ノーク伊嶋のIT商材品評会 第9回
「ヒト」「モノ」「カネ」を月額9000円で管理する業務クラウド
スマイルワークス「ClearWorks」が描く中小企業のクラウドの世界
2015年11月19日 06時00分更新
競合は弥生、OBC、PCAなどのオンプレパッケージベンダー
以前この連載でも取り上げたfreeeやマネーフォワードなどのクラウド専業ベンダーは個人事業主などの小規模企業が対象となっており、現実的には同社の競合はクラウドベンダーではなく、弥生やOBC、PCAなどのパッケージベンダーとなっている。

ClearWorksのポジショニングマップ
販売戦略はオンプレの業務パッケージベンダーと大きな違いはない。Webなどの直販が多いのは他のクラウドベンダー同様だ。税理士や社労士などの専門家を経由して、その顧問先の中堅・中小企業を取り込む方法も同社の特徴の1つ。もともと弥生で経験した税理会計事務所経由での販売による効果は、十分に経験している強みが生かせている。
税理士は顧客と同じソフトウエアを、さらには同じバーションで準備をしなければならない。たとえば弥生会計パッケージでも、バージョンが違えばそれに合わせて準備をしなければならない。一方同社の「ClearWorks」はクラウドサービスであるため、つねに最新バージョンで統一されている。このクラウドの便利さに税理士も気づきだしているのであろう。そのため同社のユーザーは、弥生会計や勘定奉行などからの乗り換えが非常に多いという。
今後は他社へのライセンス展開、いわゆるOEMでの実績も見逃せない。富士通などへのOEMやアスクルとの販売提携など複合的なチャネルからの販売も増えてきている。
松本へサテライトオフィスを構築しBPOをクラウドで
総務省の実証事業である「ふるさとテレワーク」、スマイルワークスは全国15団体による採択事業のひとつである「横須賀・松本商工会議所地域連携モデル」に参画している。同社は東京本社でのBPO事業を松本市に従業員を移住させて、会計業務の伝票仕分け業務のBPOシステムを開発して、松本地域の簿記3級相当の資格を有するテレワーカーを募集して、クラウドソーシングによる実証実験を2015年9月から来年の2月まで行なっている。
総務省への事業参画の狙いは、2つある。ひとつは同社が中堅・中小企業への業務システムにクラウドサービスを提供することと同時に、実際にクラウドシステムを活用した実際のビジネスとしての仕事を生み出す(攻めのIT)ことを実現しようという狙いだ。

松本市内で講演する坂本氏
松本で行なう実証事業は、地域の商工会議所と連携することから、ゆくゆくは他の地域の商工会議所とも展開できる可能性を秘めている。地域創生に役立ちながら、同社の成長も果たすという複合的な戦略プランで進行している。
実際のBPOビジネスとしては、会計の伝票仕分けなどの記帳代行を行なうが、同時に業務委託のマーケットは今後マイナンバーソリューションを背景に、多くの企業で、企業規模や地域に関係なく拡大することは間違いないと考えている。松本での実証事業がその切っ掛けと見極めて注力している。
これに対応する会計のBPOを提供する同社の子会社「日本会計支援センター」を今年から起動させている。この6月で500社程度の契約である。ClearWorks単体で利用するユーザーよりも更に小規模な企業を対象とするため、ここではfreeeやマネーフォワードと競合すると見込まれる。
中小企業、地域へのクラウドの伝道師としてひたすら動く
私も多くのベンダーの代表者を見ているが、同社の坂本氏ほど全国をセミナー講演として動き回っている代表者を知らない。文字通り八面六臂の働きで北海道から沖縄まで毎日クラウド普及セミナー、近頃はマイナンバーセミナーで飛び回る。弊社もお手伝いしているクラウドサービス推進機構の立ち上げにも加わり、中小企業へクラウドを普及させることをライフワークと言い切る、同社代表の坂本氏の文字通りの動きを示している。
同時に指摘しているのが、ユーザー企業だけでなく、SI業者やITベンダー提案する側もクラウドの流れを上手くつかんでビジネスにしてゆくことの大切さだ。「クラウドファースト」という言葉が示す通り、全世界的な潮流としてクラウド化の流れは間違いない。国内においても既存のSI会社、ITベンダーがクラウドと既存システムとの連携、あるいはクラウドとクラウドとの連携などクラウドインテグレーションや個々の企業に応じた導入支援や運用支援など多くのビジネスチャンスがまだまだ眠っている。
クラウド市場は今後マイナンバー対応、消費税増税時の軽減税率の導入、電子帳簿保存、電子申請などクラウドへの追い風はいくつもあって、大きく成長することは間違いないと見ている。その流れに乗ってClearWorksを成長させることが、同社のすべての思いを込めた今後戦略となっている。
中堅・中小企業におけるクラウド市場は、同社にとってのまさに伸びしろたっぷりな、有望なホワイト市場ということだ。地域の中小企業に良質な業務クラウドサービスを知ってもらい、うまく活用してもらいながら、同社も実績を高めていくという、「ご同慶の至り戦略」は、代表者の強い推進力を持って進んでいる。

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