iPad Proは当面すべてはアプリ次第
とはいえ、そうした違和感は、使うアプリによるのではないか、ということもまた、指摘することができます。
筆者の場合、とりあえず今やっていることは、シンプルすぎるテキストエディタでひたすらキーボードをタイピングして原稿を書くこと。それに関しては、日本語入力も含め、Macのそれと遜色ないレベルで利用できることを噛み締めながら、この原稿を書き進めてきたわけです。
よくiPadとMacの比較で、Finderを中心とした、マシン内でグローバルにアクセスできるファイルシステムがないという指摘もあります。確かに筆者もFinderがないこと、汎用的にファイルを操作できない点に、どこか不自由を感じているクチです。
ただ、原稿を書きあげるまでは、基本的にはFinderを開くことは一切ありませんし、メモや下書きを放り込んであるEvernoteを参照する場合、エディタにあらかじめコピー&ペーストしておくか、iOS 9でサポートしたマルチタスキングのスライドオーバーもしくは画面分割を用いて、2つのアプリを開きながら作業すればよいのです。
原稿が仕上がった際、画面分割の片方のアプリをEvernoteからSafariに変えて、Flickrの写真のうち、使うもののURLを原稿に貼り付ける作業もこなすことができます。また、出来上がった原稿は、iA WriterからMicrosoft Word形式で書き出し、これをOneDriveアプリの所定のフォルダに入れることができます。そして共有リンクをメールで送れば「一仕事完了」というわけです。
今回の原稿では、原稿書きの話で紙幅が尽きてしまいそうですので、テキストエディタでの作業のみの紹介にとどめておきますが、モバイルマシンをMacからiPad Proに移行できるかどうかは、2つのポイントがあると思います。1つ目は、普段最も主として使っているアプリがiPadにあること。そしてもう1つは、先ほどのフレーズである「一仕事完了」まで行き着く道筋が、iPad Proで実現できること。
とりあえず筆者が試したように、最もシンプルなワークフローをこなせるかどうかから、iPad Proの検討を始めるとよいのではないかと思いました。筆者のパターンの場合、最もシンプルかつ最も多くの時間を費やすであろう原稿を書くという作業は、iPad Pro+Smart Keyboard+iA Writer+OneDriveで実現可能だった、というわけです。
みなさんのワークフローは、はたして、MacやWindowsからiPad Proに移行可能でしょうか。そう考えたときにSurface Proの強さも実感することになりました。Surface ProはWindowsマシンであり、基本的に同じアプリを使うことで、ワークフローの「移行」は発生しないからです。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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