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山谷剛史の「アジアIT小話」 第111回

改造された床と戦う! 中国のロボット掃除機事情

2015年11月05日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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家具の下にもぐれる薄型のロボット掃除機がトレンド
でも、家具の下でフリーズすることも……

本体裏側。床もひっかき傷だらけだ(中国ではそれほどナーバスでないらしい)

本体裏側。床もひっかき傷だらけだ(中国ではそれほどナーバスでないらしい)

 筆者が購入した中国のロボット掃除機は、15.4㎝という薄さが特徴だ。この薄さに筆者も驚いた。

 しかし、このロボット掃除機が革命的に薄いというわけではない。中国の家具は、ソファーも引き出しもベッドも、共通して下に空間がある。そのことにロボット掃除機を買って、今さらながらに気づかされた。

 高さの低いロボット掃除機により、これまでほうきや掃除機では不可能だった、ホコリまみれの床空間を、このロボット掃除機が自走して掃除してくれるのだ。

 ソファーの下に潜り込んで自走してホコリをたくさん回収して戻ってきたロボット掃除機を見た中国人は、一様に「これはすごい!」と感激していた。

 逆に、これまでこういう中国の家事情を無視して高さのあるロボット掃除機を出し続けたメーカーは、いったい何を研究していたのかともツッコミを入れたくなる。

テレビ台にも下に空間があり、下に伸びてたケーブルに絡まれてフリーズ

テレビ台にも下に空間があり、下に伸びてたケーブルに絡まれてフリーズ

 ロボット掃除機稼働で発見した中国の家の共通項はまだあるが、ハードルは高い。下に空間があれば、そこに電源ケーブルやアース線やLANケーブルを這わせるのが普通であり、回転するブラシがケーブルと絡まって、家具の下でフリーズすることは多い。

扉のレールにひっかかってフリーズ

扉のレールにひっかかってフリーズ

 また、中国の新築の家は内装なしの状態で渡される上に、ベランダをガラス張りの部屋に改造して面積を増やすなどの“魔改造”が常態化されており、ロボット掃除機でも予測できないような段差などのトラップがある。そこに引っかかって動けなくなり、半身浮いた状態で空回りすることもある。

 だがしかし、少なくとも筆者が見たアジア各国は、日本のような「(中国から見れば)どれもこれも似たような内装の家」よりは、中国の家のような、DIY、時に魔改造の内装の家が当たり前である。

 長い目で見れば、中国の開発したロボット掃除機が、アジアやアフリカなどの新興国で普及するのではないか。

 筆者が購入したロボット掃除機は、使用2週間で走行中に異音が発生し、一部のラバーが外れ、早くも修理を依頼できる状態である。

 しかし、この程度の中国製品の壊れやすさは、新興国の消費者は織り込み済みであり、「また中国製品か」と思う程度でマイナス要素にはならないような気がする。今も毎日動かしては、頼もしくホコリをごっそり回収してくれる。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。書籍では「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)、「日本人が知らない中国インターネット市場」「日本人が知らない中国ネットトレンド2014」(インプレスR&D)を執筆。最新著作は「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立 」(星海社新書)。

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