「都市伝説」って語感、ゾクゾクする感じがして、興味がある方も多いのではないでしょうか。ネットで軽く検索してみると、「徳川埋蔵金」とか、「Siriに『イライザ』って聞くと答えが面白い」、「USBメモリやSSDに磁石近づけても壊れない」とか、かなりヒットします。しかし、こうした話は、どちらかというと都市伝説ではないと僕は思っています。徳川埋蔵金は、ただ、たんに「伝説」だし、Siriのイライザ話はプログラマの遊び心。USBやSSDと磁石については、Yahoo!知恵袋的な話だと思うのです。
都市伝説っていうのは、「小さなおじさん」とか「隣町の小学校の生徒が『こっくりさん』やったら帰ってこなくなったので学校で禁止になった」とか、「アメリカにリンゴの樹が多いのは、一人のおじさんが種をまきながら徒歩で横断したから」みたいなやつ。僕が子供の頃には「口裂け女」の話が日本全土で大流行。口裂け女が避ける「べっこう飴」を持ち歩く小中学生が続出しました(笑)。
ウワサやデマと少し違う都市伝説
有名な都市伝説に「コーラで歯が溶ける」があります。これ、アメリカ(カリフォルニア)でも、親が子供に話しているのを聞いたことがあるので、インターナショナルな都市伝説なのでしょう。もちろん、歯は溶けません。繰り返し囁かれる、ニューヨークの下水道に住んでいるという巨大ワニの話もロングランの都市伝説。ストーリーは、ペットで飼われていた小さなワニが逃げ、餌になるネズミも多く、温水が流れ込む下水道で巨大化しているという筋書きです。
サクッとググってみると、以下のヒット数でした。
「コーラ」「歯が溶ける」 317,000件
「下水道」「ワニ」 12,000件
「タクシー」「消える乗客」379,000件
やっぱり、下水道ワニの都市伝説は、日本では不人気のようです。
こうした都市伝説がデマや噂と少し違うのは、怪談っぽさがあり、各地で同様のことが流行する。否定されては、しばらくして再浮上するのも特徴です。ちなみに、タクシーの女性客が途中で消える都市伝説は海外でも定番です。アメリカ版はタクシーではなく、ヒッチハイクの女性になっていますが…。
その基準で言えば、冒頭で紹介した「徳川埋蔵金」も江戸の頃からの都市伝説といえば、そうなのかもしれません。ごめん、ごめん、「ただ、たんに伝説」なんて言ったりして…。
メディアでも語られる「皮膚呼吸」という神話
皮膚は呼吸しません。もし皮膚が呼吸するなら、プールやお風呂にしばらく入っていると酸欠になってしまいます。化粧品などの広告でたまに見る「皮膚呼吸を妨げない…」なんて売り文句も事実とは異なり、小さく「広義の皮膚呼吸で…」なんて注意書きが書いてあったりします(笑)。消費者としては、広義ではなく、普通の意味で日本語を使っていただきたいところです。
こうした、都市伝説が信じられるようになったキッカケはいくつかあります。例えば、上の皮膚呼吸の都市伝説では、映画『ゴールドフィンガー』説が有力です。007シリーズのひとつとして知られた映画ですが、「全身に金粉を塗られて殺された女性」が登場します。それを見た多くの観客が「あぁ、全身を覆われるとキケン」と誤解したことが、こんな都市伝説を生んだといわれています。
テレビや映画を信じちゃう人、バラエティと報道を分けない人
上の映画の話もそうですが、テレビで放送されたり、新聞で紹介されると、気軽に信じてしまう人がいます。放射能を消滅させてしまう怪しい菌や、永久に動き続ける新発明の機械など、おそらく、記者やレポーターが裏取り(検証)していない内容をたまに目にします。今は、すぐにネットで炎上しますが、ネットを見ない人は信じたままです。
一方、書籍や論文など、活字になると信じてしまう人もいます。さらに、そんな鵜呑みにした話を、平気で人に伝えちゃう人も…。デマツイートをリツイートしまくっちゃうタイプの人。
どんな情報でも言えることですが、内容を検証したり、否定するのはエネルギーを使うのは疲れます。残念なことですが、人は信じちゃう方が、楽チンなんですよね。
根強い都市伝説は「こうだったら良いなぁ」とか「こんな恐ろしいことが起きるかも…」なんて、人間の欲求や恐怖に働きかけます。口裂け女の都市伝説が日本全国で流行したのも「べっこう飴で撃退できる」という、誰にでもできる対策やコミカルさがウケたからでしょう。
僕は「信じる者は救われる」という話は、ファンタジーやフィクション、精神世界の中だけのことだと固く思っています。ですから、したり顔で仕事の同僚やクライアントに都市伝説の話をすれば、自分の信用を失うことになりかねません。その区別さえちゃんと守っていれば、心の中で都市伝説を楽しむのはアリなはず。それはクリスマスに、サンタクロースを信じてプレゼントを期待することと同じです。
前田知洋(まえだ ともひろ)
東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。
著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。現在、ビジスパからメルマガ「なかマジ - Nakamagi 3.0 -」、「Magical Marketing - ソシアルスキル養成講座 -」を配信中。
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