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年間1万人以上が見学する、パナソニックの家電リサイクル工場とは

2015年12月04日 11時00分更新

文● 大河原克行、編集●ハイサイ比嘉

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使用済み家電を一括破砕処理し、金属や樹脂を回収・分別

 同社では、入庫した使用済み家電を一括破砕処理し、ここから磁力や振動などを使った金属回収技術によって、鉄や銅、アルミニウムを分別。樹脂については、シュレッダーダストとして、そこからポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)にそれぞれ分類する。

粉砕したシュレッダーダストから水を使ってPPを選別

粉砕した樹脂からPPを回収する

エアコンから取り出した再生素材

こちらは冷蔵庫から取り出した再生素材

素材ごとに袋に入れられて出荷することになる

独自開発の近赤外線選別方式

 混合樹脂の状態となっているシュレッダーダストの分類には、水を使用することでPPを選別したり、静電分別によって、PSやABSを分類するといった方法もあるが、水分別では廃水処理が必要であること、静電分別では大規模な施設になりがちなこと、特定臭素を持つ樹脂の分別にはX線を使用しなくてはならないといった課題があった。そのため、分別できない部分は、そのまま廃棄処理を行なわざるを得なかった。

 同社では、独自に開発した近赤外線選別方式を採用。これにより、ひとつのプロセスでPP、PS、ABSの3種類の樹脂を同時に選別。99%以上という選別純度を達成できたという。さらにすべての選別を乾式で行なうため、廃水処理が不要になり、導入する設備も小規模のもので済むという。

近赤外線選別方式を採用したパナソニック独自の選別機

選別機の中をカメラで捉えた様子

判別状況をモニターで監視

 近赤外線選別方式の開発は、分子構造によって光の吸収特性が異なる点に着目したのがはじまりだ。樹脂種類ごとに異なる光の反射を近赤外線センサーで捕らえて、樹脂材料の種別を瞬時に判定し、捕らえた樹脂片が飛び出すところを高精度エアを吐出し、樹脂ごとに打ち落として分類する。2.75mmピッチで細かくセンシングし、その形から樹脂片の重心がどこにあるのかを検出するアルゴリズムを開発し、毎秒3mという高速で動くコンベアから飛び出す樹脂を正確に打ち落とす。また、打ち落とす際の樹脂の飛翔軌道を、気流の最適制御によって安定化させることで、樹脂形状に左右されず、同一の飛翔軌道に抑制。99%以上という選別精度を達成している。

打ち落とされたあとは、素材ごと分類して回収

それぞれに分類された形で袋詰めされる

素材ごとに分類されたペレット

冷蔵庫の断熱ウレタンは燃料として再生される

 一方、それぞれの種類ごとに分別された樹脂は、再生樹脂として使用できるようにするため、隣接するパナソニック アプライアンス社 加東樹脂循環工場で加工を行なう。

加東樹脂循環工場があるアプライアンス社キッチンアブライアンス事業部の拠点

 まずは、樹脂同士をぶつけ合うことで洗浄する乾式洗浄方式による洗浄後、色彩選別機能を利用してゴムや塩化ビニルなどの付着物を分類。続けて、静電セパレート別方式を用いて、金属除去を行なう。さらに、調質剤を添加し、使用する用途に最適化した物性へと改良する。ここでも独自の添加剤処方により、最終的な素材を100%再生材として利用することが可能になるという。

 その後、溶融・押出作業とともに、フィルターを通して、さらに細かい異物を除去。多数の棒状に押し出された樹脂をペレット状に裁断して、

 水で冷やした後に防水処理を行ない、パナソニックをはじめとする生産工場に出荷され、再生材料として使用されることになる。

 これまでの再生材は、コスト高になることが多かったが、家電製品に特化したリサイクルであるため、設備やプロセスをそれに最適化できること、新たな設備の導入でのコストダウン効果もあり、バージン素材よりも、再生素材の方が2~3割安く納品できるという。2014年4月にはブラウン管テレビのリサイクルを、中部エコテクノロジーに移管。こうした集中化も効率を高めることにつながっている。

 加東樹脂循環工場では、手解体で分解された再生樹脂を洗浄する手解体材洗浄ラインで年間900トン、近赤外線で分類された再生樹脂を洗浄するための近赤材洗浄ラインで年間1500トンの処理が可能。また、洗浄後にペレタイズを行なうラインをふたつ持ち、それぞれ年間1000トン、1400トンの処理が可能だ。

パナソニック アプライアンス社 加東樹脂循環工場

手解体洗浄ラインの様子

近赤材洗浄ラインの様子

ペレタイズラインの様子

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