次ページでは「テレビ最大の特性とは」)
この連載の記事
-
最終回
トピックス
「これほど身近な時代はない」ネットと法律はどう関わるのか -
第27回
トピックス
著作権法に対するハックでもあるクリエイティブ・コモンズ -
第26回
トピックス
なぜクルマほしいのか、水口哲也が話す欲求を量子化する世界 -
第25回
トピックス
「Rez」生んだ水口哲也語る、VRの真価と人の感性への影響 -
第24回
トピックス
シリコンバレーに個人情報を渡した結果、検索時代が終わった -
第23回
トピックス
「クラウドファンディング成立低くていい」運営語る地方創生 -
第22回
トピックス
VRが盛り上がり始めると現実に疑問を抱かざるをえない -
第21回
トピックス
バカッター探しも過度な自粛もインターネットの未来を閉ざす -
第20回
トピックス
人工知能が多くの職業を奪う中で重要になっていく考え方 -
第19回
トピックス
自慢消費は終わる、テクノロジーがもたらす「物欲なき世界」 -
第18回
トピックス
なぜSNS上で動物の動画が人気なのか - この連載の一覧へ